心肺蘇生

その他

低心拍出量症候群:命に関わる心臓の緊急事態

- 低心拍出量症候群とは心臓は、まるで体中に血液という大切な荷物を届ける働き者のポンプです。しかし、このポンプの働きが弱くなってしまい、十分な血液を送り出せなくなることがあります。これが低心拍出量症候群と呼ばれる病気です。健康な状態であれば、心臓は力強く収縮し、全身に血液を送り出しています。しかし、心臓の手術後や心筋梗塞、心肺蘇生後など、心臓に大きな負担がかかった場合、このポンプ機能が低下してしまうことがあります。血液は、酸素や栄養を体の隅々まで運ぶ、いわば宅配便のような役割を担っています。しかし、低心拍出量症候群になると、この宅配便の数が減ってしまい、体全体に行き渡らなくなってしまいます。結果として、息切れやだるさ、めまい、意識障害などが現れ、重症になると命に関わる危険性も出てきます。低心拍出量症候群は、心臓からのSOSサインです。早期発見と適切な治療が非常に重要となります。
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救命の連鎖:二次救命処置の重要性

- 二次救命処置とは二次救命処置とは、突然の心臓停止などにより生命の危機に瀕している人を対象に、医師や看護師、救急救命士といった特別な訓練を受けた医療従事者が行う高度な救命処置です。医療機器や薬剤を使用するため、一般の人がその場で行う一次救命処置とは区別されます。一次救命処置には、胸骨圧迫や人工呼吸といった心肺蘇生法などが含まれます。これは、たまたま居合わせた人でも、特別な医療知識がなくても行うことができます。一方、二次救命処置は、一次救命処置に引き続いて医療機関において開始され、より専門的な知識と技術を必要とします。例えば、電気ショックを用いて心臓の動きを正常に戻す「除細動」や、心臓の動きを維持するための薬剤投与、気管挿管による人工呼吸管理などが行われます。二次救命処置は、心停止からの回復率を高めるために極めて重要です。1970年代以降、心肺蘇生法の普及活動が世界的に広がり、それと同時に一次救命処置と二次救命処置を体系的に指導するシステムが構築されました。その結果、多くの人々が救命処置について学ぶ機会を得て、救命率の向上に大きく貢献しました。二次救命処置は、文字通り人の命を救うための最後の砦と言えるでしょう。
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救命に繋がる?脳低温療法の可能性

- 脳低温療法とは脳低温療法とは、事故や病気などによって脳がダメージを受けた際に、その後の影響をできる限り抑え、脳の機能回復を助けるための治療法です。私たちの脳は、心臓が止まって血液の流れが止まると、酸素不足に陥り、短時間で大きな損傷を受けてしまいます。さらに、血液が再び流れ始めると、今度は活性酸素などが発生し、脳に炎症やむくみが引き起こされ、さらなるダメージを受けてしまいます。脳低温療法では、脳の温度を通常よりも低い32度から34度程度にまで下げることで、これらのダメージを抑えます。体温を下げることによって、脳の活動が抑制され、酸素の消費量が減少するため、損傷からの悪影響を軽減できると考えられています。脳低温療法は、心停止後の脳機能回復や、新生児の脳性麻痺のリスクを軽減する効果が期待されています。しかし、すべての患者さんに有効なわけではなく、合併症のリスクもゼロではありません。そのため、専門医による適切な診断と治療が必要となります。
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救命率向上に欠かせない「救命の鎖」

- 「救命の鎖」とは突然、目の前で人が倒れ、心臓や呼吸が止まってしまったら…。一刻も早い救命活動が求められるこのような状況において、「救命の鎖」という言葉は、その重要性を端的に表しています。「救命の鎖」とは、心臓や呼吸が停止した人の命を救い、後遺症を最小限に抑えるために、居合わせた人、救急隊、医療機関がそれぞれの役割を分担し、スムーズに連携していくことを意味します。鎖の一つ一つの輪が、それぞれの役割を表しており、この輪が途切れることなく繋がることで、救命の可能性を高めることができるのです。2000年に発表された米国心臓協会(AHA)のガイドラインでは、大人の救命の鎖として、4つの輪が提唱されています。1. 迅速な通報周囲の人が異変に気づき、ためらうことなく、すぐに119番通報をすることが重要です。2. 迅速な心肺蘇生通報後、救急隊が到着するまでの間、居合わせた人がためらわずに心肺蘇生やAEDを用いた電気ショックを行うことが重要です。3. 迅速な除細動救急隊員が到着した後、心臓の動きを正常に戻すための電気ショック(除細動)を迅速に行います。4. 二次救命処置病院へ搬送された後、医療機関において、より高度な治療や処置が速やかに行われます。このように、「救命の鎖」は、それぞれの場面における迅速かつ的確な連携によって成り立っています。鎖の輪が一つでも欠けてしまうと、救命率は著しく低下してしまう可能性があります。日頃から「救命の鎖」について理解を深めておくことが、いざという時に人々の命を救う力となるのです。
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命を救うAED:電気ショックで心臓を蘇生

