医療

その他

アニオンギャップ:体の酸塩基バランスの指標

- 体の電解質バランス私たちの体には、体液の中に溶けて電気的な性質を持つ「電解質」と呼ばれる物質が存在します。ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムといった陽イオンと、塩素、リン酸、 bicarbonateといった陰イオンが代表的な電解質です。これらの電解質は、体内の水分量の調整や栄養分の運搬、神経や筋肉の働きなど、生命維持に欠かせない様々な役割を担っています。例えば、ナトリウムは細胞外液の浸透圧を維持することで、体内の水分バランスを調整しています。また、カリウムは神経伝達や筋肉の収縮に、カルシウムは骨や歯の形成、血液凝固などにそれぞれ重要な役割を果たしています。通常、体内の電解質はバランスを保っていますが、発汗や下痢、嘔吐などで水分や電解質が失われると、このバランスが崩れ、脱水症状や熱中症、筋肉の痙攣などを引き起こす可能性があります。健康を維持するためには、水分と電解質を適切に摂取することが重要です。
その他

来院時心肺停止とは?:定義と関連用語

病院に到着した時点で、心臓または呼吸、あるいはその両方が停止している状態を「来院時心肺停止」と言い、英語では「cardiopulmonary arrest on arrival」と表記し、略して「CPAOA」と呼びます。この状態は、患者が病院に到着する前に、医師や救急隊員など医療関係者によって心肺蘇生が行われたかどうかは関係ありません。つまり、医療関係者が患者の状態を確認した時点で、心臓と肺のどちらか、あるいは両方が機能していないと判断された場合、その患者は「来院時心肺停止」と診断されます。例えば、心臓が停止していても、救急隊員などによって心臓マッサージや人工呼吸などの心肺蘇生を受けながら病院に到着した場合も「来院時心肺停止」に含まれます。また、病院に到着する直前まで心臓が動いていたものの、病院に到着した際に心臓が停止していた場合も同様に「来院時心肺停止」と診断されます。
けが人へ医療

身体に優しい治療法:IVRとは?

- 画像診断と治療の融合近年、医療の現場では、患者さんの身体への負担をより軽減できる治療法が求められています。従来の手術に比べて、切開範囲を小さく、身体への負担を軽く抑えられる治療法の一つとして、インターベンショナルラジオロジー(IVR)が注目されています。IVRは、画像診断でおなじみの放射線技術を用いた治療法です。CT、超音波、X線透視といった画像診断技術を用いることで、体内の状態をリアルタイムに把握しながら治療を行うことができます。具体的には、カテーテルなどの医療器具を血管や臓器などの目的の部位まで正確に導き、治療を行います。IVRは、従来の手術に比べて、身体への負担が少ない、低侵襲な治療法として知られています。そのため、体への負担が大きく手術が難しいとされてきた高齢者や合併症を持つ患者さんにも、治療の選択肢を広げることができます。また、入院期間の短縮や早期の社会復帰にもつながることが期待されています。
その他

医療現場におけるNBM:患者中心の医療の実践

- 物語に基づく医療、NBMとはNBMは、Narrative Based Medicineの頭文字をとったもので、日本語では「物語に基づく医療」という意味です。 従来の医療では、検査データや科学的な根拠に基づいて診断や治療を行うことが一般的でした。 しかし、NBMでは、患者さんから病気の経験や思い、生活背景などを「物語」としてじっくりと聞き取ることが重要になります。患者さんの言葉に耳を傾け、その人自身の経験や価値観を理解することで、病気に対するより深い理解を得ようとするのがNBMの特徴です。例えば、同じ病気であっても、患者さんによって症状の感じ方や生活への影響は大きく異なります。また、治療に対する希望や不安も人それぞれです。NBMでは、このような患者さん一人ひとりの個別性に寄り添い、患者さんと医療者が協力して治療方針を決めていきます。 患者さんの「物語」を共有することで、信頼関係を築き、より良い医療を提供することを目指すのがNBMなのです。NBMは、患者さんの心のケアにもつながると期待されています。病気によって生じる不安や苦痛、悩みなどを共有することで、患者さんの心の負担を軽減し、前向きに治療に取り組めるよう支援します。 NBMは、医療現場において、患者さんの視点を取り入れた、より温かい医療を実現するための重要な考え方と言えるでしょう。
その他

