偶発性低体温症:命を脅かす危険な状態

偶発性低体温症:命を脅かす危険な状態

防災防犯を教えて

『偶発性低体温症』って、どんな時に起きるんですか?登山とか海に行く時以外は大丈夫ですか?

防災防犯の研究家

いい質問ですね。確かに登山や水難事故でよく聞きますが、それ以外にも注意が必要な場合があります。例えば、泥酔状態や薬物中毒、あるいは脳血管障害などで倒れてしまった場合などにも起こりうるんです。

防災防犯を教えて

ええっ!そうなんですか?意外です。じゃあ、冬以外でもなることはあるんですか?

防災防犯の研究家

その通りです。気温が低い冬はもちろんですが、夏場でも冷房の効きすぎた部屋に長時間いたり、薄着で寝てしまったりすると思わぬ事故に繋がる可能性があります。季節を問わず、注意深く過ごすことが大切ですよ。

偶発性低体温症とは。

「防災・防犯に役立つ言葉として、『思いがけず体温が低くなること』について説明します。体温が低くなることを医学用語で『低体温症』といいますが、これは、お尻や膀胱、食道、肺の動脈など体の奥の温度が35度以下になった状態を指します。手術の時などに、わざと体温を下げる場合と区別して、事故や予期せぬ出来事が原因で体温が下がることを『思いがけず体温が低くなること』と呼びます。体温が低くなる原因には、①寒い場所に長時間いること、②服が濡れたままだったり、冷たい水に長時間つかっているなどして、体から熱が逃げていくこと、③体が熱を作り出す力が弱まってしまうこと、④体温を調節する機能が弱くなってしまうこと、などがあり、これらの原因が一つだけの場合や、いくつか組み合わさって起こる場合があります。具体的には、山で遭難したり、水でおぼれたり、お酒を飲みすぎたり、薬を過剰に飲んでしまったり、脳や血管の病気、頭を強く打った時、小さい子供や高齢の方、路上で生活している方、広い範囲にやけどを負った時、皮膚の病気、甲状腺や脳下垂体、副腎などの体の機能が低下する病気にかかった時、血糖値が異常に低くなった時、栄養が十分に取れていない時などに起こりやすいです。一般的には、①少し体温が低い状態(35度~32度)、②体温がかなり低い状態(32度~28度)、③体温が非常に低い状態(28度以下)の3つに分けて考えます。少し体温が低い状態では、寒さで体が震えますが、体温がかなり低い状態になると震えはなくなり、体温が非常に低い状態になると筋肉が硬直し始めます。体温が低くなるにつれて、神経は、気持ちが穏やかではなくなる状態から意識が無くなる状態になり、呼吸は、呼吸が速くなる状態から呼吸が遅く浅くなり、最終的には呼吸が止まってしまいます。そして、心臓の動きは、脈拍が速くなる状態から脈が遅くなり、最終的には心臓が止まってしまいます。心電図で見ると、T波の逆転、PQ・QR・QTSの延長、様々な不整脈がみられますが、中でも特徴的なものとして、QRS群の最後に現れる陽性動揺はJ波(オズボーン波)としてよく知られています。体温が30度以下になると、心臓の筋肉が刺激に非常に敏感になり、命に関わる不整脈を起こしやすくなるため、患者さんの体に触れるときなどは、細心の注意を払う必要があります。

偶発性低体温症とは

偶発性低体温症とは

– 偶発性低体温症とは偶発性低体温症とは、事故や不測の事態によって、意図せず体が冷え切ってしまい、深部体温が35℃以下に低下してしまう深刻な状態を指します。これは手術など医療現場で意図的に体温を下げる低体温麻酔とは全く異なるものです。山岳遭難や水難事故に遭った際に発生するイメージが強いですが、実際には、私たちの身近にも危険は潜んでいます。例えば、泥酔状態や薬物中毒によって意識がもうろうとなり、屋外で長時間過ごしてしまうことで発症するケースや、屋外での活動中に天候が急変し、気温が急激に低下することで発症するケースも少なくありません。体温が低下すると、体中の機能が徐々に低下していきます。初期症状としては、震えや意識の混濁、判断力の低下などが見られます。さらに体温が低下すると、脈拍や呼吸が遅くなり、意識を失ってしまうこともあります。最悪の場合、命を落としてしまう危険性も潜んでいます。日頃から、偶発性低体温症に対する正しい知識を身につけておくことが重要です。特に、冬山登山や水上スポーツなど、寒冷環境での活動を行う際には、十分な注意が必要です。また、もしもの事態に備え、体温を保持できるウェアや非常食、携帯カイロなどを準備しておくことも大切です。

偶発性低体温症とは 発生状況 症状 予防策
事故や不測の事態で体が冷え、深部体温が35℃以下になる深刻な状態
  • 山岳遭難、水難事故
  • 泥酔、薬物中毒での屋外放置
  • 屋外活動中の天候急変
  • 初期症状:震え、意識混濁、判断力低下
  • 重症化:脈拍・呼吸低下、意識消失、死亡
  • 偶発性低体温症の知識を持つ
  • 寒冷環境での活動に注意
  • 体温保持ウェア、非常食、携帯カイロの準備

