応急処置

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緊急事態!縦隔偏位とその影響

私たちの胸の中央には、肋骨、胸骨、そして背骨の一部である胸椎によって守られた空間である胸郭が存在します。この胸郭の中には、生命維持に欠かせない心臓や肺などの重要な臓器が収められています。心臓と肺に挟まれた、胸郭の中央部分を縦隔と呼びます。縦隔には、心臓と肺以外にも、大動脈や肺動脈といった太い血管、気管や気管支といった空気の通り道、食道、リンパ節など、多くの重要な器官が存在しています。通常、左右の肺はほぼ同じ大きさで、縦隔を挟んで左右対称に位置しています。このバランスによって、縦隔は胸郭の中央に安定して存在することができます。しかし、肺や胸膜(肺を包む膜)に病気があると、このバランスが崩れ、縦隔が本来の位置からずれてしまうことがあります。この状態を縦隔偏位と呼びます。縦隔偏位を引き起こす病気には、気胸(肺に穴が開いて空気が漏れる病気)、胸水(胸の中に水が溜まる病気)、肺炎、肺がん、 pneumothorax などがあります。縦隔が大きく偏位すると、心臓や大血管、気管などが圧迫され、呼吸困難や血圧低下などの症状が現れることがあります。縦隔偏位は、胸部レントゲン写真やCT検査で確認することができます。
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脊髄損傷:その原因と対策

- 脊髄損傷とは私たちの体の中心を走る背骨、その中にある神経の束である脊髄は、脳からの指令を全身に伝え、また、全身からの感覚を脳に伝えるという重要な役割を担っています。この脊髄が、外部からの強い衝撃によって傷つくことで、様々な機能に障害が生じる病気を脊髄損傷と呼びます。脊髄損傷を引き起こす原因として最も多いのは交通事故です。自動車やバイクの衝突事故など、体に強い衝撃が加わることで脊髄が損傷を受けます。また、高所からの転落や落下物による事故、スポーツ中の事故なども脊髄損傷の原因となりえます。 脊髄が損傷すると、その程度や部位によって、手足の麻痺、感覚の麻痺、排泄障害、体温調節機能の障害など、様々な症状が現れます。 重度の場合は、生涯にわたっての後遺症が残る可能性もあり、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。脊髄損傷は、決して他人事ではありません。交通事故や転倒など、日常生活における危険を認識し、予防に努めることが大切です。また、スポーツを行う際には、事前に準備運動をしっかり行い、安全な環境で行うように心がけましょう。
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運動中の思わぬ危険!コンパートメント症候群とは?

私たちの体は、無数の筋肉によって支えられています。特に腕や脚には多くの筋肉が集まっており、複雑な動きを可能にしています。これらの筋肉は、ただ闇雲に配置されているわけではありません。それぞれの筋肉のグループは、骨や筋膜といった組織によって包み込まれ、まるで部屋のように区切られています。この筋肉を包む部屋のような区画のことを「コンパートメント」と呼びます。コンパートメントは、筋肉を保護する役割を担っています。外部からの衝撃を吸収し、筋肉へのダメージを軽減するクッションのような役割を果たします。また、筋肉が働く際に、その力を効率的に伝える役割も担っています。それぞれのコンパートメントの中には、筋肉以外にも、血管や神経が通っています。血管は筋肉に栄養や酸素を供給し、神経は脳からの指令を筋肉に伝達することで、スムーズな動きを可能にしています。このように、コンパートメントは、私たちの体が正常に機能するために重要な役割を担っています。
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酸素飽和度:健康状態を測る指標

