救急救命

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来院時心肺停止とは?:定義と関連用語

病院に到着した時点で、心臓または呼吸、あるいはその両方が停止している状態を「来院時心肺停止」と言い、英語では「cardiopulmonary arrest on arrival」と表記し、略して「CPAOA」と呼びます。この状態は、患者が病院に到着する前に、医師や救急隊員など医療関係者によって心肺蘇生が行われたかどうかは関係ありません。つまり、医療関係者が患者の状態を確認した時点で、心臓と肺のどちらか、あるいは両方が機能していないと判断された場合、その患者は「来院時心肺停止」と診断されます。例えば、心臓が停止していても、救急隊員などによって心臓マッサージや人工呼吸などの心肺蘇生を受けながら病院に到着した場合も「来院時心肺停止」に含まれます。また、病院に到着する直前まで心臓が動いていたものの、病院に到着した際に心臓が停止していた場合も同様に「来院時心肺停止」と診断されます。
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救命の連鎖:二次救命処置の重要性

- 二次救命処置とは二次救命処置とは、突然の心臓停止などにより生命の危機に瀕している人を対象に、医師や看護師、救急救命士といった特別な訓練を受けた医療従事者が行う高度な救命処置です。医療機器や薬剤を使用するため、一般の人がその場で行う一次救命処置とは区別されます。一次救命処置には、胸骨圧迫や人工呼吸といった心肺蘇生法などが含まれます。これは、たまたま居合わせた人でも、特別な医療知識がなくても行うことができます。一方、二次救命処置は、一次救命処置に引き続いて医療機関において開始され、より専門的な知識と技術を必要とします。例えば、電気ショックを用いて心臓の動きを正常に戻す「除細動」や、心臓の動きを維持するための薬剤投与、気管挿管による人工呼吸管理などが行われます。二次救命処置は、心停止からの回復率を高めるために極めて重要です。1970年代以降、心肺蘇生法の普及活動が世界的に広がり、それと同時に一次救命処置と二次救命処置を体系的に指導するシステムが構築されました。その結果、多くの人々が救命処置について学ぶ機会を得て、救命率の向上に大きく貢献しました。二次救命処置は、文字通り人の命を救うための最後の砦と言えるでしょう。
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災害時の備え:タグの重要性

私たちは普段の生活で「タグ」という言葉をよく耳にしますが、それは例えば、洋服に付けられた価格や素材を示すものや、荷物の送り先が書かれたものを指します。しかし、災害時において「タグ」は全く異なる意味を持つようになります。それは「トリアージタグ」と呼ばれるもので、災害現場で負傷者の状態を迅速に判断し、治療の優先順位を決めるために用いられます。災害が発生すると、多数の負傷者が発生する可能性があります。しかし、限られた医療資源と人員の中で、全ての負傷者をすぐに適切な治療することは困難です。そこで、一人ひとりの状態を素早く評価し、治療の緊急度を判断する「トリアージ」が必要となります。トリアージタグは、このトリアージを行う際に用いられる重要なツールです。タグには色や番号が記されており、負傷者の状態に応じてタグを付け替えることで、治療の優先順位が一目で分かるようになっています。例えば、重症で一刻を争う負傷者には赤色のタグ、比較的症状が軽く、治療を後回しできる負傷者には緑色のタグを付けます。このように、災害時の「タグ」は単なるラベルではなく、多くの命を救うために重要な役割を担っているのです。
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緊急時に役立つ!? ジェット換気とは

- ジェット換気の仕組みジェット換気は、自力で呼吸が難しい人を補助する人工呼吸法の一つで、ジェット流と呼ばれる、勢いのある空気の流れを用いた換気方法です。この方法では、一般的な人工呼吸とは違い、短時間に高圧の空気を気道に送り込むことで、迅速かつ効果的に肺に空気を取り込みます。ジェット換気では、まず気管に挿入した細い管を通して、高速のジェット気流を肺に送り込みます。この時、高速の空気の流れが周囲の空気を巻き込む「エントレインメント」と呼ばれる現象が起こり、肺の中に十分な量の空気が取り込まれます。その後、圧力が弱まるタイミングで自然に息が吐き出される仕組みになっています。従来の人工呼吸に比べて、ジェット換気は短時間での換気が可能なため、緊急性の高い状況や、胸部に損傷がある場合などにも用いられます。また、気管切開などの処置を行わずに、口や鼻から管を挿入するだけで行えるという利点もあります。しかし、ジェット換気は高度な技術を必要とするため、適切な知識と経験を持った医療従事者によって行われることが重要です。
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災害現場で役立つSTART法:迅速な救命 triage

- START法とはSTART法とは、「Simple Triage And Rapid Treatment」の頭文字をとった言葉で、日本語では「簡易評価と迅速処置」という意味です。災害現場など、多くの負傷者が発生し、限られた医療資源の中でより多くの命を救うために、負傷者の緊急度を迅速に判定する方法です。地震や台風など大きな災害が起こると、同時にたくさんの負傷者が発生します。病院は、このような事態にすぐに対応できない状況に陥る可能性があります。このような緊急時において、一刻も早く治療をしなければ命を落としてしまう重症の人を、見た目などである程度判断し、治療の順番を決めることが重要です。START法では、まず歩くことができるかどうかで、治療の緊急性の高いグループと低いグループに大きく分けます。歩けないと判断された人には、次に呼吸ができているか、脈はあるかなどを確認し、さらにグループを細かく分けていきます。そして、呼吸や脈の状態などから緊急度が高いと判断された人から治療を開始するという手順になります。START法は、限られた医療従事者でも、迅速かつ効率的に負傷者の緊急度を判断し、多くの命を救うために有効な方法と言えるでしょう。