生命の守護者: プロテアーゼインヒビターの役割

私たちの体は、まるで外界からの侵略者から身を守る城のように、様々な防御機構を備えています。その中でも、プロテアーゼと呼ばれる酵素は、城を守る勇敢な兵士のような役割を担っています。プロテアーゼは、タンパク質を分解するという重要な能力を持っています。私たちの体はタンパク質でできていますが、不要になったタンパク質や、外部から侵入した有害なタンパク質(ウイルスなど)をそのままにしておくわけにはいきません。そこで、プロテアーゼが活躍します。プロテアーゼは、不要になったタンパク質を分解して、体にとって必要な物質に変えたり、有害なタンパク質を分解して無毒化したりします。まるで、城内に侵入した敵を捕らえて、無力化する兵士のようです。さらに、プロテアーゼは、免疫反応の調節にも関わっています。免疫システムは、体を守るための重要なシステムですが、過剰に働くと体に悪影響を及ぼすことがあります。プロテアーゼは、免疫システムの働きを調整することで、私たちの体が適切に守られるように働いているのです。このように、プロテアーゼは、目立たないながらも、私たちの体を守るために非常に重要な役割を担っています。健康な毎日を送るためには、プロテアーゼの働きに感謝し、その働きを助ける食生活や生活習慣を心がけることが大切です。
けが人へ医療

手術を支える縁の下の力持ち:分離肺換気

- 左右の肺を別々に換気する手術中には、左右の肺をそれぞれ別々に換気する、「分離肺換気」という高度な技術が使われることがあります。これは、片方の肺だけに休憩を与えたり、それぞれの肺に合わせた換気の調整が必要な時に非常に役立ちます。分離肺換気が特に力を発揮するのは、片方の肺に手術が必要な場合です。例えば、肺の一部を切除する手術や、腫瘍を取り除く手術などが挙げられます。このような場合、手術を受ける側の肺は空気を抜いて小さくしておく必要があります。これは、手術する部分を医師がはっきりと見やすくするため、そして、手術操作を行いやすくするためです。一方、手術を受けない方の肺には、引き続き空気が送り込まれ、正常に呼吸を続けることができます。これにより、手術中であっても、体全体への酸素供給を維持することができます。分離肺換気は、まさに左右の肺を別々に、そして、それぞれに最適な状態で管理することを可能にする技術と言えるでしょう。
けが人へ医療

外傷の重症度を評価するAISとは?

- AISの概要AISは、怪我の重症度を客観的に評価し、記録するための国際的な基準です。正式名称は「解剖学的傷害重症度スコア(Anatomical Injury Severity Score)」と言います。事故や転倒など、様々な原因で起こる怪我について、その深刻さを数値化することで、医療現場における情報共有や治療方針の決定、そして交通事故などの原因分析などに役立てられています。AISは1971年にアメリカで初めて発表され、その後も医学の進歩に合わせて定期的に改訂が重ねられています。 人体を頭部や胸部、腹部など9つの部位に分け、それぞれの部位に起こった怪我について、その程度を1から6までの6段階で評価します。 1が最も軽度で、6が最も重症な状態を表します。例えば、かすり傷のような軽い怪我であれば1、命に関わるような重度の怪我であれば6と評価されます。このAISを用いる最大のメリットは、医師間で怪我の程度について共通認識を持つことができる点にあります。 従来は、医師の経験や主観に頼って怪我の重症度を判断していましたが、AISを用いることで、より客観的で正確な評価が可能になりました。 これにより、患者さんにとってより適切な治療方針を決定できるようになり、救命率の向上や後遺症の軽減にも繋がると期待されています。AISは、交通事故の分析や予防にも活用されています。事故の状況とAISによる怪我の程度を照らし合わせることで、事故の原因究明や安全対策の強化に役立てられています。
制度