様々な原因とリスク因子

様々な原因とリスク因子

偶発性低体温症は、寒い環境に身を置くことだけが原因ではありません。体温が低下するメカニズムは、熱を作り出す力と失う力のバランス、そして体温を一定に保とうとする機能が、様々な要因によって乱れることで起こります。

例えば、大やけどや皮膚の病気は、体の表面から熱が逃げるのを防ぐ働きを弱めてしまいます。また、甲状腺機能低下症などのホルモンに関わる病気は、体の中で熱を作り出す力を低下させてしまうことがあります。

さらに、低血糖や栄養不足も、体温維持に必要なエネルギーが不足するため、低体温症のリスクを高めます。

特に、体温調節機能が未熟な乳幼児や、加齢によってその機能が低下した高齢者は、周りの環境の変化に注意し、適切な対策を講じることが重要です。

様々な原因とリスク因子

深刻化する症状:軽度から高度へ

深刻化する症状:軽度から高度へ

偶発性低体温症は、体温の低下レベルによって、大きく三段階に分けられます。比較的症状が軽い「軽度低体温症」は、体温が35度から32度まで下がった状態を指します。この時期には、寒さを感じて体が震えたり、顔色が悪くなったりするなど、比較的分かりやすい症状が現れます。また、思考能力が低下し、判断を誤りやすくなるのも特徴です。体温がさらに低下し、32度から28度になると「中等度低体温症」と呼ばれる状態に入ります。この段階になると、意識が朦朧としたり、脈拍が遅くなったり、呼吸が浅く遅くなったりと、より深刻な症状が現れ始めます。さらに体温が低下し、28度以下になると「高度低体温症」と診断されます。これは非常に危険な状態で、意識を失ったり、心臓の動きが極端に弱まったり、呼吸が停止してしまうなど、命に関わる重篤な症状を引き起こします。最終的には、心臓が完全に停止し、死に至る可能性もあるのです。

段階 体温 症状
軽度低体温症 35℃~32℃ 寒気、震え、顔面蒼白、思考力低下
中等度低体温症 32℃~28℃ 意識朦朧、脈拍低下、呼吸低下
高度低体温症 28℃以下 意識消失、心拍微弱、呼吸停止、死亡の可能性

特徴的な心電図変化

特徴的な心電図変化

– 特徴的な心電図変化偶発性低体温症になると、心臓の動きにも明らかな異常が現れ、心電図にもその変化がはっきりと表れます。例えば、通常は上に凸の波形を描くT波が下に凸に反転したり、P波とQRS波の間隔であるPQ間隔や、QRS波自体の幅、Q波の開始からT波の終了までのQT間隔が延長したりといった変化が見られます。また、脈拍やリズムが乱れる不整脈も様々な種類が現れます。中でも特に注目すべきなのは、心電図上のQRS波群の終わりに現れる陽性動揺であるJ波(オズボーン波)です。このJ波は、まるでアルファベットのJのように見えることからその名が付けられており、低体温症を示す重要なサインとなります。体温が30℃以下にまで低下すると、心臓の筋肉である心筋は非常に興奮しやすくなるため、放っておくと命に関わるような深刻な不整脈を引き起こす危険性が急激に高まります。そのため、低体温症の患者さんの心電図に異常が見られた場合には、注意深く経過を観察し、適切な処置を迅速に行う必要があります。

偶発性低体温症における心電図変化 詳細 リスク
一般的な変化 – T波の反転
– PQ間隔の延長
– QRS幅の延長
– QT間隔の延長
– 不整脈
重篤な不整脈のリスク増加
特徴的な変化 – J波(オズボーン波): QRS波群の終わりに現れる陽性動揺 体温30℃以下で出現し、心筋の興奮性が高まり、命に関わる深刻な不整脈を引き起こす危険性がある

予防と迅速な対応が重要

予防と迅速な対応が重要

– 予防と迅速な対応が重要

予期せぬ体温の低下、いわゆる偶発性低体温症は、適切な対策を講じることで防ぐことができます。 特に寒い環境では、体温を保つことが重要です。外出時は、保温性の高い服装を心がけましょう。

体温を逃がさないためには、重ね着が効果的です。 帽子、手袋、マフラーを身に着けることで、体表面、特に頭部や首、手先からの熱の放散を防ぎましょう。 また、風を通しにくい素材の衣服を選ぶことも大切です。

もし衣服が濡れてしまった場合は、速やかに乾いたものに着替えましょう。 濡れた衣服は体温を奪い続けるため、低体温症のリスクが高まります。

低体温症を防ぐには、体温維持に必要なエネルギーを確保することも重要です。 栄養バランスの取れた食事をしっかりと摂り、十分な休息を取りましょう。体調が優れない時や睡眠不足の時は、無理をせず、暖かくして体を休ませることが大切です。

もし、周囲に顔色が悪い、震えが止まらない、呼びかけへの反応が鈍いといった低体温症の症状が見られる場合は、ためらわずに医療機関を受診してください。 早期発見、早期治療が、救命率向上に繋がります。