- 酸素飽和度とは私たちの身体は、呼吸によって空気中から酸素を取り込み、血液によって全身に届けます。この時、酸素を運ぶ役割を担っているのが、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質です。 酸素飽和度とは、このヘモグロビンがどれだけ酸素と結びついているかを表す数値で、パーセントで表されます。例えば、酸素飽和度が98%であれば、ヘモグロビンの98%が酸素と結びついていることを示しています。 健康な人の場合、酸素飽和度は96%以上あるのが一般的です。しかし、呼吸器疾患や心臓疾患など、様々な原因で体内に取り込める酸素の量が減ってしまうと、酸素飽和度は低下してしまいます。 酸素飽和度が低下すると、息切れや動悸、倦怠感などの症状が現れます。さらに重症化すると、意識障害や心停止に至る可能性もあるため、注意が必要です。 近年では、指先に挟むだけで簡単に酸素飽和度を測定できるパルスオキシメーターが普及しています。健康管理や病気の早期発見のために、活用してみてはいかがでしょうか。
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いざという時の酸素療法:基礎知識と方法

- 酸素療法とは酸素療法とは、呼吸がうまくできない状態にある人に対して、普段私たちが吸っている空気よりも多くの酸素を含んだ空気を送り届ける治療法です。私たちの体をつくる細胞は、生きていくために酸素を必要としています。呼吸をすることで肺から酸素を取り込み、血液によって全身に届けられることで、細胞は活動するためのエネルギーを作り出すことができます。しかし、肺の病気や心臓病などが原因で、十分な酸素を体に取り込むことができなくなることがあります。このような状態になると、息苦しさを感じたり、意識がぼんやりしたりするなど、様々な症状が現れます。酸素療法は、体に取り込まれる酸素の量を増やすことで、血液中の酸素濃度を高め、細胞や組織に十分な酸素を届けることを目的としています。酸素を鼻からチューブで送り込む方法や、マスクを使って口と鼻を覆うようにして酸素を送り込む方法など、症状や状態に合わせて様々な方法があります。酸素療法は、肺の病気、心臓病、一酸化炭素中毒など、様々な病気の治療に用いられています。また、手術後や怪我の治療などにも用いられることがあります。酸素療法によって、呼吸が楽になり、症状が改善されるだけでなく、命に関わる危険な状態を防ぐことができる場合もあります。
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命を守る緊急処置:焼痂切開の重要性

私たちの体を外部の刺激から守ってくれる皮膚は、熱によって様々な程度の損傷を受けます。その中でも、特に高温な物体に触れたり、炎に巻き込まれたりすることで生じる重度の熱傷は、皮膚に深刻な変化をもたらします。Ⅲ度熱傷や深達性Ⅱ度熱傷では、皮膚のすべての層が破壊され、まるで熱い湯で固まった卵の白身のように、白や茶褐色に変色し硬くなります。 この状態は『焼痂』と呼ばれ、皮膚本来の柔軟性や弾力性を完全に失っているため、体の動きを大きく制限してしまうことがあります。例えば、胸やお腹など体幹と呼ばれる部分に広範囲に焼痂が及ぶと、呼吸をする際に胸郭が膨らんだり縮んだりする動きが阻害され、十分な呼吸ができなくなることがあります。 呼吸は生命維持に不可欠な機能であるため、このような場合は直ちに医療機関での治療が必要となります。また、腕や足に広範囲にわたる焼痂が生じた場合、血液の流れが悪くなり、指先が青白くなるチアノーゼや、感覚が鈍くなる、痺れが出るといった症状が現れることがあります。 さらに、重症化すると筋肉が壊死し、手足を切断せざるを得ないケースも少なくありません。このように、熱傷は皮膚の損傷だけでなく、体の機能や生命にも重大な影響を及ぼす可能性があることを理解しておく必要があります。
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救命時に役立つ知識:昏睡体位とは?

- 意識がない!そんな時に大切なこと事故や病気で突然意識を失って倒れている人を目の前にしたら、まずは落ち着いて行動することが大切です。呼吸ができているか、怪我をしているかなど、落ち着いて状況を確認しましょう。しかし、意識がない状態では、吐き気をもよおしたり、舌が喉に詰まったりしてしまい、呼吸が苦しくなる危険性があります。呼吸を確保し、窒息を防ぐためには、適切な体位を保たせることが重要です。意識がない人を安全な場所に移動させたら、頭を後ろに傾け、あごを持ち上げるようにして気道を確保します。この体位は『昏睡体位』と呼ばれ、舌根沈下による気道閉塞を防ぎ、呼吸を楽にする効果があります。昏睡体位は、意識がない人を横向きに寝かせ、下になった方の腕を上に伸ばし、上になった方の腕は胸の前で曲げて、その上に頭を乗せるようにします。そして、上になった方の足を軽く曲げておくと、体が安定しやすくなります。昏睡体位を保つことで、嘔吐物や唾液などが気管に入ってしまうことを防ぎ、窒息のリスクを減らすことができます。ただし、昏睡体位はあくまで応急処置です。意識がない状態を発見したら、すぐに救急車を呼ぶようにしましょう。
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命を守る!喉頭痙攣の対処法