命の尊厳と医療の選択:DNARを考える

病院などで、心臓が止まってしまった人に対して、心臓を動かしたり、呼吸を助けたりする治療が行われます。これを心肺蘇生法と言い、多くの人がこの治療によって助かっています。しかし、すべての人にとって、この治療が最善の結果をもたらすとは限りません。特に、病気の最終段階や高齢などで、回復が難しいと考えられる場合は、治療によって命を長らえても、その人にとって苦しいだけの結果になることもあります。このような場合、その人の意思を尊重し、無理に治療を続けないという選択も大切になってきています。たとえば、延命治療を望まないという意思表示を事前に書面に残しておくことができます。また、家族と延命治療についてよく話し合っておくことも重要です。医療現場では、患者の命を救うことを最優先に考えますが、同時に、患者本人の意思を尊重し、その人らしい最期を迎えられるよう、最善の医療を提供することも求められています。
その他

手術中の麻酔で起こる悪性高熱症

手術を受ける際、患者を痛みや意識から解放するために全身麻酔は欠かせないものです。しかし、全身麻酔は大きな利点をもたらす一方で、まれに重篤な合併症を引き起こす可能性も孕んでいます。その一つが、悪性高熱症と呼ばれる危険な状態です。全身麻酔中に使用される特定の薬剤に対して、体が過剰に反応してしまうことが悪性高熱症の原因です。筋肉の細胞内でカルシウム濃度が異常に上昇し、全身の筋肉が硬直、体温が急上昇、心拍数や呼吸数が増加するなど、生命を脅かすような症状が現れます。悪性高熱症は、遺伝的な要因が強く関与していると考えられており、家族歴に全身麻酔時の同様の症状があった場合は、事前に医療従事者に伝えることが重要です。また、悪性高熱症の治療には、原因となる薬剤を速やかに中止し、体温を下げるための処置や、体内の電解質バランスを整えるための薬剤投与などが行われます。全身麻酔は、現代医学において必要不可欠な医療行為ですが、合併症のリスクを理解し、事前に適切な対策を講じておくことが、安全な手術の実現には不可欠です。不安や疑問があれば、遠慮なく医療従事者に相談するようにしましょう。
その他

悪性症候群:向精神薬との深い関係

- 原因と症状悪性症候群は、精神的な病気を治療する際に用いられる一部の薬によって、身体に重い症状が現れる病気です。この病気の原因となる薬は、主に統合失調症や気分障害の治療に用いられます。こうした薬の使用を開始したり、急に使用をやめたり、あるいは再び使用し始めた際に、この病気が発症することがあります。悪性症候群の症状は、突然現れることが特徴です。高い熱が出たり、意識がはっきりしなくなったり、筋肉が硬くなったり、激しい筋肉の痛みを感じたりします。また、汗を大量にかいたり、体が震えたり、心臓の動きが速くなったり、血圧が上下したりすることもあります。さらに悪化すると、腎臓、心臓、肺といった重要な臓器が正常に機能しなくなり、命に関わる危険性も出てきます。
制度

プライマリケア:地域に根ざした医療の重要性

- プライマリケアとはプライマリケアとは、地域に住む人々が、身体の不調や健康に関する不安を感じた時に、まず最初に頼ることのできる医療のことです。病院や診療所に行かなくても、電話やオンラインで相談できる場合もありますし、必要に応じて自宅を訪問してくれる場合もあります。プライマリケアでは、風邪やインフルエンザなどの一般的な病気から、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、さらには認知症やうつ病などの心の病気まで、幅広い症状に対応します。単に病気の診断や治療を行うだけでなく、一人ひとりの生活習慣や家族構成、仕事環境などを考慮し、その人に最適な医療を提供することを大切にしています。さらに、病気の予防にも力を入れています。健康診断や予防接種、食生活や運動などに関するアドバイスを通して、地域の人々が健康な状態を維持し、病気にかかりにくくするためのサポートを行います。プライマリケアは、まさに地域住民の健康を守る「最初の窓口」であり、地域全体を支える医療の基盤と言えるでしょう。
その他

