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外傷の重症度を評価するAISとは?

- AISの概要AISは、怪我の重症度を客観的に評価し、記録するための国際的な基準です。正式名称は「解剖学的傷害重症度スコア(Anatomical Injury Severity Score)」と言います。事故や転倒など、様々な原因で起こる怪我について、その深刻さを数値化することで、医療現場における情報共有や治療方針の決定、そして交通事故などの原因分析などに役立てられています。AISは1971年にアメリカで初めて発表され、その後も医学の進歩に合わせて定期的に改訂が重ねられています。 人体を頭部や胸部、腹部など9つの部位に分け、それぞれの部位に起こった怪我について、その程度を1から6までの6段階で評価します。 1が最も軽度で、6が最も重症な状態を表します。例えば、かすり傷のような軽い怪我であれば1、命に関わるような重度の怪我であれば6と評価されます。このAISを用いる最大のメリットは、医師間で怪我の程度について共通認識を持つことができる点にあります。 従来は、医師の経験や主観に頼って怪我の重症度を判断していましたが、AISを用いることで、より客観的で正確な評価が可能になりました。 これにより、患者さんにとってより適切な治療方針を決定できるようになり、救命率の向上や後遺症の軽減にも繋がると期待されています。AISは、交通事故の分析や予防にも活用されています。事故の状況とAISによる怪我の程度を照らし合わせることで、事故の原因究明や安全対策の強化に役立てられています。
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めまいと失神にご用心! アダムス・ストークス症候群とは

私たちの体にとって、心臓は休むことなく全身に血液を送る重要な役割を担っています。この心臓の動き、つまり拍動のリズムが乱れると、様々な体の不調につながることがあります。その一つに「アダムス・ストークス症候群」と呼ばれる病気があります。アダムス・ストークス症候群は、心臓の拍動リズムが乱れることで発症します。心臓は、規則正しいリズムを刻むことで、全身に血液を送り出すポンプのような働きをしています。しかし、このリズムが乱れると、血液を送り出す力が弱まり、十分な血液が全身に行き渡らなくなることがあります。特に、脳は酸素を多く必要とする器官であるため、血液の流れが悪くなると、酸素不足に陥りやすい状態になります。アダムス・ストークス症候群では、一時的に脳への血流が不足することで、めまいやふらつき、意識が薄れる、といった症状が現れます。重症の場合には、意識を失ってしまうこともあります。このように、アダムス・ストークス症候群は、心臓のリズムの乱れが、脳へと影響を及ぼすことで引き起こされる病気です。
その他

ムスカリン様作用:有機リン中毒と関連深い作用

- ムスカリン様作用とは私たちの体には、自律神経系と呼ばれる、意識せずに体の機能を調節する神経系が存在します。自律神経系は、交感神経と副交感神経の二つで構成され、それぞれが opposing な作用を持つことで体の状態をバランス良く保っています。ムスカリン様作用は、このうち副交感神経の働きに関わる作用です。副交感神経は、神経伝達物質としてアセチルコリンを用い、体の安静時やリラックス時に優位になり、心拍数の低下や消化機能の促進など、休息と消化に関連する体の働きを調整します。この時、アセチルコリンが標的となる器官の細胞表面にあるムスカリン受容体というレセプターに結合することで、様々な反応を引き起こします。これがムスカリン様作用です。ムスカリン様作用は、心臓、血管、消化管、気管、瞳孔、膀胱など、体の様々な器官に影響を与えます。例えば、心臓に対しては心拍数を抑える作用、血管に対しては拡張させて血圧を下げる作用、消化管に対しては蠕動運動を促進して消化を助ける作用、気管に対しては収縮させて呼吸を抑制する作用などがあります。また、瞳孔を縮小させて眼圧を下げる作用もあります。ムスカリン様作用を人為的に引き起こす薬もあり、 緑内障治療薬、消化管機能改善薬、気管支喘息治療薬などとして医療現場で使用されています。しかし、ムスカリン様作用は体の多くの部分に作用するため、薬の使用により口の渇き、便秘、尿閉などの副作用が現れる可能性もあります。
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非侵襲的陽圧換気法:やさしい呼吸管理