- 喉頭痙攣とは喉頭痙攣とは、呼吸の際に空気が通る重要な器官である喉頭の周辺にある筋肉が、意図せず収縮してしまうことを指します。この筋肉の痙攣によって、空気の通り道が狭くなったり、完全に塞がったりしてしまうため、呼吸が困難になります。喉頭痙攣が起こると、まるで喉の奥に蓋をされたかのように感じ、息を吸うことが難しくなります。激しい苦しさを感じ、息をしようとすると「ヒューヒュー」といった音がする場合もあります。痙攣の程度や時間によって異なりますが、短時間であれば自然と治まることが多いです。しかし、症状が長く続くと、酸素不足に陥り、意識を失ったり、最悪の場合、命に関わる危険性も孕んでいます。喉頭痙攣の原因は様々ですが、アレルギー反応、タバコの煙や刺激物の吸入、胃食道逆流症などが挙げられます。また、精神的なストレスや緊張がきっかけとなることもあります。喉頭痙攣は、決して珍しい症状ではありません。日頃から予防を心がけ、もし発症した場合は適切な対応をとることが大切です。
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妊婦さんの仰臥位は要注意!

- 仰臥位低血圧症候群とは?妊娠後期、特に臨月を迎えた妊婦さんや、お腹に大きな腫瘍がある方に見られる、仰向けに寝ると血圧が一時的に低下してしまう症状があります。医学的には『仰臥位低血圧症候群』と呼ばれ、英語の頭文字をとって『SHS』と略されることもあります。なぜこのような症状が起こるのでしょうか?その原因は、大きくなった子宮や腫瘍が、身体の奥にある太い血管である下大静脈を圧迫してしまうことにあります。この下大静脈は、身体の下半身から心臓へ血液を戻す重要な役割を担っています。しかし、妊娠後期や大きな腫瘍がある状態では、子宮や腫瘍の重みでこの血管が圧迫されてしまい、スムーズに血液が流れなくなってしまいます。その結果、心臓に戻る血液の量が減少し、心臓から全身に送り出される血液の量も同時に減少してしまいます。すると、全身に十分な血液が循環しなくなり、めまいやふらつき、吐き気、冷や汗、意識消失といった症状が現れることがあります。これが、仰臥位低血圧症候群です。
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災害時の駆け込み寺!応急救護所の役割とは?

いつ襲ってくるか分からない地震や台風などの自然災害。発生すると、私たちの生活に大きな影響を与え、家屋が倒壊したり、道路が寸断したり、甚大な被害をもたらすことがあります。このような状況下では、怪我をしてしまう危険性も高まります。安心して暮らしていくためには、日頃から防災に対する意識を高め、いざという時のために備えておくことが何よりも重要です。具体的には、飲料水や食料、懐中電灯、携帯ラジオなどの防災用品を準備しておくことが大切です。これらの物は、災害発生直後から数日間、自力で生活するために必要不可欠です。また、家族との連絡手段や避難場所、緊急連絡先などを事前に確認しておくことも重要です。家具の固定や家の周りの安全確認など、日頃から災害に強い環境作りを心がけることも重要です。いざという時に慌てないために、家族で防災計画を立て、定期的に避難訓練を実施することも有効な備えと言えるでしょう。
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偶発性低体温症:命を脅かす危険な状態