プラズマフェレシス:血液浄化で病魔に立ち向かう

- プラズマフェレシスとは私たちの体の中を巡っている血液は、酸素を運ぶ赤い細胞(赤血球)や、体を守る白い細胞(白血球)といった細胞成分と、栄養やホルモンを運ぶ液体成分(血漿)で出来ています。プラズマフェレシスとは、血液の中から、体に悪い影響を与える物質を取り除き、血液を綺麗にする治療法です。この治療では、まず患者さんの体内から血液を少しづつ体外に取り出します。そして、取り出した血液を特別な機械に通します。この機械の中では、血液の中の細胞成分と血漿成分が分けられます。体に悪い物質は、血漿の中に溶け込んでいるため、悪い物質を含んだ血漿だけを捨て、残った細胞成分は患者さんの体内に戻します。捨てられた血漿の代わりに、新しい血漿成分や、人の体液に近い成分でできた代用液を患者さんの体内に入れます。プラズマフェレシスは、様々な病気に効果があるとされ、神経系の病気や、血液の病気、免疫の病気など幅広い病気の治療に用いられています。
その他

手術中の出血抑制: プリングル法とその重要性

肝臓は、人体で最も大きく重要な臓器の一つであり、栄養の分解や有害物質の解毒など、生命維持に欠かせない役割を担っています。しかし、肝臓は血管が非常に多く集中している臓器であるため、手術を行う際には常に多量の出血のリスクが伴います。肝臓手術において、出血をいかに抑えるかは、手術を成功させるだけでなく、患者さんのその後の経過を大きく左右する重要な課題となっています。肝臓手術では、出血を最小限に抑えるために、様々な工夫が凝らされています。例えば、手術前に画像診断を用いて、血管の位置や太さを正確に把握すること、手術中に特殊な機器を用いて、出血を迅速に止血することなどが挙げられます。また、近年では、手術支援ロボットを用いた手術も普及してきており、より安全で確実な手術が可能となっています。肝臓手術は、出血のリスクが高い手術ではありますが、経験豊富な医師のチームによって、適切な処置が行われれば、安全に手術を終えることができます。肝臓の病気で手術が必要となる患者さんにとっては、医師とよく相談し、納得した上で手術に臨むことが重要です。
けが人へ医療

骨盤骨折の中でも特に危険な「マルゲーニュ骨折」とは?

- マルゲーニュ骨折の概要骨盤は、身体の中心に位置し、上半身と下半身を繋ぐ重要な役割を担っています。左右の寛骨と仙骨という骨から構成され、内臓を保護する役割も果たしています。この骨盤に強い力が加わることで、骨折が起こることがあります。骨盤骨折の中でも、特に重症なタイプの骨折の一つに、マルゲーニュ骨折があります。マルゲーニュ骨折は、骨盤の前方と後方の両方に骨折が生じるという特徴があります。具体的には、左右の恥骨を繋ぐ恥骨結合と、仙腸関節、そして腸骨に骨折が起こります。これらの骨折により骨盤の安定性が著しく損なわれ、骨盤が上下に大きくずれてしまうこともあります。このような複雑な骨折が起こる原因は、主に交通事故などの高エネルギー外傷です。自動車やバイクとの衝突、高所からの転落など、強い衝撃が骨盤に加わることで発生します。マルゲーニュ骨折は、19世紀のフランスの外科医であるマルゲーニュ氏によって初めて報告されました。彼の名は、この骨折の発見と研究に大きく貢献したことから、骨折の名称に冠されています。マルゲーニュ骨折は、骨盤骨折の中でも重症度が高く、適切な治療を行わなければ後遺症が残る可能性もあります。そのため、早期に専門医による診断と治療を受けることが重要です。
その他

