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ダメージコントロールサージェリー:外傷治療の最前線

- 戦闘の知恵から生まれた医療戦略ダメージコントロールサージェリー(DCS)という言葉をご存知でしょうか。これは、元々は戦闘で損傷を受けた艦船を速やかに応急処置し、沈没を防いで港まで持ち帰るための軍事用語でした。それが今、医療の現場で、生命の危機に瀕した外傷患者を救うための戦略として確立しつつあります。戦闘現場では、一刻を争う状況下で、限られた資源と人員で最大の効果を上げる必要があります。そこで重要となるのが、ダメージコントロールの考え方です。これは、損傷のすべてを完全に修復しようとするのではなく、まず致命的な損傷箇所を迅速に処置し、機能を最低限回復させることを優先する考え方です。この考え方を医療に応用したのがDCSです。外傷を負った患者、特に出血を伴う重症患者は、時間との闘いとなります。従来の手術のように、損傷のすべてを完璧に治療しようとすると、時間ばかりが経過し、患者の状態が悪化してしまう可能性があります。そこでDCSでは、まず生命に関わる重篤な出血を最優先で止血し、呼吸と循環を確保します。そして患者の状態を安定させてから、改めて詳細な検査や手術を行うのです。このように、DCSは戦闘の現場で培われた迅速かつ効率的な対応の原則を、医療の現場に応用した革新的な戦略といえるでしょう。
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救命の砦:大動脈内バルーン遮断とは

一刻を争う事態である重篤な出血性ショック状態の患者さんを救命する手段として、『大動脈内バルーン遮断』という治療法があります。これは、外傷による出血などで、命に関わるほどの大量出血が起きた場合に、緊急的に行われる極めて高度な医療技術です。出血性ショックに陥った場合、輸液や輸血といった標準的な治療がまず行われます。しかし、これらの治療にも関わらず、容体が改善せず心臓が停止する危険性が非常に高い場合には、最後の手段としてこの大動脈内バルーン遮断が選択されることがあります。大動脈内バルーン遮断は、カテーテルと呼ばれる細い管を脚の付け根の血管から挿入し、心臓近くの大動脈まで進めます。そして、カテーテルの先端にあるバルーンを膨らませることで大動脈を一時的に閉鎖し、脳や心臓などの重要な臓器への血流を確保することを目的としています。時間との闘いとなる緊急性の高い処置であるため、救命率は決して高くありません。しかし、この治療法によって、貴重な時間を稼ぎ、その間に止血などの根本的な治療を行うことが可能となります。まさに、一刻を争う事態における最後の砦と言えるでしょう。