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脅威の食中毒:溶血性尿毒症症候群を知っていますか?

食中毒と聞くと、吐き気や下痢といった症状を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。確かに、多くの場合、食中毒は比較的軽い症状で済むことが多いです。しかし、油断は禁物です。中には、命に関わるような重い合併症を引き起こす危険な食中毒も存在するのです。その一つが、今回ご紹介する「溶血性尿毒症症候群(HUS)」です。HUSは、腸管出血性大腸菌O157などの特定の細菌が作り出す毒素によって引き起こされます。この毒素は、体内に侵入すると、血液中の赤血球を破壊し、腎臓などの臓器に深刻なダメージを与えます。その結果、血便や血小板減少、腎機能障害といった深刻な症状が現れます。特に、抵抗力の弱い乳幼児や高齢者は重症化しやすく、最悪の場合、命を落としてしまうこともあります。HUSは決して他人事ではありません。私たちの身近なところに潜む危険な食中毒であることをしっかりと認識し、予防対策を徹底することが重要です。
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プリオン病とは?

- プリオンとはプリオンは、他の生物の遺伝物質に頼ることなく、自ら増殖し、病気を引き起こすことができる、特殊なタンパク質です。 通常、私たちは、はしかやおたふく風邪などの感染症は、ウイルスや細菌によって引き起こされると認識しています。 しかし、プリオンはこれらの病原体とは全く異なり、増殖に欠かせないDNAやRNAといった遺伝物質を持っていません。それにもかかわらず、プリオンはタンパク質だけで構成されながらも、他のタンパク質に影響を与え、自身と同じ構造へと変化させることで増殖していくという、驚くべき性質を持っています。プリオンは、私たちの体内に存在する正常なタンパク質が、ある特定の条件下で異常な立体構造に変化することで生じます。 この異常な構造を持つプリオンは、正常なタンパク質と接触すると、まるで型を取るかのように、自身の構造を複製し、異常なタンパク質へと変化させてしまいます。 この連鎖的な反応が続くことで、体内に異常なタンパク質が蓄積し、最終的には脳に損傷を与えるなどして、深刻な病気を引き起こすと考えられています。
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過去の病気? 知っておきたいペストの脅威

- ペストとはペストは、ペスト菌という細菌によって引き起こされる感染症です。 かつては「黒死病」として世界中で猛威を振るい、多くの人々の命を奪いました。感染すると、高熱や頭痛、嘔吐などの症状が現れ、皮膚が黒く変色することもあります。 中世ヨーロッパで流行した際には、人口の3分の1から3分の2が命を落としたとされており、人類の歴史に大きな傷跡を残しました。ペストは、ネズミなどの野生動物に寄生するノミを介して人に感染します。 感染したノミに刺されることで、ペスト菌が体内に入り込み、病気を発症します。 また、感染した動物の体液や、ペスト肺炎患者の咳やくしゃみによって空気感染することもあります。 かつては治療法がなく、多くの人が命を落としましたが、現代では抗生物質などの有効な治療法が確立されました。早期に治療を開始することで、治癒できる病気となっています。 ペストの予防には、ノミに刺されないようにすることが重要です。 野外活動では、長袖長ズボンを着用し、虫除けスプレーを使用するなど、肌の露出を控えるようにしましょう。 また、ペストの発生が確認されている地域への渡航は控え、やむを得ず渡航する場合は、現地の衛生当局の指示に従ってください。ペストは過去の病気ではありません。現在も世界各地で発生が報告されており、特にアフリカやアジアの一部の地域では流行が見られます。 ペストについて正しく理解し、予防と早期治療を心がけることが大切です。
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輸液療法とリフィリング現象:知っておきたいリスク