ムスカリン様作用:有機リン中毒と関連深い作用

- ムスカリン様作用とは私たちの体には、自律神経系と呼ばれる、意識せずに体の機能を調節する神経系が存在します。自律神経系は、交感神経と副交感神経の二つで構成され、それぞれが opposing な作用を持つことで体の状態をバランス良く保っています。ムスカリン様作用は、このうち副交感神経の働きに関わる作用です。副交感神経は、神経伝達物質としてアセチルコリンを用い、体の安静時やリラックス時に優位になり、心拍数の低下や消化機能の促進など、休息と消化に関連する体の働きを調整します。この時、アセチルコリンが標的となる器官の細胞表面にあるムスカリン受容体というレセプターに結合することで、様々な反応を引き起こします。これがムスカリン様作用です。ムスカリン様作用は、心臓、血管、消化管、気管、瞳孔、膀胱など、体の様々な器官に影響を与えます。例えば、心臓に対しては心拍数を抑える作用、血管に対しては拡張させて血圧を下げる作用、消化管に対しては蠕動運動を促進して消化を助ける作用、気管に対しては収縮させて呼吸を抑制する作用などがあります。また、瞳孔を縮小させて眼圧を下げる作用もあります。ムスカリン様作用を人為的に引き起こす薬もあり、 緑内障治療薬、消化管機能改善薬、気管支喘息治療薬などとして医療現場で使用されています。しかし、ムスカリン様作用は体の多くの部分に作用するため、薬の使用により口の渇き、便秘、尿閉などの副作用が現れる可能性もあります。
その他

見過ごせない酸素不足?メトヘモグロビン血症とは

血液中のヘモグロビンは、全身に酸素を運ぶ役割を担っています。通常、ヘモグロビンは酸素と結びつきやすい状態ですが、一部は酸素と結びつきにくいメトヘモグロビンに変化します。健康な状態であれば、体内で生成されるメトヘモグロビンはごくわずかであり、問題となることはありません。しかし、先天的な要因や特定の薬物、化学物質への曝露などによって、メトヘモグロビンが過剰に生成されることがあります。これがメトヘモグロビン血症と呼ばれる状態です。メトヘモグロビンは酸素と結びつきにくい性質を持つため、増加すると血液が酸素を十分に運搬できなくなります。メトヘモグロビン血症の症状としては、皮膚や粘膜の青紫色化(チアノーゼ)、息切れ、動悸、疲労感、頭痛、めまい、意識障害などが挙げられます。重症化すると、呼吸困難に陥り、生命を脅かす可能性もあります。メトヘモグロビン血症の治療は、原因や重症度に応じて行われます。軽症の場合は、原因物質の除去だけで改善することもあります。重症の場合は、メチレンブルーという薬物を投与することで、メトヘモグロビンを通常のヘモグロビンに戻す治療が行われます。
その他

沈黙の脅威:門脈圧亢進症を知る

- 門脈圧亢進症とは私たちの体には、全身に栄養を運ぶための血管が網の目のように張り巡らされています。その中でも、「門脈」は胃や腸、脾臓といった臓器から栄養分を豊富に含んだ血液を集め、肝臓へと運ぶ重要な役割を担っています。この門脈内の圧力が、何らかの原因で異常に高くなってしまう病気を、門脈圧亢進症と言います。門脈内の圧力は、通常100~150mmH2Oの範囲に保たれています。しかし、この圧力が200mmH2O以上になると、門脈圧亢進症と診断されます。これは、まるでたくさんの車が行き交う道路で渋滞が発生しているような状態です。門脈の圧力が高まると、血液がスムーズに流れなくなり、様々な症状が現れます。門脈圧亢進症の原因として最も多いのは、肝臓の病気です。肝臓は、門脈から流れ込む血液を浄化したり、栄養を蓄えたりする働きをしています。しかし、肝硬変や肝臓がんなどで肝臓の機能が低下すると、門脈内の血液の流れが悪くなり、圧力が高くなってしまいます。その他にも、門脈の本幹が詰まったり、心臓の機能が低下したりすることによっても、門脈圧亢進症が起こることがあります。門脈圧亢進症は、放置すると様々な合併症を引き起こす可能性もあるため、早期発見と適切な治療が重要です。
その他

羽ばたき振戦:肝臓からのサイン?