- 偶発性低体温症とは偶発性低体温症とは、事故や不測の事態によって、意図せず体が冷え切ってしまい、深部体温が35℃以下に低下してしまう深刻な状態を指します。これは手術など医療現場で意図的に体温を下げる低体温麻酔とは全く異なるものです。山岳遭難や水難事故に遭った際に発生するイメージが強いですが、実際には、私たちの身近にも危険は潜んでいます。例えば、泥酔状態や薬物中毒によって意識がもうろうとなり、屋外で長時間過ごしてしまうことで発症するケースや、屋外での活動中に天候が急変し、気温が急激に低下することで発症するケースも少なくありません。体温が低下すると、体中の機能が徐々に低下していきます。初期症状としては、震えや意識の混濁、判断力の低下などが見られます。さらに体温が低下すると、脈拍や呼吸が遅くなり、意識を失ってしまうこともあります。最悪の場合、命を落としてしまう危険性も潜んでいます。日頃から、偶発性低体温症に対する正しい知識を身につけておくことが重要です。特に、冬山登山や水上スポーツなど、寒冷環境での活動を行う際には、十分な注意が必要です。また、もしもの事態に備え、体温を保持できるウェアや非常食、携帯カイロなどを準備しておくことも大切です。
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痙攣:その原因と症状について

- 痙攣とは痙攣は、私たちの体を動かすための指令を出す中枢神経に異常が生じることで、自分の意思とは関係なく筋肉が収縮してしまう現象です。普段は私たちが体を動かそうとすると、脳から筋肉へ「動け」という指令が神経を通して伝えられます。しかし、痙攣が起こると、この指令系統が乱れてしまい、筋肉が勝手に収縮と弛緩を繰り返してしまうのです。痙攣が起こると、体が急に硬直したり、手足が突っ張ったり、逆に曲げ伸ばしを繰り返したりするといった症状が現れます。痙攣は、その影響範囲によって大きく二つに分けられます。全身の筋肉に症状が現れるものを「全身性痙攣」、体の一部分だけに症状が現れるものを「局所性痙攣」と呼びます。全身性痙攣は、意識を失って倒れてしまうこともあるため、周囲の人はそのような事態にも対応できるよう、正しい知識を身につけておくことが大切です。一方、局所性痙攣は、まぶたがピクピクする、指先が震えるなど、比較的軽度の症状で済む場合も多いです。しかし、頻繁に起こる場合は、重大な病気のサインである可能性も考えられます。いずれの場合も、自己判断せずに、医療機関を受診して適切な診断を受けるようにしましょう。
その他

潜水作業の危険:減圧症を理解する

- 減圧症とは減圧症は、潜水などの際に、高い水圧がかかる環境から低い水圧の環境へ急激に移った際に、体の中で起こる変化が原因で発症する病気です。深く水中にもぐればもぐるほど、私達の体は周囲の水圧の影響を大きく受けます。この時、私達の呼吸によって体内に取り込まれた空気中の窒素ガスは、高い水圧によって血液や体液に普段よりも多く溶け込んでいきます。この状態で、水中から水面に向かって急激に浮上すると、溶けていた窒素ガスは、圧力が低い環境になったことで、体内で気泡となってしまいます。これは、密閉された炭酸飲料水のボトルを開けた際に、一気に気泡が発生する現象と同じです。この気泡は、血管を詰まらせたり、神経を圧迫したりすることで、様々な体の不調を引き起こします。これが減圧症です。
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いざという時のために!知っておきたい気道確保

- 気道確保の基礎知識気道確保とは、事故や病気などで呼吸が苦しくなった人の命を救うための、とても大切な処置です。私たちの体の中では、常に呼吸が行われており、空気は鼻や口から喉を通って肺へと送られます。この空気の通り道を気道と呼びます。しかし、事故や病気によって、この気道が狭くなったり、塞がったりすることがあります。例えば、意識を失って舌が喉の奥に落ち込んでしまったり、食べ物が詰まったり、アレルギー反応で喉が腫れてしまうなどが考えられます。気道が狭くなったり、塞がったりすると、肺に十分な空気が送られなくなり、体が酸素不足に陥ります。酸素は体のあらゆる場所で必要とされるため、不足すると意識を失ったり、最悪の場合、命を落としてしまう危険性もあります。気道確保は、このような事態を防ぎ、再び肺に十分な空気を送り込むための処置です。気道確保の方法には、頭を後ろに傾けてあごを持ち上げる方法や、気道に詰まった異物を取り除く方法など、様々なものがあります。
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救命率向上に欠かせない「救命の鎖」