- 非侵襲的陽圧換気法とは非侵襲的陽圧換気法(NIPPV)は、呼吸が苦しい患者さんの肺に、外から空気を送り込むことで呼吸を助ける治療法です。従来の人工呼吸器は、口や鼻から気管に管を入れる必要がありました。しかし、NIPPVでは、鼻や口を覆うマスクを装着するだけで治療が可能です。そのため、気管挿管に伴う痛みや不快感、合併症のリスクを回避できます。NIPPVは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や心不全、睡眠時無呼吸症候群など、様々な呼吸器疾患の治療に用いられます。特に、在宅医療においても重要な役割を担っており、患者さんが自宅でより快適に過ごせるようサポートします。NIPPVは、患者さんの負担を軽減できる一方、適切なマスクの選択や装着、空気圧の設定などが重要となります。そのため、医師や呼吸療法士などの専門家による適切な指導と管理が必要です。
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二相性陽圧とは?仕組みと利点を解説

二相性陽圧の概要二相性陽圧は、自発的に呼吸をする力を助ける医療機器の一つで、持続的気道内陽圧(シーパップCPAP)をさらに進化させたものです。シーパップは、常に一定の圧力で空気を気道に送り込み続けることで、気道の閉塞を防ぎます。一方、二相性陽圧は、シーパップのように常に一定の圧力をかけるのではなく、高い圧力と低い圧力を交互にかけることで、より自然な呼吸をサポートします。この圧力の変化は、通常、自発呼吸のリズムよりも長い周期で繰り返されます。低い圧力の時は、息を吸いやすくすることで呼吸を楽にし、高い圧力の時は、十分な酸素を体に取り込めるようにサポートします。この二つの圧力を交互にかけることで、自然な呼吸のリズムに近づき、快適な睡眠を得ることができます。二相性陽圧は、シーパップよりも効果が高い場合があり、睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられます。ただし、すべての人に効果があるわけではなく、医師の診断が必要です。
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体のSOSを見逃すな!:粘膜内pHでわかること

私たちは日々、呼吸をすることで酸素を取り込み、体中に送っています。この酸素は、体の中で行われる様々な活動のエネルギー源として欠かせないものです。もし、酸素が不足してしまうと、細胞は正常に働かなくなり、体に様々な不調が現れます。酸素不足は、目に見える形で現れるとは限りません。そのため、体の奥深くで起きている酸素不足を早期に発見することは容易ではありません。しかし、最近注目されている「粘膜内pH」を測定することで、血液検査などでは分からない、体の奥の酸素不足の状態を把握できる可能性があります。「粘膜内pH」とは、胃や腸などの粘膜の酸性度を示す数値です。酸性度は、0から14の範囲で表され、数値が低いほど酸性が強く、高いほどアルカリ性が強くなります。健康な状態では、粘膜内pHは弱酸性に保たれています。しかし、酸素不足の状態になると、細胞はエネルギーを生み出すために乳酸を作り出すようになり、その結果、粘膜内pHが酸性に傾くのです。粘膜内pHの変化は、自覚症状が出る前に現れることもあるため、体の奥底で起きている酸素不足のサインを見つけるための重要な指標となります。
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傷を癒す技術:代用皮膚の可能性

私たちの体は、外界と触れ合う場所である皮膚によって守られています。皮膚は、細菌やウイルスなどの侵入を防いだり、体温を調節したりするなど、私達が健康な生活を送る上で欠かせない役割を担っています。しかし、やけどや事故、手術などによって、この大切な皮膚が傷ついてしまうことがあります。皮膚の損傷は、見た目の問題だけでなく、細菌感染のリスクを高めたり、体内の水分が失われやすくなったりするなど、健康にも大きな影響を与えます。このような皮膚の損傷を治し、失われた皮膚の機能を補うために、様々な治療法が開発されてきました。その中でも近年、特に注目を集めているのが「代用皮膚」です。代用皮膚とは、まるで自分の皮膚のように、傷口を覆い、皮膚の再生を促す人工的に作られた皮膚のことを指します。代用皮膚は、実際の皮膚と同じような構造や機能を持つように作られており、傷口を外部の刺激から守りながら、皮膚の細胞が再生しやすい環境を整えます。従来の治療法と比べて、傷跡が目立ちにくく、治癒を早める効果も期待できることから、医療現場で広く活用され始めています。
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多臓器損傷:その危険性と対応

