炎症反応

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静かに進行する脅威:多臓器障害とは

- 体の危機信号多臓器障害の概要多臓器障害(MODS)は、深刻な病気や怪我がきっかけとなり、まるで嵐のような過剰な炎症反応が体内で起こることで、複数の臓器が同時に機能不全に陥る恐ろしい病態です。以前は多臓器不全(MOF)とも呼ばれていましたが、近年では適切な治療によって臓器の機能が回復するケースも少なくないことから、多臓器障害(MODS)と表現されることが一般的になっています。MODSは、心臓、肺、肝臓、腎臓といった特定の臓器だけでなく、血液を固める機能、免疫機能、ホルモンの分泌など、体のシステム全体に影響を及ぼす可能性があります。MODSは、大きく分けて二つの段階に分けられます。最初の段階では、感染症や怪我に対する体の防御反応として炎症が起こりますが、この炎症が過剰になり、健康な組織までをも傷つけてしまうことがあります。そして、二つ目の段階では、過剰な炎症によって複数の臓器が機能不全に陥り、生命の危機に瀕します。MODSは、早期発見と適切な治療が極めて重要です。初期症状としては、発熱、呼吸困難、意識レベルの低下、尿量の減少などが挙げられます。MODSは、重症感染症、大怪我、大手術後などに発症するリスクが高く、特に高齢者や基礎疾患のある人は注意が必要です。MODSの治療は、その原因や重症度によって異なり、集中治療室での管理が必要となるケースも少なくありません。人工呼吸器による呼吸管理、血液透析による腎臓の機能を補う治療、循環系の安定化を図る薬物療法などが行われます。MODSは、命に関わる危険性の高い病気ですが、早期発見と適切な治療によって、臓器の機能回復が見込める場合もあります。体の異変に気づいたら、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
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侵襲後の体の反応:CARSって何?

私たちは日常生活の中で、小さなすり傷や切り傷、時には大きな病気や怪我など、様々な原因で身体に傷を負うことがあります。このような外部からの侵襲に対して、私たちの体は傷を治し、元の状態に戻そうと一生懸命働きます。この時、体内で起こる反応の一つに「炎症反応」があります。炎症反応は、傷ついた組織を修復し、細菌などの病原体から体を守るために非常に重要な役割を担っています。 例えば、指を切ってしまった場合、傷口は赤く腫れ、熱を持ち、痛みを感じます。これは、体内で炎症反応が起きているサインです。炎症反応が起こると、血管が広がり、血液の流れが活発になります。そして、血液中から白血球などの免疫細胞が患部に集まり、細菌や損傷した細胞を攻撃し、排除しようとします。しかし、炎症反応は、時に過剰に起こってしまうことがあります。例えば、花粉症は、花粉に対して免疫システムが過剰に反応し、くしゃみや鼻水などの症状を引き起こすアレルギー反応の一種です。また、関節リウマチなどの自己免疫疾患では、免疫システムが自分自身の細胞を攻撃してしまい、慢性的な炎症を引き起こします。炎症反応は、私たちの体を守るために必要な反応ですが、過剰に反応すると体に悪影響を及ぼす可能性もあります。日頃からバランスの取れた食事や十分な睡眠を心がけ、免疫力を高めておくことが大切です。
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全身性炎症反応症候群:SIRSとは?

- 全身性炎症反応症候群とは全身性炎症反応症候群(SIRS)は、私たちの体が病気や怪我などの様々な刺激を受けた際に、その刺激から体を守ろうとする免疫システムが過剰に反応してしまうことで起こる、命に関わる可能性のある深刻な状態です。 細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入して起こる感染症だけでなく、火傷や怪我、手術など、感染を伴わない場合でも発症する可能性があります。本来であれば、免疫システムは体にとって有害な病原体や異物を排除し、傷ついた組織を修復するために働く重要な働きをしています。しかし、SIRSでは、この免疫反応が過剰に起こってしまうことで、健康な組織や臓器にもダメージを与えてしまうのです。SIRSは初期の段階では、発熱や心拍数の増加、呼吸数の増加、白血球数の増加といった症状が現れます。これらの症状は風邪などの一般的な病気でも見られるため、SIRSだと気づかれない場合もあります。しかし、SIRSは放置すると、敗血症性ショックや多臓器不全といったより深刻な状態に進行し、命に関わる危険性も高まります。そのため、SIRSを早期に発見し、適切な治療を開始することが非常に重要となります。