- 「救命の鎖」とは突然、目の前で人が倒れ、心臓や呼吸が止まってしまったら…。一刻も早い救命活動が求められるこのような状況において、「救命の鎖」という言葉は、その重要性を端的に表しています。「救命の鎖」とは、心臓や呼吸が停止した人の命を救い、後遺症を最小限に抑えるために、居合わせた人、救急隊、医療機関がそれぞれの役割を分担し、スムーズに連携していくことを意味します。鎖の一つ一つの輪が、それぞれの役割を表しており、この輪が途切れることなく繋がることで、救命の可能性を高めることができるのです。2000年に発表された米国心臓協会(AHA)のガイドラインでは、大人の救命の鎖として、4つの輪が提唱されています。1. 迅速な通報周囲の人が異変に気づき、ためらうことなく、すぐに119番通報をすることが重要です。2. 迅速な心肺蘇生通報後、救急隊が到着するまでの間、居合わせた人がためらわずに心肺蘇生やAEDを用いた電気ショックを行うことが重要です。3. 迅速な除細動救急隊員が到着した後、心臓の動きを正常に戻すための電気ショック(除細動)を迅速に行います。4. 二次救命処置病院へ搬送された後、医療機関において、より高度な治療や処置が速やかに行われます。このように、「救命の鎖」は、それぞれの場面における迅速かつ的確な連携によって成り立っています。鎖の輪が一つでも欠けてしまうと、救命率は著しく低下してしまう可能性があります。日頃から「救命の鎖」について理解を深めておくことが、いざという時に人々の命を救う力となるのです。
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胸部外傷で見逃せない!気胸、血胸、血気胸とは?

私たちの肺は、胸膜という薄い膜で包まれています。肺と胸膜の間には、わずかな液体で満たされた胸膜腔という空間があります。胸部に強い衝撃を受けると、この胸膜腔で異常が起こることがあります。主な病態として、気胸、血胸、血気胸の3つが挙げられます。気胸は、胸膜腔に空気が入り込むことで肺が圧迫される状態です。息苦しさや胸の痛みを感じ、呼吸が浅く速くなることがあります。重症化すると、顔色が悪くなったり、意識がもうろうとしたりする危険性もあります。血胸は、胸膜腔に出血が起こり、肺が圧迫される状態です。出血量が多いと、酸素を十分に取り込めなくなり、ショック状態に陥ることもあります。血気胸は、気胸と血胸が同時に起こる状態です。空気が入る原因としては、肺を損傷するような外傷が考えられます。呼吸困難や胸の痛み、血圧低下など、気胸と血胸の両方の症状が現れます。いずれの病態も命に関わる危険性があるため、迅速な処置が必要です。特に、交通事故や高所からの落下など、胸部に強い衝撃を受けた場合は、これらの病態を疑い、速やかに医療機関を受診することが重要です。
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いざという時の備え!AEDを知ろう

- AEDとはAEDは、Automated External Defibrillator(自動体外式除細動器)の略称です。これは、心臓が突然停止してしまった際に、電気ショックを与えることで心臓の正常なリズムを取り戻すための医療機器です。心臓が止まってしまうことを「心停止」といいますが、これは、心臓のポンプ機能が何らかの原因で停止し、血液を全身に送ることができなくなる状態です。心停止は、心臓発作や溺水、感電、事故など、様々な原因によって引き起こされる可能性があります。AEDは、この心停止状態の人に電気ショックを与えることで、心臓の動きを正常に戻すことを試みるための機器です。AEDは、医療従事者でなくても使用できるように設計されており、音声ガイダンスやイラスト表示に従って操作することができます。AEDは、街中や駅、学校、公共施設など、多くの人が集まる場所に設置されています。もしも目の前で人が倒れ、意識がない、呼吸をしていないなどの心停止の兆候が見られた場合は、ためらわずにAEDを使用することが重要です。迅速な対応が、救命の可能性を高めることに繋がります。
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知っておきたい医療用語:片肺換気とは?