- 多臓器損傷とは交通事故などの大きな事故に遭ったり、災害に巻き込まれたりした際に、私たちの身体は大きな衝撃を受け、様々な傷を負うことがあります。中でも、一度に複数の臓器が損傷を受けてしまう「多臓器損傷」は、命に関わる危険性も非常に高く、一刻を争う深刻な状態です。多臓器損傷は、例えば交通事故で腹部を強く打ち付け、肝臓や脾臓、腎臓など、お腹の中にある複数の臓器が同時に傷ついてしまうような場合を指します。このような状態に陥ると、それぞれの臓器が正常に機能しなくなるだけでなく、臓器同士の連携も崩れてしまい、全身に悪影響が及ぶ可能性があります。多臓器損傷は、初期の段階では外見からはその深刻さを判断しにくい場合もあります。しかし、時間の経過とともに容態が急変する可能性も高く、早期発見と適切な処置が救命の鍵となります。そのため、交通事故などに遭った後、たとえ軽傷だと思えても、必ず医療機関を受診し、医師の診察を受けるように心がけましょう。
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危険なサインを見逃すな!チェーンストークス呼吸とは?

- 呼吸の異変、チェーンストークス呼吸とはチェーンストークス呼吸とは、呼吸のリズムと深さに異常がみられる呼吸パターンのことです。健康な状態では、呼吸は一定のリズムと深さを保っていますが、チェーンストークス呼吸では、浅く速い呼吸から始まり、次第に呼吸が深くゆっくりとなっていきます。そして、再び浅く速い呼吸に戻り、最終的には数秒から数十秒にわたって呼吸が停止する「無呼吸」状態になります。この、呼吸が徐々に速く深くなり、その後遅く浅くなって無呼吸に至るというサイクルを繰り返すのが、チェーンストークス呼吸の特徴です。チェーンストークス呼吸は、心不全や脳卒中、脳腫瘍などの病気によって脳の呼吸中枢が障害されることで起こると考えられています。また、モルヒネなどの薬剤の影響で現れることもあります。チェーンストークス呼吸がみられる場合は、背景にある病気が進行している可能性があります。そのため、速やかに医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けることが重要です。
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致死的3徴とは:重症外傷における危険な兆候

- 致死的3徴の概要事故や災害で大きな怪我を負った時、命に関わる深刻な状態に陥ることがあります。医学の世界では『致死的3徴』と呼ばれるものがそれにあたります。これは、一般的に死のサインとして知られる『瞳孔反応の停止』『呼吸の停止』『心臓の停止』の三徴とは全く異なるものです。致死的3徴は、重症外傷後に現れる『低体温』『アシドーシス』『凝固異常』の3つの状態を指します。 これらの状態が重なると、生存率が著しく低下してしまうため、一刻を争う迅速な処置が必要となります。まず、『低体温』とは、文字通り体温が低下した状態を指します。大量出血や体温の低下する環境下では、体が冷えやすく、低体温に陥りやすくなります。低体温になると、心臓、脳、血液の循環などの機能が低下し、生命の危機に繋がります。次に、『アシドーシス』は、血液が酸性に傾いた状態です。呼吸不全やショック状態になると、体内で酸素がうまく取り込めなくなり、血液中に酸が溜まりやすくなります。アシドーシスは、心臓の機能低下や意識障害を引き起こし、最悪の場合、死に至ることもあります。最後に、『凝固異常』は、血液が固まりにくくなる状態です。大怪我や手術などにより大量出血が起こると、血液の凝固因子と呼ばれる成分が消費され、体が本来持つ止血機能がうまく働かなくなります。その結果、出血が止まらず、生命の危機に直面することになります。このように、致死的3徴はそれぞれが独立した危険因子であると同時に、互いに悪影響を及ぼし合い、負の連鎖を引き起こす点に注意が必要です。迅速な処置と適切な治療によって、この負の連鎖を断ち切ることが、救命率向上に不可欠と言えるでしょう。
その他

