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身体に優しい治療法:IVRとは?

- 画像診断と治療の融合近年、医療の現場では、患者さんの身体への負担をより軽減できる治療法が求められています。従来の手術に比べて、切開範囲を小さく、身体への負担を軽く抑えられる治療法の一つとして、インターベンショナルラジオロジー(IVR)が注目されています。IVRは、画像診断でおなじみの放射線技術を用いた治療法です。CT、超音波、X線透視といった画像診断技術を用いることで、体内の状態をリアルタイムに把握しながら治療を行うことができます。具体的には、カテーテルなどの医療器具を血管や臓器などの目的の部位まで正確に導き、治療を行います。IVRは、従来の手術に比べて、身体への負担が少ない、低侵襲な治療法として知られています。そのため、体への負担が大きく手術が難しいとされてきた高齢者や合併症を持つ患者さんにも、治療の選択肢を広げることができます。また、入院期間の短縮や早期の社会復帰にもつながることが期待されています。
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見えない脅威:縦隔気腫とその対処法

- 胸部に空気が? 縦隔気腫とは縦隔気腫とは、呼吸によって肺に吸い込まれた空気が、本来あるべきでない胸腔内の縦隔という場所に漏れ出てしまう病気です。縦隔は、心臓や大動脈、大静脈といった太い血管、気管や食道など、生命維持に欠かせない重要な臓器が集まっている場所です。ここに空気が入り込むことで、様々な症状が現れることがあります。縦隔気腫は、胸のレントゲン写真やCT検査で偶然見つかることが多くあります。自覚症状がない場合も多いのですが、症状としては、胸の痛み、呼吸困難、声がれ、首や顔の腫れなどがみられることがあります。原因としては、肺の病気、例えば気管支喘息の悪化や肺炎、肺気腫などが挙げられます。また、激しい咳や嘔吐、重い物を持ち上げる動作など、急激な胸腔内圧の上昇がきっかけとなる場合もあります。交通事故などによる胸部への強い衝撃や医療行為中の合併症によって起こることもあります。多くの場合、縦隔気腫自体は命に関わる病気ではありません。安静にしていれば自然に治ることがほとんどです。しかし、原因や症状によっては、酸素吸入や胸腔ドレナージなどの治療が必要になることもあります。また、まれに、心臓や肺、食道などの臓器が圧迫されて、重篤な合併症を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。気になる症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
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持続的気道陽圧法:その役割と利点

- 持続的気道陽圧法とは持続的気道陽圧法(CPAP)は、呼吸に問題を抱える方を助けるための治療法です。睡眠中に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」の治療法として特に知られていますが、その他多くの呼吸器疾患にも効果があります。この治療法では、鼻に装着したマスクを通して、空気を送り込む機械を使用します。送風機は、常に一定の圧力で空気を送り込み続けることで、気道を広げ、呼吸を楽にする効果があります。睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、睡眠中にのどの奥にある気道が狭くなったり、塞がってしまったりすることで、呼吸が苦しくなります。CPAPはこの気道が狭くなる、あるいは閉塞してしまうことを防ぎ、スムーズな呼吸を助ける役割を果たします。CPAPは、患者さん一人ひとりの症状に合わせて、適切な圧力で空気を送り込むことが重要です。そのため、医師の診断のもと、適切な圧力を設定した専用の機械を使用するようにしてください。
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知っておきたい神経性ショック:原因と症状、治療法まで

- 神経性ショックとは神経性ショックは、背骨の上部、特に胸椎の上の方にある脊髄が損傷されることで起こる深刻な状態です。交通事故や高いところからの落下など、体に強い衝撃が加わると脊髄が傷つき、神経の働きが乱れてしまいます。この神経の乱れが体に大きな影響を与えます。通常、血管は心臓から送り出される血液の量や流れを調整して、血圧を一定に保っています。しかし、神経性ショックの場合、この血管の調整機能がうまく働かなくなり、血管が広がりすぎてしまいます。すると、血液が体の中心から末梢へと過剰に流れ込み、心臓に戻る血液量が減少し、血圧が急激に低下してしまうのです。出血を伴わないにもかかわらずショック状態となるため、医療従事者であっても、初期の診断が難しい場合があります。迅速な診断と適切な治療が救命に不可欠です。
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限局性腹膜炎:原因と治療法

- 腹膜炎の種類腹膜炎は、お腹の中の臓器を包む膜である腹膜に炎症が起こる病気です。腹膜は、胃や腸などの消化器官を衝撃から守ったり、臓器を正しい位置に保つ役割をしています。この腹膜に細菌感染などが起こると、炎症反応によって激しい腹痛や発熱などの症状が現れます。腹膜炎は、炎症が広がる範囲によって大きく二つに分けられます。一つは、お腹全体に広がる汎発性腹膜炎です。汎発性腹膜炎は、消化管に穴が開いてしまい、そこから腸内細菌などが腹腔内へ漏れることによって起こることが多く、緊急手術が必要となる場合が多い重篤な病気です。もう一つは、炎症が一部に限局する限局性腹膜炎です。限局性腹膜炎は、虫垂炎や大腸憩室炎などの炎症が周囲の腹膜に波及することによって起こります。限局性腹膜炎の場合も、放置すると汎発性腹膜炎に進行する可能性があり、早期の治療が重要です。どちらの腹膜炎も、早期発見・早期治療が非常に重要になります。激しい腹痛や発熱など、気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。
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緊急出血時の処置:硬化療法とは?

