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放射線の人体への影響と等価線量

現代社会において、放射線は医療現場における画像診断やがん治療、工業分野における非破壊検査、そして研究機関における分析など、様々な場面で活用されています。しかしながら、放射線は私たちの生活に役立つ反面、人体への影響も無視できません。人体が放射線を浴びると、細胞や組織に損傷が生じ、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。放射線による人体への影響度は、放射線の種類やエネルギー、被ばくした体の部位、そして被ばく量によって大きく異なります。例えば、同じ量の放射線を浴びたとしても、エックス線と中性子線では人体への影響が異なりますし、全身に浴びた場合と部分的に浴びた場合でも影響は異なります。そこで、放射線の人体への影響をより正確に評価するために、「等価線量」という概念が用いられます。これは、放射線の種類やエネルギーの違いによる生物学的効果の違いを考慮した指標です。具体的には、吸収線量と呼ばれる、放射線によって身体が吸収したエネルギーの量に、放射線の種類による影響の違いを表す放射線荷重係数をかけたものが等価線量となります。等価線量は、シーベルト(Sv)という単位で表され、この値が大きいほど人体への影響が大きいことを示します。等価線量を理解することで、放射線防護の重要性を認識し、安全な放射線利用につなげることが可能となります。