私たちの身体は、外部からの様々な影響に常にさらされています。例えば、転んで怪我をしてしまったり、高温の物に触れて火傷を負ったり、有害な物質を誤って口にしてしまったり、ウイルスや細菌に感染してしまうこともあるでしょう。こうした外部からの影響によって身体が傷つけられることを、「侵襲」と呼びます。侵襲は、その種類や程度によって身体に様々な反応を引き起こします。私たちの身体の約60%は水分でできており、その大部分は血液として血管の中を流れています。血液は、酸素や栄養を全身に届けたり、老廃物を回収したりと、生命維持に欠かせない役割を担っています。ところが、侵襲を受けると、この体内の水分バランスが崩れてしまうことがあります。例えば、火傷を負うと、損傷した皮膚から水分が蒸発してしまいますし、怪我をすると、出血によって血液中の水分が失われてしまうことがあります。また、侵襲に対する身体の防御反応として、血管の外に水分が漏れ出てしまうこともあります。通常、血管は体内の水分を適切に保つために、壁の透過性を調整していますが、侵襲を受けると、その調整機能が乱れて血管から水分が漏れ出てしまうのです。水分が血管の外に漏れ出すと、血管内の血液量が減り、血圧が低下してしまいます。また、漏れ出した水分が組織の間に溜まると、細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなり、臓器の機能が低下してしまう可能性もあります。このように、侵襲によって体内の水分バランスが乱れると、様々な問題を引き起こす可能性があります。そのため、侵襲を受けた際には、速やかに医療機関を受診し、適切な処置を受けることが重要です。
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パンデミックに備えるために

- パンデミックとは世界中で多くの人が感染症にかかってしまうことをパンデミックといいます。普段、私たちは冬になると流行するインフルエンザを経験しますが、パンデミックはこれとは全く異なるものです。インフルエンザなど、ある特定の地域や国の中だけで流行している状態をエピデミックといいますが、国境を越えて世界中に感染が拡大し、多くの人が病気にかかってしまう状態をパンデミックと呼びます。パンデミックは、私たちの生活や社会全体に大きな影響を及ぼします。例えば、学校が休校になったり、仕事に行けなくなったり、お店が閉まったりすることがあります。また、多くの人が病院に行くため、医療現場では十分な治療を受けられない可能性も出てきます。パンデミックを引き起こす原因は様々ですが、多くはウイルスによる感染症です。ウイルスは、人から人へ、あるいは動物から人へと感染が広がっていきます。このような感染症の拡大を防ぐためには、私たち一人ひとりの行動が重要になります。こまめな手洗いやうがい、咳エチケットなどを心がけ、感染予防に努めましょう。また、ワクチン接種も有効な予防策の一つです。
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静かな脅威:破傷風について

- 身近に潜む破傷風菌破傷風は、破傷風菌という細菌が原因で起こる感染症です。この細菌は、土の中など、私たちの身の回りのどこにでもいる、ごくありふれたものです。普段は土の中で静かに過ごしており、私たちに危害を加えることはありません。しかし、傷口から私たちの体の中に入ると、毒素と呼ばれる体に悪い物質を作り出し、深刻な症状を引き起こすことがあります。破傷風菌は、特に土の中に多く存在しています。そのため、土いじりやガーデニングなどをしていると、知らず知らずのうちに傷口から菌が侵入している可能性があります。また、錆びた釘や刃物で怪我をした場合にも注意が必要です。これらのものには、破傷風菌が付着していることが多いためです。破傷風は、早急に適切な治療を行えば、治癒する病気です。しかし、治療が遅れると、全身の筋肉が硬直したり、けいれんを起こしたりするなど、深刻な症状に悩まされることになります。最悪の場合、命を落とす危険性もゼロではありません。破傷風を予防するためには、日頃から怪我をしないように注意することが大切です。また、万が一、傷を負った場合には、すぐに傷口を洗い流し、消毒するなど適切な処置を行いましょう。そして、破傷風に対する免疫をつけるために、定期的なワクチンの接種も有効な手段となります。
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蚊にご用心!デング熱から身を守る方法

- デング熱とはデング熱は、蚊が媒介するウイルスによって引き起こされる感染症です。感染すると、高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など、まるで重い風邪に似た症状が現れます。多くの人はこれらの症状が1週間程度続き、その後自然に回復します。しかし、油断は禁物です。場合によっては、さらに重い症状を引き起こすことがあります。具体的には、皮膚に出血斑が現れたり、鼻血や歯茎からの出血が見られることがあります。さらに深刻なケースでは、出血性ショックを引き起こし、命に関わることもあります。特に、小さなお子さんや高齢の方、普段から病気を抱えている方は、重症化するリスクが高いと言えるでしょう。デング熱に対する特別な治療法はありません。そのため、症状が現れた場合は、安静にして水分を十分に摂り、医師の指示に従って下さい。そして、何よりも重要なことは、デング熱にかからないように予防することです。デングウイルスを媒介する蚊は、主に昼間に活動し、家の中やその周辺に生息しています。そのため、蚊に刺されないように、虫除けスプレーを使用したり、長袖長ズボンを着用するなどの対策が必要です。また、蚊の発生源となる水たまりをなくすことも大切です。
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気づかぬ脅威:不顕性感染と感染拡大

