MODS

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二段侵襲説:体の危機回避システム

- 二段侵襲説とは私たちの体は、病気や怪我など、さまざまなストレスにさらされています。大きなストレスを受けた時、私たちの体はどのように反応し、時には臓器不全に陥ってしまうことがあるのでしょうか。そのメカニズムを説明する理論の一つに、「二段侵襲説」があります。従来は、臓器の機能不全は、一度きりの非常に強い衝撃やストレスによって引き起こされると考えられてきました。例えば、重度の交通事故による外傷や、広範囲にわたる火傷などがその例です。しかし、実際には、比較的軽度のストレスを受けた後、しばらくしてから臓器不全が起きるケースも少なくありません。二段侵襲説は、このような、一見関係なさそうな二つの段階を経て臓器不全に至るプロセスを説明します。第一段階では、感染症や手術、軽度の外傷など、比較的小さなストレスが体に影響を与えます。この時点では、臓器に目立った異常が見られないこともあります。しかし、体の中では、このストレスに対抗しようと、さまざまな変化が起きています。免疫システムが活性化し、炎症反応が起こり、エネルギー代謝が変化するなど、体は戦闘態勢に入ります。そして、この第一段階の影響が残っているところに、第二段階として、新たなストレスが加わると、臓器は一気に機能不全に陥ってしまうのです。第二段階のストレスは、必ずしも大きなものである必要はありません。軽度の感染症や手術、あるいは栄養状態の悪化などでも、臓器不全の引き金になり得ます。つまり、二段侵襲説は、私たちの体が過去のストレスの影響を蓄積している可能性を示唆しており、臓器不全の予防や治療において、この視点を持つことが重要です。
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静かに進行する脅威:多臓器障害とは

- 体の危機信号多臓器障害の概要多臓器障害(MODS)は、深刻な病気や怪我がきっかけとなり、まるで嵐のような過剰な炎症反応が体内で起こることで、複数の臓器が同時に機能不全に陥る恐ろしい病態です。以前は多臓器不全(MOF)とも呼ばれていましたが、近年では適切な治療によって臓器の機能が回復するケースも少なくないことから、多臓器障害(MODS)と表現されることが一般的になっています。MODSは、心臓、肺、肝臓、腎臓といった特定の臓器だけでなく、血液を固める機能、免疫機能、ホルモンの分泌など、体のシステム全体に影響を及ぼす可能性があります。MODSは、大きく分けて二つの段階に分けられます。最初の段階では、感染症や怪我に対する体の防御反応として炎症が起こりますが、この炎症が過剰になり、健康な組織までをも傷つけてしまうことがあります。そして、二つ目の段階では、過剰な炎症によって複数の臓器が機能不全に陥り、生命の危機に瀕します。MODSは、早期発見と適切な治療が極めて重要です。初期症状としては、発熱、呼吸困難、意識レベルの低下、尿量の減少などが挙げられます。MODSは、重症感染症、大怪我、大手術後などに発症するリスクが高く、特に高齢者や基礎疾患のある人は注意が必要です。MODSの治療は、その原因や重症度によって異なり、集中治療室での管理が必要となるケースも少なくありません。人工呼吸器による呼吸管理、血液透析による腎臓の機能を補う治療、循環系の安定化を図る薬物療法などが行われます。MODSは、命に関わる危険性の高い病気ですが、早期発見と適切な治療によって、臓器の機能回復が見込める場合もあります。体の異変に気づいたら、ためらわずに医療機関を受診しましょう。