突然死:その原因と予防について

- 身近に潜む突然死の脅威健康に過ごしていた人が、ある日突然、命を落とす「突然死」。ニュースなどで目にすることもありますが、決して他人事ではありません。交通事故などの外からの要因で亡くなる場合を除き、心臓や脳など、体の中で起こる病気が原因で、発症してから24時間以内に亡くなる場合を指します。突然死は、私たちのすぐそばに潜む脅威と言えるでしょう。突然死の主な原因として、心臓の病気が挙げられます。なかでも、心臓の血管が詰まってしまう急性心筋梗塞や、心臓の筋肉が厚くなる肥大型心筋症などが代表的です。また、脳の血管が破れたり詰まったりする脳卒中も、突然死を引き起こす重大な病気です。その他、気管支喘息の発作や、アレルギー反応によるアナフィラキシーショックなども、突然死の原因となり得ます。突然死は、その予兆に気づくことが難しい場合も少なくありません。しかし、日頃から健康的な生活習慣を心がけることで、リスクを減らすことは可能です。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけ、喫煙は避け、過度な飲酒は控えましょう。また、健康診断を定期的に受診し、自身の体の状態を把握しておくことも大切です。万が一、突然死が起きた場合には、一刻も早い救命処置が必要です。周囲の人が心肺蘇生などの応急処置を行うことによって、命を救える可能性があります。また、AED(自動体外式除細動器)の使用も有効です。いざという時のために、心肺蘇生法やAEDの使い方を習得しておくことをお勧めします。
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体外式肺補助:重症呼吸不全の最後の砦

- 体外式肺補助とは体外式肺補助(ECLA)は、病気や怪我などによって、自力で呼吸することが難しくなった場合に、肺の働きを一時的に代替する治療法です。私たちの体にとって、呼吸は生きていくために欠かせないものです。 息を吸うことで、肺の中に酸素が取り込まれ、血液によって体の隅々まで届けられます。 同時に、不要になった二酸化炭素は、息を吐くことで体外へ排出されます。 しかし、肺炎や事故などによって肺が正常に機能しなくなると、この呼吸によるガス交換がうまくいかなくなり、「呼吸不全」という状態に陥ります。 呼吸不全は、放置すると生命に関わる危険な状態です。このような場合に、肺の代わりに血液中の酸素と二酸化炭素を交換するのが、ECLAという治療法です。 ECLAでは、人工心肺装置と呼ばれる機械を用いて、血液を体外へ循環させます。 そして、人工肺によって血液中の二酸化炭素を取り除き、酸素を送り込みます。 こうすることで、肺が正常に機能していなくても、血液中の酸素濃度を保ち、体の各臓器へ酸素を供給することが可能になります。ECLAは、あくまで肺の機能を回復させるまでの間の補助的な役割を担うものです。 肺の機能が回復するまで、あるいは肺移植が可能になるまでの間、患者さんの命をつなぐための大切な治療法と言えるでしょう。
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知っておきたい!クラッシュシンドロームの脅威

大地震や建物崩壊といった災害現場は、救助を待つ多くの人々にとって、過酷な環境となります。瓦礫の下敷きとなり身動きが取れない状態が長く続くことは、肉体的にも精神的にも大きな負担となり、命に関わる深刻なリスクをもたらします。その中でも特に注意が必要な症状の一つに、「挫滅症候群」と呼ばれるものがあります。「挫滅症候群」は、長時間、体の広い範囲を圧迫されることで引き起こされます。筋肉組織が損傷を受けると、ミオグロビンやカリウムなどの物質が血液中に流れ込みます。そして、救出されて圧迫が解放されると、これらの物質が心臓や腎臓などの重要な臓器に悪影響を及ぼし、場合によっては命を落とす危険性もあるのです。症状としては、意識障害、呼吸困難、不整脈、腎不全などが挙げられます。そのため、災害現場においては、安否確認を迅速に行い、救助活動を進めることが極めて重要です。また、「挫滅症候群」の可能性を考慮し、救出された方の容態を注意深く観察する必要があります。迅速な医療処置が、救命率の向上に大きく貢献します。
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建物の倒壊とクラッシュ症候群

