炎症

けが人へ医療

二段侵襲説:体の危機回避システム

- 二段侵襲説とは私たちの体は、病気や怪我など、さまざまなストレスにさらされています。大きなストレスを受けた時、私たちの体はどのように反応し、時には臓器不全に陥ってしまうことがあるのでしょうか。そのメカニズムを説明する理論の一つに、「二段侵襲説」があります。従来は、臓器の機能不全は、一度きりの非常に強い衝撃やストレスによって引き起こされると考えられてきました。例えば、重度の交通事故による外傷や、広範囲にわたる火傷などがその例です。しかし、実際には、比較的軽度のストレスを受けた後、しばらくしてから臓器不全が起きるケースも少なくありません。二段侵襲説は、このような、一見関係なさそうな二つの段階を経て臓器不全に至るプロセスを説明します。第一段階では、感染症や手術、軽度の外傷など、比較的小さなストレスが体に影響を与えます。この時点では、臓器に目立った異常が見られないこともあります。しかし、体の中では、このストレスに対抗しようと、さまざまな変化が起きています。免疫システムが活性化し、炎症反応が起こり、エネルギー代謝が変化するなど、体は戦闘態勢に入ります。そして、この第一段階の影響が残っているところに、第二段階として、新たなストレスが加わると、臓器は一気に機能不全に陥ってしまうのです。第二段階のストレスは、必ずしも大きなものである必要はありません。軽度の感染症や手術、あるいは栄養状態の悪化などでも、臓器不全の引き金になり得ます。つまり、二段侵襲説は、私たちの体が過去のストレスの影響を蓄積している可能性を示唆しており、臓器不全の予防や治療において、この視点を持つことが重要です。
その他

体からのサイン:急性期蛋白質を理解する

私たちは日常生活の中で、ちょっとした切り傷や擦り傷、あるいは風邪などの感染症にかかることがあります。このようなとき、私たちの体は自然治癒力を発揮し、傷ついた部分を修復したり、体内に入ってきた病原菌と戦ったりしようとします。この体の反応こそが炎症と呼ばれるものです。炎症が起こると、患部は赤く腫れ上がり、熱や痛みを感じることがあります。これは、体が治癒のために様々な物質を送り込んでいるサインです。その中には、急性期蛋白質と呼ばれる一群の蛋白質も含まれます。急性期蛋白質は、肝臓で作られ、炎症が起こると血液中に放出されるという特徴があります。医療現場では、この急性期蛋白質を測定することで、体内で炎症が起きているかどうか、そしてどの程度の炎症が起こっているのかを調べることができます。炎症の指標となる急性期蛋白質には、CRPやSAAなど、いくつかの種類があります。これらの検査値を見ることで、病気の診断や治療効果の判定に役立てることができます。また、炎症が長引くと、体に負担がかかり、様々な病気を引き起こす可能性があります。急性期蛋白質の検査は、早期発見・早期治療にも繋がる重要な検査と言えます。
感染症から守る

見えない脅威: エンドトキシンと私たちの闘い

- エンドトキシンその正体エンドトキシンは、私たちの身の回りにありふれている、グラム陰性桿菌と呼ばれる種類の細菌の細胞壁に含まれている物質です。普段は大人しく、私たちが生活する上で特に病気の原因となることはありません。しかし、細菌が死滅したり、破壊されたりすると、状況は一変します。エンドトキシンは細菌の外に放出され、私たちの体内に侵入し始めます。体内に侵入したエンドトキシンは、私たちの体の防衛システムである免疫システムにとって、見過ごすことのできない異物として認識されます。免疫システムは、この侵入者であるエンドトキシンを排除しようと、過剰な反応を引き起こします。これが、様々な体調不良を引き起こす発熱、炎症、ショックなどの原因となるのです。エンドトキシンは、私たちの身の回りの水、空気、土壌など、どこにでも存在する可能性があります。特に、水回りの清掃が不十分な場所や、空調設備のフィルターの汚れなどに多く潜んでいる可能性があります。普段から清潔を心がけ、これらの場所に注意することで、エンドトキシンへの曝露リスクを減らすことができます。
その他

化学メディエータとアレルギー反応

私たちの体の中では、様々な種類の細胞がそれぞれ役割を担い、互いに連携を取りながら活動しています。この細胞間の連携をスムーズに行うためには、細胞同士が情報をやり取りする仕組みが必要不可欠です。細胞間の情報伝達を担う重要な役割を果たしているのが、「化学伝達物質」と呼ばれる物質です。化学伝達物質は、特定の細胞から分泌され、血液などの体液を通じて他の細胞に情報を伝えます。情報を伝える相手は、すぐ近くの細胞の場合もあれば、遠く離れた臓器や組織の細胞である場合もあります。化学伝達物質には、ホルモンや神経伝達物質など、様々な種類が存在します。例えば、ホルモンは、血液によって全身の細胞に運ばれ、成長や代謝、生殖など、体の様々な機能を調節しています。また、神経伝達物質は、神経細胞の間で情報を伝える役割を担っており、思考や感情、運動など、脳の働きに関わっています。このように、化学伝達物質は、細胞間のコミュニケーションにおいて欠かせない役割を担っており、私たちの体が正常に機能するために非常に重要な役割を果たしていると言えるでしょう。今回は、この化学伝達物質の中でも、アレルギー反応に深く関わるものについて詳しく解説していきます。