脳梗塞

けが人へ医療

命を救う治療の裏側:虚血再灌流障害とその影響

私たちの体は、血液を通じて酸素や栄養を全身に届け、健康な状態を保っています。しかし、病気や怪我によって血流が滞ってしまうと、細胞は酸素不足に陥り、大きなダメージを受けてしまいます。これを虚血と呼びます。当然、一刻も早く血流を回復させることが重要となりますが、実は、血流の回復、つまり再び血液が流れ込むことによって、組織に新たな危機が訪れることがあるのです。これが「虚血再灌流障害」と呼ばれる現象です。再び血液が流れ込むことは、一見すると良いことのように思えます。しかし、虚血状態に陥った組織では、活性酸素と呼ばれる有害な物質が大量に発生します。そして、血流が回復した際に、この活性酸素が周囲の組織に拡散し、炎症を引き起こしたり、細胞を傷つけたりしてしまうのです。これが虚血再灌流障害の大きな原因の一つです。虚血再灌流障害は、心臓、脳、腎臓など、様々な臓器で起こる可能性があります。例えば、心筋梗塞や脳梗塞などの治療において、血流を回復させることは非常に重要ですが、同時に再灌流障害のリスクも考慮する必要があります。現在、虚血再灌流障害のメカニズムを解明し、そのリスクを軽減するための研究が進められています。近い将来、より安全で効果的な治療法が確立されることが期待されています。
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一過性脳虚血発作:前兆を見逃さないで

- 一時的な脳の危機皆さんは「一過性脳虚血発作」という言葉を聞いたことがありますか? これはTIAとも呼ばれ、脳への血液の流れが一時的に悪くなることで、様々な神経症状が現れる病気です。例えるなら、脳卒中の軽い症状が短時間だけ現れるようなもので、「脳の軽い梗塞」とも呼ばれています。症状としては、手足の麻痺やしびれ、言葉が出にくくなる、ろれつが回らなくなる、ものが二重に見える、ふらつきなど、脳卒中に似た症状が現れます。 ただし、TIAは脳卒中と違って、これらの症状が通常は数分から数時間以内でおさまってしまう点が特徴です。症状がすぐに消えてしまうため、「気のせい」や「疲れ」と勘違いしてしまいがちですが、TIAは決して軽視してはいけません。 なぜなら、TIAは脳梗塞の前触れである可能性が高く、放置すると命に関わるような重い脳梗塞につながる危険性があるからです。実際に、TIAを経験した人の約3割は、その後、脳梗塞を発症すると言われています。もし、TIAと思われる症状が現れたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。 早期に適切な治療を受けることで、脳梗塞を予防できる可能性があります。
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見過ごせない脳のサイン:可逆性虚血性神経障害

- 一時的な神経症状日常生活において、手足の痺れや、言葉がうまく話せなくなる、呂律が回らなくなるといった神経の症状が一時的に現れることがあります。このような症状は、一般的に数分から数時間でおさまることが多く、多くの人は深刻に捉えずに放置してしまうかもしれません。しかし、これらの症状が24時間以上続く場合は注意が必要です。それは「可逆性虚血性神経障害」と呼ばれる、脳梗塞の一種である可能性があります。可逆性虚血性神経障害は、脳の血管が一時的に詰まることで起こりますが、比較的短時間で血流が再開するため、後遺症が残りにくいのが特徴です。しかし、放置すると本格的な脳梗塞に進行するリスクもあるため、早期の発見と治療が重要となります。手足の痺れや言語障害などの神経症状が一時的に現れた場合でも、24時間以上続く場合は速やかに医療機関を受診しましょう。また、症状が短時間で治まった場合でも、再発の可能性があるため、一度は医師の診察を受けることをおすすめします。