
災害時の『養生』:それは命を守る防護壁
『養生』と聞くと、多くの人は日々の生活の中で病気にならないように、また健康を保つために、食事や睡眠、運動などに気を配ることだと考えるでしょう。確かに、普段の生活において『養生』は健康の維持増進に役立ちます。しかし、災害医療、特に人体に有害な物質による汚染を伴うNBC災害のような状況下では、『養生』は全く異なる意味を持つのです。NBC災害とは、核(Nuclear)、生物(Biological)、化学(Chemical)物質による災害の総称です。これらの災害では、放射性物質、危険な病原体、有毒ガスなど、人体に深刻な影響を与える物質が放出される可能性があります。このような状況下では、健康維持のためだけではなく、命を守るために『養生』が必要となるのです。具体的には、放射性物質から身を守るためには、屋外への外出を控え、屋内にとどまる、いわゆる「シェルターイン」が重要となります。また、空気中の有害物質を吸い込まないように、窓やドアを閉め、換気扇を止めるなどの対策も必要です。生物災害の場合、感染源との接触を避けるために、人混みを避け、手洗いやうがいを徹底することが重要になります。このように、災害時の『養生』は、普段私たちが健康のために実践していることとは異なる側面を持っていると言えるでしょう。