私たちは普段、風邪をひいたり、インフルエンザにかかったりすると、熱が出たり、咳が出たりといった症状に悩まされます。しかし、世の中には、体の中に病気の原因となるものが入り込んでいるにもかかわらず、まるで健康な時と同じように過ごせる場合があります。このような状態を「不顕性感染」と呼びます。一見すると、全く病気にかかっていないように見えるため、自分が感染していることに気づくことなく、普段通りの生活を送ることになります。例えば、ある人が不顕性感染によって風邪のウイルスを持っているとします。この人は、自分が風邪のウイルスを持っていることに全く気づいていません。そして、咳やくしゃみを手で押さえなかったり、周りの人と近づきすぎたりしてしまうかもしれません。このように、不顕性感染は、感染した本人が気づかないうちに、周りの人に病気を広げてしまう可能性があるという点で、注意が必要です。特に、高齢者や病気で免疫力が低下している人にとっては、不顕性感染であっても、重症化するリスクがあります。私たちは、自分自身が感染源にならないように、普段から予防を心がけることが重要です。具体的には、こまめな手洗いやうがい、マスクの着用、適切な換気など、基本的な感染対策を徹底することが大切です。
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致死率の高い感染症:ニパウイルスとは?

1998年から1999年にかけて、マレーシアでそれまで誰も知らない病気が突如発生しました。高い熱が出て、脳が炎症を起こしたような症状が出るこの病気は、原因も分からず、多くの人が亡くなり、人々に恐怖が広がりました。後に、この病気の原因はニパウイルスというウイルスであることが分かりました。ニパウイルスは、日本で流行した脳炎を起こすウイルスと近い種類のウイルスで、豚を介して人に感染することが明らかになりました。ニパウイルスに感染した豚は、特に症状が出ないことが多いですが、人に感染すると、発熱、頭痛、筋肉痛、嘔吐などの症状が出ます。さらに、意識障害やけいれんを起こし、最悪の場合、死に至ることもあります。ニパウイルスに対する有効な治療法はまだ確立されておらず、感染を予防することが最も重要です。豚との接触を避け、豚肉は十分に加熱してから食べるなど、日頃から予防対策を心がけましょう。
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命を守る!敗血症性ショックの早期発見と対応

- 静かなる脅威敗血症性ショックとは敗血症性ショックは、細菌などの微生物が血液中に入り込み、全身に炎症を引き起こす敗血症の中でも、特に重症化した状態です。体内に侵入した細菌やウイルスなどの微生物と戦うために、私たちの体は様々な防御反応を起こします。しかし、この反応が過剰に起こってしまうと、炎症を引き起こす物質が血液中に大量に放出されてしまいます。これらの物質は、血管を拡げてしまうため、血圧の低下を引き起こします。点滴などによって水分を補給しても、血管が拡がった状態が続くため、血圧は上がりにくくなります。敗血症性ショックでは、心臓や肺、腎臓などの重要な臓器に十分な血液が行き渡らなくなります。その結果、臓器の機能が低下し、最悪の場合、死に至ることもあります。敗血症性ショックは、初期段階では、脈が速くなる、呼吸が速くなる、熱が出る、または体温が低下する、尿の量が減るなどの症状が現れます。さらに症状が進むと、意識がもうろうとしたり、血圧が急激に低下したりします。敗血症性ショックは、早期に発見し、適切な治療を行えば、救命できる可能性があります。少しでも異常を感じたら、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
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命を守る!知っておきたい敗血症の基礎知識

- 静かなる脅威敗血症とは敗血症は、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体に対する過剰な免疫反応によって、全身に炎症が広がる深刻な病気です。肺炎や尿路感染症などの感染症が引き金となって発症することが多く、決して珍しい病気ではありません。風邪や軽い怪我など、普段の生活で誰もが経験するようなありふれた状況がきっかけで発症する可能性もあるため、決して他人事ではありません。敗血症の初期症状は、発熱や悪寒、だるさ、息切れ、心拍数の増加など、他の病気と非常に似ており、見分けることが難しいケースも多いです。そのため、風邪かな、疲れかなと軽く考えてしまいがちですが、適切な治療をせずに放置すると、臓器不全やショック状態に陥り、命に関わる危険性があります。敗血症を予防するためには、日頃から手洗いとうがいを徹底し、感染症にかからないように注意することが大切です。また、糖尿病やがんなどの基礎疾患がある場合は、免疫力が低下しやすいため、より一層注意が必要です。少しでも敗血症の可能性が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けるようにしてください。早期発見と迅速な治療が、敗血症の克服には非常に重要となります。
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見えない脅威:生物兵器とは?