- 片肺換気とは片肺換気とは、文字通り、左右どちらか片方の肺だけを使って呼吸をする状態を指します。普段私たちが何気なく行っている呼吸は、左右両方の肺を使っていますが、様々な理由で片方の肺だけが機能し、呼吸を行わなければいけない場合があります。片肺換気になってしまう原因は大きく分けて二つあります。一つは、怪我や病気などによって、意図せず片肺換気の状態になってしまう場合です。例えば、交通事故などで胸部に強い衝撃を受けると、肺が損傷し、空気が漏れてしまうことがあります。これが片方の肺だけで起こると、その肺は膨らんだり縮んだりすることができなくなり、結果として片肺換気の状態になってしまうのです。また、肺炎などの病気によって、片方の肺が機能しなくなる場合もあります。二つ目は、手術や治療のために、意図的に片肺換気の状態を作り出す場合です。例えば、肺がんの手術では、がんに侵された肺の一部、もしくは全体を切除することがあります。その際、手術する側の肺に麻酔薬を集中させ、機能を一時的に停止させることで、安全に手術を行うことがあります。片肺換気は、健康な状態であれば、もう片方の肺だけで呼吸を補うことができるため、すぐに命に関わるような状態ではありません。しかし、長時間にわたって続く場合は、体に負担がかかり、呼吸困難などの症状が現れる可能性もあります。そのため、片肺換気になった原因を特定し、適切な処置を行うことが重要です。
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いつもと違う?要注意!奇異呼吸を見分ける

私たちは普段、息を吸ったり吐いたりすることを意識せずに生活しています。これは呼吸が、生命維持に欠かせない非常に重要な働きでありながら、通常は無意識のうちに行われているからです。しかし、体に病気や怪我などが生じると、この呼吸に異常が現れることがあります。これを「奇異呼吸」と呼びます。奇異呼吸は、呼吸の回数、リズム、深さなどが通常とは異なる状態を指します。例えば、息を吸うのが苦しい、呼吸が速い、呼吸のリズムが乱れるといった症状が現れます。これらの症状は、肺炎や喘息などの呼吸器疾患だけでなく、心不全や糖尿病など、様々な病気が原因で起こる可能性があります。普段は意識することの少ない呼吸ですが、その状態は体の健康状態を反映する重要なサインです。そのため、自分自身や周りの人の呼吸にいつもと違う様子が見られた場合は、すぐに医療機関に相談することが大切です。早期発見と適切な対応によって、重症化を防ぐことができる場合も少なくありません。
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院外心肺停止:知っておきたい知識と対策

- 院外心肺停止とは病院の外で、突然心臓と呼吸が止まってしまう恐ろしい状態を、院外心肺停止と言います。心臓は、全身に血液を送るポンプの役割を担っています。この心臓が停止してしまうと、血液は体の中を巡ることができなくなり、酸素も各臓器に届けられなくなります。酸素不足の状態が続くと、脳をはじめとする臓器に回復できないダメージが残ってしまいます。呼吸は、体内に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するために欠かせない体の機能です。呼吸が停止すると、体内に酸素が取り込めなくなり、心臓が止まっている状態では、心臓マッサージで心拍を再開させても、呼吸が再開しなければ、救命することはできません。院外心肺停止は、いつ、どこで、誰にでも起こりうる可能性があります。発生から数分間が生死を分ける非常に重要な時間であり、一分一秒を争う迅速で適切な処置が必要不可欠です。
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応急処置の基礎知識