日本列島は、複数のプレートが複雑に重なり合う場所に位置しており、世界的に見ても地震活動が活発な地域です。そのため、いつどこで大地震が発生しても不思議ではありません。巨大地震が発生した場合、家屋の倒壊や損壊による被害が懸念されます。建物が倒壊すると、そこに住む人々が瓦礫の下敷きになり、命を落とす危険性があります。また、家屋の倒壊は、直接的な被害だけでなく、二次的な健康被害をもたらす可能性も孕んでいます。その代表的な例が、「クラッシュ症候群」と呼ばれる状態です。クラッシュ症候群とは、地震などによって倒壊した建物や家具の下敷きになり、長時間、身体が圧迫された状態が続くことで発症する症候群です。長時間圧迫された筋肉が壊死し、有害物質が血液中に流れ出すことで、腎臓などの臓器に障害を引き起こす可能性があります。地震は、いつ、どこで発生するかわかりません。日頃から地震への備えをしておくことが重要です。家具の固定や避難経路の確認、非常持ち出し袋の準備など、できることから始めましょう。
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緊急事態における循環亢進:敗血症ショックへの理解

- 循環動態の基礎私たちは、心臓が絶えず血液を送り出すことで、生きていくために必要な酸素や栄養を体の隅々まで届けています。この血液循環の仕組み全体を循環動態と呼び、私たちの生命維持に欠かせないものです。循環動態を理解する上で重要な指標となるのが、心臓が1分間にどれだけの血液を送り出すかを示す「心拍出量」と、血管の縮み具合を表す「末梢血管抵抗」です。心臓が力強く収縮すると、一度に多くの血液を送り出すことができます。このため、心拍出量は増加します。一方、血管が収縮すると血液が流れにくくなるため、末梢血管抵抗は高くなります。逆に、血管が広がると血液は流れやすくなるため、末梢血管抵抗は低くなります。このように、心拍出量と末梢血管抵抗は、お互いに影響し合いながら循環動態を調節しています。このバランスが崩れると、血圧が変動したり、臓器への血液供給が滞ったりするなど、様々な体の不調につながる可能性があります。
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除脳硬直:その特徴とメカニズム

- 定義-# 定義除脳硬直とは、脳幹の中でも中脳や橋と呼ばれる部分が損傷を受けることで、手足が突っ張ったように伸びてしまう状態を指します。脳幹は、生命維持に不可欠な機能を司る重要な部位です。特に中脳や橋は、意識や運動、呼吸などをコントロールする神経が集まっている場所です。これらの部位が損傷を受けると、脳から手足への運動指令がうまく伝わらなくなり、手足が不自然に伸びた状態になってしまいます。これが除脳硬直です。除脳硬直は、意識障害を伴う重篤な脳損傷の兆候であることが多く、交通事故や頭部外傷、脳卒中などで起こる可能性があります。除脳硬直が見られた場合は、一刻も早く医療機関を受診する必要があります。迅速な診断と治療によって、後遺症のリスクを減らすことができる可能性があります。
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持続的気道陽圧法:その役割と利点

- 持続的気道陽圧法とは持続的気道陽圧法(CPAP)は、呼吸に問題を抱える方を助けるための治療法です。睡眠中に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」の治療法として特に知られていますが、その他多くの呼吸器疾患にも効果があります。この治療法では、鼻に装着したマスクを通して、空気を送り込む機械を使用します。送風機は、常に一定の圧力で空気を送り込み続けることで、気道を広げ、呼吸を楽にする効果があります。睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、睡眠中にのどの奥にある気道が狭くなったり、塞がってしまったりすることで、呼吸が苦しくなります。CPAPはこの気道が狭くなる、あるいは閉塞してしまうことを防ぎ、スムーズな呼吸を助ける役割を果たします。CPAPは、患者さん一人ひとりの症状に合わせて、適切な圧力で空気を送り込むことが重要です。そのため、医師の診断のもと、適切な圧力を設定した専用の機械を使用するようにしてください。
その他