- 生物兵器の定義生物兵器とは、目に見えないほど小さな生き物である病原体や、それらが作り出す毒物を兵器として利用したものです。 病原体には、細菌、ウイルス、リケッチアなどが含まれます。これらの微生物は、人の体内に侵入すると、増殖し、様々な症状を引き起こします。例えば、細菌は、食中毒のように激しい下痢や嘔吐を引き起こすものや、肺炎のように呼吸器に深刻な影響を与えるものなどがあります。ウイルスは、風邪のように比較的軽い症状のものから、インフルエンザのように高熱や倦怠感を伴うもの、エボラ出血熱のように致死率の高いものまで、様々な種類が存在します。リケッチアは、発疹や発熱などを引き起こす感染症の原因となります。これらの病原体や毒物を兵器として利用することは、戦争やテロ行為において、人々を無差別に攻撃し、社会に混乱と恐怖をもたらす可能性があります。生物兵器は、一度拡散してしまうと、その影響範囲を特定し、封じ込めることが非常に困難です。また、治療法が確立されていない病原体も存在するため、多くの人々の命を奪う危険性も孕んでいます。生物兵器の使用は国際的に禁止されていますが、その脅威は依然として存在します。そのため、私たちは生物兵器に関する知識を深め、その危険性について常に意識しておく必要があります。
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国を守る!検疫の重要性

- 検疫とは検疫とは、海外から国内へ病気(伝染病)が持ち込まれることを防ぐための大切な取り組みです。世界には、国や地域によって様々な病気が存在し、私たちにとって馴染みの薄い病気も数多くあります。もしもこれらの病気が国内に侵入し、人から人へと広がってしまうと、人々の健康が脅かされるだけでなく、社会や経済にも大きな影響を与える可能性があります。このような事態を防ぐために行われているのが検疫です。具体的には、空港や港など、国境となる場所で、入国する人や動物、輸入される荷物などを対象に、検査や消毒などの措置が行われます。検疫では、発熱や咳などの症状がある人に対して、詳しい問診や検査を行い、感染症の疑いがある場合は、医療機関へ搬送したり、一定期間、施設や自宅で待機してもらうなどの対応が取られます。また、輸入される植物や動物についても、病気の発生状況に応じて、検査や消毒、一定期間の隔離などの措置がとられます。検疫は、私たち一人ひとりの健康と安全を守るだけでなく、国の経済や社会活動を守るためにも非常に重要な役割を担っています。海外からの病気の侵入を防ぐためには、検疫制度への理解と協力が不可欠です。
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侵襲後の体の反応:CARSって何?

私たちは日常生活の中で、小さなすり傷や切り傷、時には大きな病気や怪我など、様々な原因で身体に傷を負うことがあります。このような外部からの侵襲に対して、私たちの体は傷を治し、元の状態に戻そうと一生懸命働きます。この時、体内で起こる反応の一つに「炎症反応」があります。炎症反応は、傷ついた組織を修復し、細菌などの病原体から体を守るために非常に重要な役割を担っています。 例えば、指を切ってしまった場合、傷口は赤く腫れ、熱を持ち、痛みを感じます。これは、体内で炎症反応が起きているサインです。炎症反応が起こると、血管が広がり、血液の流れが活発になります。そして、血液中から白血球などの免疫細胞が患部に集まり、細菌や損傷した細胞を攻撃し、排除しようとします。しかし、炎症反応は、時に過剰に起こってしまうことがあります。例えば、花粉症は、花粉に対して免疫システムが過剰に反応し、くしゃみや鼻水などの症状を引き起こすアレルギー反応の一種です。また、関節リウマチなどの自己免疫疾患では、免疫システムが自分自身の細胞を攻撃してしまい、慢性的な炎症を引き起こします。炎症反応は、私たちの体を守るために必要な反応ですが、過剰に反応すると体に悪影響を及ぼす可能性もあります。日頃からバランスの取れた食事や十分な睡眠を心がけ、免疫力を高めておくことが大切です。
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免疫の暴走?サイトカインストームとは