- 羽ばたき振戦とは羽ばたき振戦とは、両手を前に真っ直ぐ伸ばし、手首を反り返らせるように意識すると、まるで鳥が羽ばたくように手が震えてしまう症状のことです。医学的には、手首や指の関節が自分の意思とは関係なく、曲がったり伸びたりを繰り返す不随意運動の一種として知られています。この震えは、手をゆっくりと動かそうとしても現れ、早く動かそうとするとさらに激しくなるという特徴があります。また、震えは左右の手で同時に起こることが多く、片方の手だけで起こることは稀です。羽ばたき振戦は、その動きがまるで空気を羽ばたく鳥の姿に似ていることから名付けられました。この症状が現れる原因は、肝臓病や脳の病気など様々ですが、特に肝臓の機能が低下している場合に多く見られることが知られています。もし、羽ばたき振戦の症状が見られる場合は、自己判断せずに、速やかに医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしてください。
けが人へ医療

破裂の危険性と対策

- 破裂とは物が突然壊れてしまうことを「破裂」と言います。これは、外部から強い力が加わったり、内部の圧力が限界を超えてしまったりすることで起こります。私たちの日常生活でも、破裂は様々な場面で起こりえます。例えば、空気を入れて膨らませた風船を針で突くと、風船のゴムに力が集中し、耐え切れなくなった部分が破れてしまいます。また、自動車のタイヤも、空気圧が上がり過ぎた状態や、古くなって劣化が進んだ状態で使い続けると、走行中に破裂してしまうことがあります。破裂は、場合によっては私たちの生命や財産に大きな被害をもたらす可能性があります。例えば、ガスボンベの破裂は、火災や爆発に繋がる危険性があり、大変危険です。また、水道管の破裂は、建物を水浸しにしてしまったり、地盤沈下を引き起こす可能性もあります。このように、破裂は私達の身の回りで起こりうる現象であり、場合によっては重大な事故に繋がる可能性も秘めていることを理解しておく必要があります。
けが人へ医療

オートバイ事故に潜む危険!引き抜き損傷とは?

- 引き抜き損傷とは交通事故などで、腕が強い力で急に引っ張られることがあります。このような場合、体の中で何が起こるのでしょうか。実は、脊髄から出ている腕の神経が、根元から引き抜かれてしまう深刻な損傷が起こることがあるのです。これが「引き抜き損傷」です。脊髄から枝分かれする神経は、まるで植物の根のように、首から肩、腕、手へと伸びています。この神経の束は「腕神経叢」と呼ばれ、私たちの腕や手の動きや感覚を司る大切な役割を担っています。引き抜き損傷は、この腕神経叢の根元である神経根が、脊髄から引きちぎられるように損傷を受けてしまう状態です。損傷を受けた神経根の位置や、損傷の程度によって、腕や手に様々な症状が現れます。 例えば、腕や手の感覚がなくなる、力が入らなくなる、麻痺が残ってしまうなどです。引き抜き損傷は、後遺症が残る可能性が高い損傷です。そのため、交通事故に遭った際は、速やかに医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けることが重要です。
けが人へ医療

知っておきたい! ファウラー体位の効果と活用法

- ファウラー体位とはファウラー体位とは、ベッドに仰向けに寝た状態から上半身を起こし、背もたれを30度から90度の角度に調整した姿勢のことです。この体位は、医療現場や介護の場面で広く活用されています。ファウラー体位は、心臓や肺への圧迫を軽減するため、呼吸が楽になるという利点があります。そのため、肺炎や心不全などの呼吸器疾患や心臓疾患の患者さん、手術後の患者さんによく用いられます。また、食事や経管栄養の際に誤嚥を防ぐ効果も期待できます。ファウラー体位には、角度によっていくつかの種類があります。背もたれの角度が30度程度のものをセミ・ファウラー体位、45度から60度程度のものをハイ・ファウラー体位と呼びます。それぞれの症状や状態に合わせて、適切な角度が選択されます。ファウラー体位は、患者さんの負担軽減や症状緩和に役立つ体位ですが、長時間同じ姿勢を続けることで、褥瘡(床ずれ)のリスクが高まる可能性もあります。そのため、定期的な体位変換や、皮膚の観察など、適切なケアが必要となります。
けが人へ医療