呼吸性アシドーシス:原因と症状、そして対策について

- 呼吸性アシドーシスとは人間の体は、常に一定の状態に保たれています。それは体温の調節や、今回のテーマである体内の酸性とアルカリ性のバランスも例外ではありません。このバランスが崩れ、血液が酸性に傾いた状態をアシドーシスと呼びますが、その中でも肺の機能低下が原因で起こるものを呼吸性アシドーシスと言います。私たちは呼吸をすることで、体内に酸素を取り込み、それと同時に二酸化炭素を体外へ排出しています。この二酸化炭素は、体内で酸性を示す物質に変化します。健康な状態であれば、呼吸によってこの酸性の物質が体外へ排出されるため、血液の酸性度は一定に保たれています。しかし、肺の病気や呼吸筋の麻痺などにより、呼吸機能が低下すると、体外へ排出されるべき二酸化炭素が体内に蓄積してしまうのです。その結果、血液中の酸性度が上昇し、呼吸性アシドーシスを引き起こします。呼吸性アシドーシスの主な症状としては、倦怠感や頭痛、意識障害などがあります。重症化すると、昏睡状態に陥り、命に関わる危険性も高まります。呼吸が速くなったり、息苦しさを感じたりする場合は、呼吸性アシドーシスの可能性も考えられますので、速やかに医療機関を受診しましょう。
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高気圧酸素療法:現代医療における新たな可能性

- 高気圧酸素療法とは高気圧酸素療法とは、普段私たちが生活している気圧よりも高い、2~3気圧という特殊な環境に設置された部屋の中で、高濃度の酸素を吸入する治療法です。この治療法は、体に取り込む酸素の量を大幅に増やすことで、様々な病状の改善に効果を発揮します。私たちの体は、呼吸によって酸素を取り込み、血液によって全身に運びます。しかし、病気や怪我などによって、血液の流れが悪くなったり、酸素を十分に取り込めなくなったりすることがあります。このような状態になると、体の組織は酸素不足に陥り、様々な機能が低下してしまいます。高気圧酸素療法では、気圧を高めた環境で高濃度の酸素を吸入することで、血液中に溶け込む酸素の量を増加させます。これにより、酸素不足に陥っている組織にも十分な酸素を供給することができるようになり、組織の修復や機能回復を促します。高気圧酸素療法は、一酸化炭素中毒や潜水病などの急性疾患から、難聴や糖尿病性壊疽などの慢性疾患まで、幅広い疾患に効果が期待できます。また、近年では、美容や健康増進を目的とした利用も増えています。
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命を救う治療の裏側:虚血再灌流障害とその影響

私たちの体は、血液を通じて酸素や栄養を全身に届け、健康な状態を保っています。しかし、病気や怪我によって血流が滞ってしまうと、細胞は酸素不足に陥り、大きなダメージを受けてしまいます。これを虚血と呼びます。当然、一刻も早く血流を回復させることが重要となりますが、実は、血流の回復、つまり再び血液が流れ込むことによって、組織に新たな危機が訪れることがあるのです。これが「虚血再灌流障害」と呼ばれる現象です。再び血液が流れ込むことは、一見すると良いことのように思えます。しかし、虚血状態に陥った組織では、活性酸素と呼ばれる有害な物質が大量に発生します。そして、血流が回復した際に、この活性酸素が周囲の組織に拡散し、炎症を引き起こしたり、細胞を傷つけたりしてしまうのです。これが虚血再灌流障害の大きな原因の一つです。虚血再灌流障害は、心臓、脳、腎臓など、様々な臓器で起こる可能性があります。例えば、心筋梗塞や脳梗塞などの治療において、血流を回復させることは非常に重要ですが、同時に再灌流障害のリスクも考慮する必要があります。現在、虚血再灌流障害のメカニズムを解明し、そのリスクを軽減するための研究が進められています。近い将来、より安全で効果的な治療法が確立されることが期待されています。
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知らないと危険!頸動脈洞症候群とは?