私たち人間の体には、体に害をなす細菌やウイルスなどの病原体から身を守る、「免疫」という優れた仕組みが備わっています。この免疫システムは、体内に入り込んだ病原体を攻撃し、体外へ排出することで私たちの健康を守っているのです。免疫システムにおいて中心的な役割を担うのが、免疫細胞です。体内をパトロールし、病原体を見つけ出すと、攻撃を仕掛けます。さらに、一度侵入した病原体を記憶し、次に侵入した際に素早く対応できるように備えています。この免疫細胞たちが互いに情報をやり取りするために使っているのが、「サイトカイン」と呼ばれるタンパク質です。サイトカインは、免疫細胞から分泌され、細胞間を飛び交うメッセンジャーのように、他の細胞に指令を出します。「攻撃を開始せよ」「増殖せよ」「炎症を起こせ」といった具合に、状況に応じて様々なメッセージを伝達することで、免疫反応の調整役を担っているのです。このように、サイトカインは、私たちの体が病気から身を守る免疫システムにおいて、非常に重要な役割を担っています。サイトカインの働きが乱れると、免疫システムが正常に機能せず、様々な病気につながることがあります。
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身近に潜む危険!中毒性ショック症候群とは?

- 中毒性ショック症候群の概要中毒性ショック症候群は、体に有害な物質を作る細菌が引き起こす、命に関わる危険性もある深刻な病気です。主に黄色ブドウ球菌やA群溶血連鎖球菌といった細菌が原因となります。これらの細菌は、健康な人の皮膚や鼻の中などにもともと存在している場合があり、普段は悪さをしません。しかし、傷口や粘膜などから体内に侵入し、増殖すると毒素を作り出すようになります。この毒素が血液中に入ると、全身に運ばれて様々な臓器に悪影響を及ぼします。中毒性ショック症候群になると、高い熱が出る、血圧が急激に下がる、体に赤い斑点が出るといった症状が現れます。また、吐き気や嘔吐、下痢、筋肉痛、意識障害など、風邪や食中毒に似た症状が現れることもあります。さらに、症状が進むと腎臓や肝臓などの臓器が正常に機能しなくなり、命に関わる危険性も高まります。特に1980年代には、生理中の女性がタンポンを使用していたことが原因で、中毒性ショック症候群が多発した事例が広く知られています。タンポンの長時間使用は、細菌が増殖しやすい環境を作り出すため、注意が必要です。しかし、タンポンを使用していなくても、傷口や手術後、火傷後などに発症するケースもあります。中毒性ショック症候群は、早期に発見し、適切な治療を行えば回復の可能性が高い病気です。少しでも疑わしい症状がある場合は、すぐに医療機関を受診することが重要です。
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選択的消化管除菌:病院感染症予防の新たな展望

病院で治療を受けることは、時に感染症のリスクを伴うことがあります。免疫力が低下している患者さんにとって、院内感染は深刻な合併症を引き起こし、回復を遅らせる可能性があります。病院には、病気の治療を必要とする多くの人が集まります。その中には、免疫力が低下している方や、抵抗力が弱い方も少なくありません。このような方々は、健康な人であれば感染しないような、弱い細菌やウイルスにも感染しやすくなっています。これが、病院感染症が大きな問題となる理由です。特に、集中治療室(ICU)などの医療現場では、様々な細菌や真菌に曝露されるリスクが高まります。ICUは、重症患者さんの治療を行う場所であるため、多くの医療機器や薬剤が使用されます。これらの機器や薬剤は、患者さんの命を救うために必要不可欠なものではありますが、同時に、細菌やウイルスが付着しやすく、感染源となる可能性も孕んでいます。病院側も、院内感染を防ぐために、様々な対策を講じています。例えば、手洗いや消毒の徹底、マスクの着用、空気清浄などです。また、患者さんごとに使用する医療機器を滅菌したり、使い捨てのものを導入するなど、様々な工夫が凝らされています。私たちも、病院で治療を受ける際には、これらのことに注意し、自分自身を守ることが大切です。
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蚊が媒介する脅威!ウエストナイル熱とは?