- 応急処置とは病気や怪我をしてしまった時、すぐに病院に行けば良いとは限りません。救急車が到着するまで、あるいは病院に到着するまでの間、適切な処置を行うことで、命を救ったり、症状が悪化するのを防いだりすることができます。このような、医療機関による専門的な治療を受けるまでの間に行う一時的な処置のことを、応急処置と言います。応急処置の目的は、大きく分けて三つあります。最も重要なのは、生命の危機を回避することです。例えば、呼吸が止まってしまった場合や、大量に出血している場合、一刻も早い処置が生死を分けることになります。次に、症状が悪化するのを防ぐことも大切です。怪我の状態によっては、適切な処置を行わないことで、後遺症が残ってしまう可能性もあります。そして、回復を助けることも、応急処置の重要な役割です。早期に適切な処置を行うことで、回復を早めたり、痛みを和らげたりすることができます。応急処置は、医師や看護師などの専門家だけがするものと思われがちですが、決してそうではありません。一般市民であっても、正しい知識と技術を身につけていれば、応急処置を行うことができます。いざという時に、落ち着いて行動し、大切な人を守るためにも、日頃から応急処置について学んでおくことが重要です。
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隠れた危険!横紋筋融解症とは?

- 筋肉の病気、横紋筋融解症とは私たちの体を支え、動かすために欠かせない筋肉。実は、この筋肉で構成される細胞が壊れ、血液中に流れ出すことで発症する病気があります。それが「横紋筋融解症」です。まるで、身体の土台が崩れてしまうかのような、大変深刻な病気です。一体なぜ、このようなことが起きるのでしょうか? 実はその原因は、私たちの身近に潜んでいます。例えば、激しい運動や運動不足、肉体的負荷の高い労働などが挙げられます。また、交通事故などによる強い衝撃や、圧迫なども原因の一つです。さらに、薬の副作用によって発症するケースもあるため、注意が必要です。横紋筋融解症は決して他人事ではありません。過度な運動や肉体労働の後、筋肉に強い痛みや脱力感を感じたら、注意が必要です。また、尿の色が赤褐色になるなど、いつもと違う体の変化にも気を配りましょう。 日頃から適度な運動を心がけ、栄養バランスのとれた食事を摂ること、そして十分な休息をとることが、この病気を予防するために大切です。
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外傷性窒息: 圧迫による見えない脅威

事故と聞くと、自動車同士がぶつかる様子や、高いところから落ちてしまう様子を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。もちろん、交通事故や転倒は重大な事故です。しかし、事故には、火災や水難など、様々な種類があります。そして、これらの事故で忘れてはならないのが、事故による怪我や衝撃によって呼吸ができなくなってしまう「外傷性窒息」という危険です。外傷性窒息は、事故によって胸やお腹を強く圧迫されることで、肺に空気が入らなくなり、呼吸困難に陥る状態を指します。例えば、工場などで機械に挟まれたり、工事現場で足場が崩れて体の一部が挟まれたりすることで起こることがあります。また、階段で転倒して将棋倒しになったり、雪崩や土砂崩れに巻き込まれたりするなど、私たちの身近にも危険は潜んでいます。外傷性窒息は、一刻を争う危険な状態です。事故現場では、まず、周囲の安全を確保し、直ちに救急車を要請しましょう。そして、可能であれば、二次災害を防ぎながら、呼吸がしやすい体位を保つなどの応急処置を行うことが重要です。
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命に関わる危険な気胸: 開放性気胸とは?

- 開放性気胸とは開放性気胸は、胸部に開いた傷口から空気が胸腔(肺の周りにある空間)に直接入り込むことで、肺が圧迫され収縮してしまう状態を指します。通常、私達の肺は胸腔内の陰圧と呼ばれる、肺の外側からの圧力によって膨らんだ状態を保っています。しかし、交通事故や転倒、刺傷などによって胸部に開いた傷口から空気が入り込むと、この陰圧が失われてしまいます。その結果、肺は自ら膨らむことができなくなり、息苦しさや胸の痛みといった症状が現れます。開放性気胸は、傷口が大きいほど、また、空気が入り込む量が多いほど重症化する傾向があります。 場合によっては、傷口から胸の中で音がする、呼吸困難に陥る、顔色が悪くなるなどの症状が出ることもあります。このような症状が現れた場合は、直ちに医療機関に連絡し、指示を仰ぐ必要があります。