- 頸動脈洞症候群とは何か首の両側には、心臓から脳へ血液を送る太い血管である頸動脈が通っています。この頸動脈の分岐点付近には、頸動脈洞と呼ばれる重要な場所があります。頸動脈洞は、血管内の圧力を感知するセンサーの役割を担っており、血圧の調整に深く関わっています。通常、血圧が上昇すると、頸動脈洞にあるセンサーがこの変化を感知し、脳に信号を送ります。すると、脳からの指令で心臓の動きが抑制され、血圧は正常な範囲に保たれます。しかし、頸動脈洞症候群では、この頸動脈洞が過敏になってしまい、少しの刺激や圧迫でも過剰に反応してしまう状態です。例えば、ネクタイをきつく締めたり、髭を剃ったり、激しい運動をしたりすることで頸動脈洞が刺激されると、めまいやふらつき、冷や汗、吐き気などの症状が現きます。さらに、症状が進むと、意識を失ってしまうこともあります。このような症状が現れた場合、速やかに医療機関を受診する必要があります。
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緊急医療の切り札:経皮的心肺補助(PCPS)とは?

- 経皮的心肺補助(PCPS)の概要経皮的心肺補助(PCPS)は、心臓や肺が正常に機能しなくなり、生命の危機に瀕している患者さんの血液循環と呼吸を補助する治療法です。心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割、肺は血液中に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する役割を担っていますが、心筋梗塞や重症肺炎などが原因でこれらの臓器が機能不全に陥ると、血液循環が悪化し、全身の組織に酸素が行き渡らなくなります。このような状態を放置すると、臓器障害が進行し、死に至る可能性もあります。PCPSは、開胸手術を行うことなく、足の付け根や首などの血管からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、心臓と肺の働きを補助します。カテーテルは、体外に設置された人工心臓ポンプと人工肺に接続され、血液を体外循環させます。人工心臓ポンプは、心臓の代わりとなって血液を全身に送り出し、人工肺は、血液中の二酸化炭素を取り除き、酸素を供給します。PCPSは、従来の開胸手術を必要とする心肺補助と比較して、身体への負担が小さく、短時間で開始できるという利点があります。そのため、緊急性の高い心臓や肺の疾患の治療に広く用いられるようになっています。
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生命を支える血液浄化法:その役割と種類

- 血液浄化法とは人間の体には、不要なものを体外へ排出する働きが備わっています。腎臓もその役割を担う臓器の一つで、血液をろ過し、老廃物や余分な水分を尿として排出しています。しかし、腎臓の機能が低下すると、体内に老廃物が蓄積し、様々な症状が現れます。血液浄化法は、低下した腎臓の働きを補い、血液を浄化する治療法です。血液浄化法には、大きく分けて「血液透析」と「血液濾過」の二つの方法があります。血液透析は、透析器と呼ばれる装置を用いて、血液と透析液という特殊な液体を、半透膜を介して接触させます。この時、濃度の差を利用して、血液中の老廃物や余分な水分を透析液側に移動させ、除去します。血液濾過は、血液を特殊なフィルターに通すことで、老廃物や余分な水分をろ過する方法です。体への負担が比較的少なく、体に優しい治療法として知られています。これらの治療法は、腎臓の機能が低下した腎不全の患者さんに行われるほか、重症の心臓病や糖尿病、一部のがんなどの治療にも用いられています。血液浄化法は、患者さんの生活の質を維持し、生命を prolong する上で、非常に重要な役割を担っています。
その他

命に関わる緊急事態!急性大動脈解離とは?

私たちの体の中には、心臓から送り出された血液を全身に運ぶ、非常に重要な役割を担う血管があります。それが大動脈です。まるで体中に張り巡らされた高速道路のように、大動脈は酸素を豊富に含んだ血液を体の隅々まで届け、私たちが生きていく上で欠かせない働きをしています。しかし、この重要な大動脈に、ある日突然異変が起こることがあります。それが急性大動脈解離と呼ばれる病気です。この病気は、大動脈の壁に亀裂が入り、その亀裂から血液が血管壁の中に流れ込んでしまうことで起こります。まるで高速道路に亀裂が入り、そこから車が入り込んでしまうようなもので、大変危険な状態です。急性大動脈解離は、突然激しい痛みに襲われることが多く、一刻も早く適切な処置を受けなければ命に関わることもあります。日頃から動脈硬化などのリスク因子を減らす生活を心がけ、万が一、突然の胸や背中の痛みに襲われた場合には、ためらわずにすぐに医療機関を受診することが重要です。