- ウエストナイル熱の概要ウエストナイル熱は、蚊を介して感染する病気です。主に鳥の間で流行しますが、蚊が人や馬を刺すことで感染が広がることがあります。感染すると、高熱が出たり、頭が痛くなったりするなど、風邪に似た症状が現れます。多くの場合、これらの症状は数日で治まります。しかし、高齢者の方や免疫力が低下している方などは、脳炎や髄膜炎といった重い神経系の病気を発症する危険性があり、注意が必要です。ウエストナイル熱は、感染した蚊に刺されることで感染します。蚊は、感染した鳥の血を吸うことでウイルスを獲得し、その後、別の人や動物を刺す際にウイルスを媒介します。そのため、ウエストナイル熱の予防には、蚊に刺されないようにすることが重要です。蚊は、水たまりや排水溝など、水が溜まっている場所に卵を産み付けて繁殖します。そのため、自宅周辺の水たまりをなくしたり、排水溝を定期的に掃除したりするなど、蚊の発生源を減らすように心がけましょう。また、外出する際は、長袖、長ズボンを着用し、肌の露出を少なくする、虫除けスプレーを使用するなど、蚊に刺されないように対策を取りましょう。ウエストナイル熱は、ワクチンや特効薬がないため、予防が何よりも重要です。蚊に刺されないように注意し、健康な状態を保つように心がけましょう。
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エボラ出血熱について

- エボラ出血熱とはエボラ出血熱は、エボラウイルスという病原体によって引き起こされる、重症化しやすい感染症です。このウイルスは、糸のように細長い形をしたフィロウイルスという種類に分類され、感染力が非常に強いことが知られています。日本の法律である感染症法では、最も危険な感染症の一つとして、一類感染症に指定されています。エボラウイルスに感染すると、高熱、激しい頭痛、筋肉痛、強い倦怠感といった症状が現れます。さらに病状が進むと、吐き気や嘔吐、下痢、皮膚からの出血などが起こり、最悪の場合、複数の臓器が機能不全に陥り、死に至ることもあります。エボラ出血熱が初めて確認されたのは、1976年のことです。アフリカのスーダンとコンゴ民主共和国で、ほぼ同時期に発生しました。その後も、アフリカ諸国を中心に、断続的に流行が報告されています。日本国内では、現在のところエボラ出血熱の発生は確認されていません。しかし、海外への渡航者や輸入感染症として、国内に侵入する可能性は否定できません。そのため、エボラ出血熱に関する正しい知識を持ち、予防対策を講じておくことが重要です。
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警戒すべき感染症:重症急性呼吸器症候群(SARS)

- 重症急性呼吸器症候群とは重症急性呼吸器症候群(SARS)は、2002年から2003年にかけて世界中で流行した、新しいタイプの呼吸器感染症です。原因は、SARSコロナウイルスという、当時まで人に感染することが知られていなかった新しいコロナウイルスでした。SARSは、感染した人の咳やくしゃみなどによって空気中に飛び散ったウイルスを吸い込むことで感染します。主な症状としては、発熱、咳、息切れなどが挙げられます。多くの場合、これらの症状は風邪に似ていますが、重症化すると、肺炎を引き起こし、呼吸困難に陥ることもあります。SARSは、高い死亡率を示したことから、世界中に大きな衝撃を与え、新興感染症として世界的に注目を集めました。しかし、世界中の国々が協力して感染拡大防止対策に取り組んだ結果、2003年以降、新たな感染者は確認されていません。現在、SARSは終息したと考えられていますが、今後も、未知のウイルスによる新しい感染症が発生する可能性は否定できません。私たちは、日頃から手洗いやうがいを徹底するなど、感染症予防に努めるとともに、正確な情報に基づいて冷静に行動することが重要です。
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緊急事態!心嚢気腫とは?