防ぎえた外傷死:その意味と重要性

事故や災害などで大きな怪我を負った時、一刻も早い適切な治療が生死を分けることになります。しかし、様々な事情により、必要な医療が受けられなかったり、医療の質が十分でなかったりする場合があります。その結果、本来であれば助かったはずの命が失われてしまうという痛ましい事態が起こり得るのです。このような、適切な医療処置があれば防ぐことができたと考えられる外傷による死亡を「防ぎえた外傷死」と呼びます。「防ぎえた外傷死」は、医療体制の問題だけでなく、事故や災害発生時の状況、負傷者の状態、救助活動の遅れなど、様々な要因が複雑に絡み合って発生します。例えば、交通事故の発生件数が多い地域、自然災害の発生しやすい地域では、発生直後の医療需要が高まり、医療体制が逼迫する可能性があります。また、救急搬送体制の整備状況、医療従事者不足、医療機関の設備や人員配置なども、「防ぎえた外傷死」の発生率に影響を与えます。「防ぎえた外傷死」を減らすためには、医療関係者だけでなく、行政機関、地域住民など、社会全体で取り組む必要があります。救急医療体制の充実、災害医療体制の強化、事故防止対策の推進など、多角的な対策を講じることで、尊い命を救うことができるはずです。
感染症から守る

命を守る!敗血症性ショックの早期発見と対応

- 静かなる脅威敗血症性ショックとは敗血症性ショックは、細菌などの微生物が血液中に入り込み、全身に炎症を引き起こす敗血症の中でも、特に重症化した状態です。体内に侵入した細菌やウイルスなどの微生物と戦うために、私たちの体は様々な防御反応を起こします。しかし、この反応が過剰に起こってしまうと、炎症を引き起こす物質が血液中に大量に放出されてしまいます。これらの物質は、血管を拡げてしまうため、血圧の低下を引き起こします。点滴などによって水分を補給しても、血管が拡がった状態が続くため、血圧は上がりにくくなります。敗血症性ショックでは、心臓や肺、腎臓などの重要な臓器に十分な血液が行き渡らなくなります。その結果、臓器の機能が低下し、最悪の場合、死に至ることもあります。敗血症性ショックは、初期段階では、脈が速くなる、呼吸が速くなる、熱が出る、または体温が低下する、尿の量が減るなどの症状が現れます。さらに症状が進むと、意識がもうろうとしたり、血圧が急激に低下したりします。敗血症性ショックは、早期に発見し、適切な治療を行えば、救命できる可能性があります。少しでも異常を感じたら、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
その他

静かに忍び寄る脅威:肺血栓塞栓症

- 肺血栓塞栓症とは肺血栓塞栓症とは、肺の血管が詰まってしまう病気です。私たちの体には、心臓から送り出された血液を全身に送り、再び心臓に戻すための血管が張り巡らされています。動脈は心臓から全身へ血液を送り出す血管、静脈は全身から心臓へ血液を戻す血管です。肺血栓塞栓症の原因のほとんどは、足の静脈にできた血のかたまりです。この血のかたまりは「血栓」と呼ばれ、血栓ができてしまった状態を「血栓症」と言います。ふくらはぎの静脈などにできた血栓は、血液の流れに乗って心臓に戻り、心臓から肺へ送られます。そして、肺の血管を詰まらせてしまうのです。これが肺血栓塞栓症の主なメカニズムです。肺の血管が詰まると、血液は心臓に戻ることができなくなり、心臓に負担がかかります。また、肺で酸素を取り込むことができなくなるため、息苦しさや胸の痛みを感じます。肺血栓塞栓症は、重症化すると命に関わる病気です。そのため、早期発見・早期治療が重要となります。