- 硬化療法の概要硬化療法とは、食道や胃、腸などの消化管や、肛門部にできる痔核といった場所にできる静脈瘤からの出血に対して行われる治療法です。静脈瘤は、静脈の一部が太く膨らんでしまった状態を指します。硬化療法は、緊急を要する出血に対して行われる場合と、出血を予防する目的で行われる場合の二つに分けられます。 緊急性の高い状況においては、出血を速やかに止めるために硬化療法が選択されます。また、出血のリスクが高い場合や、過去に出血を繰り返している場合などには、予防的に硬化療法が行われることがあります。硬化療法では、静脈瘤またはその付近に、硬化剤と呼ばれる薬剤を注射針を用いて注入します。 硬化剤には、静脈瘤の内壁に炎症を引き起こし、血管を固化させる働きがあります。これにより、静脈瘤への血液の流れが止まり、静脈瘤は徐々に縮小していきます。硬化療法は、身体への負担が少ない比較的安全な治療法と考えられていますが、合併症のリスクもゼロではありません。 硬化剤によるアレルギー反応や、注射部位の痛み、腫れ、発赤などがみられることがあります。また、まれに、静脈瘤の破裂や血栓症などの重篤な合併症が起こる可能性もあります。そのため、治療を受ける際には、事前に医師から十分な説明を受け、治療のリスクとベネフィットを理解しておくことが重要です。
その他

抗凝固療法:血栓を予防し、健康を守る

- 抗凝固療法とは抗凝固療法とは、血液を固まりにくくすることで、血管内に血栓ができるのを防ぐ治療法です。 私たちの血液には、血管が傷ついたときに傷口を塞いで出血を止める働きがあります。これは、血液中の成分が複雑に作用することで、血液を固める働きを持つ「血栓」が作られるためです。 しかし、何らかの原因でこの血栓が血管内でできてしまうと、血液の流れが悪くなり、様々な病気を引き起こすことがあります。 例えば、心臓に栄養を送る血管に血栓ができると、心臓の筋肉が壊死してしまう「心筋梗塞」を引き起こします。 また、脳の血管で血栓が生じると、脳梗塞の原因になります。 さらに、足の血管に血栓ができると「エコノミークラス症候群」を発症する可能性があります。抗凝固療法は、このような血栓が原因で起こる病気を予防するために、血液を固まりにくくする薬を服用します。 薬の種類や量は、患者さんの状態や血栓ができるリスクなどを考慮して、医師が適切に判断します。
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生死を分ける胸部大動脈損傷:早期診断と治療の重要性

- 胸部大動脈損傷とは胸部大動脈損傷とは、心臓から身体に血液を送る太い血管である大動脈のうち、胸の部分にある胸部大動脈が損傷してしまう深刻な状態です。交通事故や高所からの転落など、強い衝撃が身体に加わることで、胸部大動脈に大きな力がかかり、引き裂かれたり、断裂したりすることがあります。特に損傷が多いのは大動脈峡部と呼ばれる部分です。ここは心臓から送り出された血液が最初に通る場所で、最も圧力が高いため、損傷を受けやすいとされています。胸部大動脈損傷は、大量出血を引き起こし、適切な処置が遅れると命に関わる危険性があります。そのため、早期発見と迅速な治療が極めて重要です。
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静かなる脅威:ガス壊疽について

- ガス壊疽とはガス壊疽は、傷口から侵入したある種の細菌によって引き起こされる、急速に進行する組織の感染症です。この細菌は、筋肉やその他の組織内でガスを発生させるという特徴があり、これが「ガス壊疽」という名前の由来となっています。ガス壊疽を引き起こす細菌は、土壌や人間の腸内に常在しているものが多く、傷口から体内に入り込むことで感染します。特に、深い傷や、土壌で汚染された傷、銃創や爆発による傷など、組織が大きく損傷している場合に発症しやすくなります。感染初期には、傷口周辺の腫れや痛み、発赤が現れます。その後、患部が急速に腫れ上がり、皮膚の色は赤紫色から青黒く変化していきます。また、触るとパチパチとした音がする場合もあります。さらに、発熱、悪寒、倦怠感、嘔吐などの全身症状が現れ、放置すると敗血症や多臓器不全を引き起こし、死に至ることもあります。ガス壊疽は非常に危険な感染症であるため、早期の診断と治療が不可欠です。治療は、抗生物質の大量投与と、壊死した組織の迅速な外科的切除が中心となります。場合によっては、高圧酸素療法が行われることもあります。ガス壊疽は、適切な傷の処置と早期の医療機関への受診によって予防できる病気です。傷口を清潔に保ち、少しでも異常を感じたら、すぐに医療機関を受診しましょう。