- 心臓を圧迫する危険な状態、心嚢気腫とは?心臓は、私たちの体全体に血液を送るために休むことなく動き続けている重要な臓器です。この大切な心臓は、「心嚢」と呼ばれる薄い袋状の組織に包まれています。通常、この心嚢の中には少量の液体があり、心臓がスムーズに動くための潤滑油の役割を果たしています。しかし、何らかの原因でこの心嚢の中に空気が入り込んでしまうことがあります。これが「心嚢気腫」と呼ばれる状態です。心嚢気腫になると、心臓を取り巻く空間の圧力が異常に高まります。この圧力は、まるで心臓を風船のように外側から締め付けるように作用し、心臓の動きを阻害してしまいます。その結果、心臓は十分な量の血液を送り出すことができなくなり、息切れや胸の痛み、意識障害などの深刻な症状が現れることがあります。心嚢気腫を引き起こす原因は様々です。例えば、肺に穴が開いてしまう気胸や、胸部に強い衝撃を受ける外傷、心臓自身に穴が開いてしまう心破裂などが挙げられます。また、細菌やウイルスによる感染症が原因となる場合もあります。心嚢気腫は命に関わる危険性もあるため、早期発見と適切な治療が非常に重要です。もしも、息苦しさや胸の痛み、脈の乱れなど、普段と異なる症状を感じたら、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。早期発見と適切な治療によって、心臓への負担を軽減し、健康な状態を取り戻せる可能性が高まります。
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コレラ:過去の病気?いいえ、今も脅威です

- コレラとはコレラ菌という微生物が原因で発症する、大変危険な感染症です。この病気にかかると、激しい下痢と嘔吐に見舞われます。その結果、体の中の水分と塩分が失われてしまい、脱水症状を引き起こします。特徴的な症状として、お米のとぎ汁のように白く濁った水のような便が出ることが挙げられます。コレラは、汚染された水や食べ物を介して感染します。衛生状態の悪い地域や、安全な水が手に入りにくい地域で流行しやすく、一度流行すると、人から人へと急速に感染が広がることがあります。症状が悪化すると、筋肉の痙攣や意識障害が現れ、命に関わる危険性も高まります。特に、乳幼児や高齢者、体力がない人は重症化しやすいため、注意が必要です。コレラを予防するには、トイレの後や食事の前には必ず石鹸で手を洗い、清潔を保つことが重要です。また、飲料水は必ず煮沸するか、安全な飲料水を飲むようにしましょう。感染が疑われる場合は、すぐに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
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医療現場を守る!標準感染予防策の基本

病院や診療所などの医療機関は、様々な病気を抱えた患者さんが多く集まる場所です。そのため、健康な人が日常生活を送るよりも、感染症にかかる危険性が高い場所といえます。このような医療現場では、患者さんだけでなく、医師や看護師など医療従事者自身も感染から守るために、徹底した感染予防対策を行う必要があります。医療現場で広く推奨されている感染予防対策に、「標準感染予防策」というものがあります。これは、アメリカの医療現場で生まれた考え方で、患者さんの持つ感染症の種類や感染経路が分からなくても、すべての患者さんとの接触において、血液、体液、分泌物、粘膜、傷のある皮膚などを介して感染する可能性があるものとして対策を行うというものです。具体的な対策としては、手洗い、マスクや手袋の着用、患者さんごとに使い捨ての医療器具を使用する、使用した医療器具は適切に消毒する、などが挙げられます。これらの対策を徹底することで、医療現場における感染症の拡大を効果的に防ぐことができます。標準感染予防策は、医療従事者だけでなく、病院を訪れる家族や面会者も理解し、協力することが重要です。病院側の指示に従い、適切な感染予防対策を行うように心がけましょう。
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感染症から身を守るために

- 感染症とは私たちの身の回りには、肉眼では確認できないほど小さな生き物が無数に存在しています。これらは微生物と呼ばれ、普段は私たちの生活に影響を与えないものから、発酵食品などに利用され役立っているものまで、様々な種類が存在します。しかし、その中には私たちの体の中に入り込み、そこで数を増やすことで、健康を害するものもいます。このような、体に悪影響を及ぼす微生物には、ウイルスや細菌、カビなどの仲間である菌類、そして他の生き物の体内に住み着いて栄養を奪う寄生虫などが含まれます。これらの微生物が、空気や水、食べ物など様々な経路を通して私たちの体内に侵入し、増殖することを「感染」と呼びます。そして、この感染が原因で発熱や咳、下痢、湿疹など、体に何らかの症状が現れた状態を「感染症」と呼びます。感染症は、原因となる微生物の種類や感染した人の体力、免疫力などによって、軽い症状ですむものから、入院が必要となる重い症状を引き起こすものまで、その程度は様々です。また、感染症の中には、人から人へとうつるものもあり、周囲の人々へ感染を広げないための対策も重要となります。