電気ショックは、まるで眠ってしまった心臓を揺り起こすように、電気の力で心臓を再び動かすための処置です。人間の心臓は、体中に血液を送り出すポンプのような役割を担っており、規則正しいリズムを刻んで収縮と拡張を繰り返しています。しかし、病気や事故など、様々な原因によってこのリズムが乱れてしまうことがあります。心臓が本来のリズムを失い、震えるようにけいれんを起こしてしまう状態を心室細動と呼びます。心室細動が起こると、心臓は血液をうまく送り出すことができなくなり、命に関わる危険な状態に陥ります。この心室細動を止め、心臓の動きを正常なリズムに戻すために用いられるのが電気ショックです。電気ショックによって心臓に電気刺激を与えることで、乱れた電気信号をリセットし、心臓が再び正常なリズムで動き出すように促します。
制度

ウツタイン様式:心肺蘇生成功率向上への鍵

- ウツタイン様式の誕生突然、街中で人が倒れ、呼吸も脈もない。こんな時、居合わせた人の迅速な行動が生死を分ける場合があります。一刻を争う救命活動。しかし、その大切な活動の効果を正確に把握し、より多くの命を救うためには、世界共通の記録方法が必要でした。そこで1990年、ノルウェーのウツタインという街で、画期的な会議が開催されました。世界中から心肺蘇生の専門家が集まり、病院の外で起こる突然の心停止について、その記録方法を統一しようと議論を重ねたのです。この会議をきっかけに、世界で初めて病院外心停止の記録に関するガイドライン作りが始まりました。そして、会議の開催地の名前にちなんで、この記録方法は「ウツタイン様式」と名付けられました。ウツタイン様式のおかげで、世界中で救命活動のデータを集約・分析することができるようになり、救命率の向上や、より効果的な救命方法の開発に繋がることが期待されています。
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AEDってどんなもの?

- AEDって何? AEDは、Automated External Defibrillatorの頭文字をとったもので、日本語では自動体外式除細動器と言います。AEDは、心臓がけいれんを起こして突然倒れた人の心臓の状態を自動的に調べて、電気ショックが必要かどうかを判断してくれる医療機器です。心臓がけいれんを起こすと、全身に血液を送ることができなくなり、数分以内に命を落としてしまう危険性があります。AEDはこのような事態に陥った人を助けるための、とても大切な医療機器なのです。AEDは、病院や救急車の中だけでなく、駅や空港、公共施設など、人が多く集まる場所に設置されているのを目にしたことがある人もいるのではないでしょうか。AEDは、医療従事者でなくても使用できるように設計されています。使い方も簡単で、音声ガイダンスに従って操作すれば、誰でもAEDを使用することができます。AEDは、いざという時に人の命を救うことができる、大変重要なものです。AEDの存在を意識して、もしもの時に備えましょう。
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命を救う行動: CPRの基礎知識

- CPRってどんなもの?CPRとは、CardioPulmonary Resuscitation(心肺蘇生法)の略称で、心臓や呼吸が止まってしまった人の命を救うための緊急処置です。心臓が止まると、血液は体全体に行き渡らなくなり、脳も含めた体の各部分に酸素が届けられなくなってしまいます。CPRは、胸の真ん中あたりを強く押す「胸骨圧迫」と、口から息を吹き込む「人工呼吸」によって、心臓と肺の働きを代わりに肩代わりし、脳への酸素供給を維持することを目的としています。CPRは、適切に行われれば、心臓や呼吸が止まった直後の人に対して特に有効です。一刻も早く処置を開始することが重要となるため、救急隊に連絡すると同時に、近くにいる人はためらわずにCPRを開始することが大切です。近年では、人工呼吸を省略した胸骨圧迫のみのCPRも推奨されています。これは、人工呼吸に抵抗がある人でもためらいなく救命処置を行えるようにするためです。CPRは特別な技術や知識がなくても、誰でも習得することができます。地域の消防署や日本赤十字社などが定期的に講習会を開催しているので、ぜひ参加して、いざという時に備えましょう。
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命をつなぐ架け橋:一次救命処置の重要性

私たちの日常生活は、予測できない出来事の連続です。いつ、どこで、何が起こるか、誰にも分かりません。そして、その中には、不意に病気や事故に見舞われ、大切な家族や友人の命が危険にさらされるという、想像もしたくないような状況も含まれます。心臓が突然止まってしまう心停止は、まさにその代表的な例と言えるでしょう。予兆もなく、ある日突然私たちを襲う恐ろしいものです。このような事態に直面した時、私たちに一体何ができるのでしょうか?何もできないと諦めてしまうにはあまりにも早すぎます。なぜなら、私たちにもできる大切な行動があるからです。それは、一次救命処置について学ぶことです。一次救命処置とは、救急隊員が到着するまでの間に行う応急処置のことです。胸骨圧迫や人工呼吸といった、特別な技術や知識を必要としない、比較的簡単な処置を学ぶことで、心停止した人の命を救える可能性が格段に高まります。大切な人を守るために、そして、いつ訪れるか分からない危機に備えるために、私たちは一次救命処置について積極的に学び、その知識を身につけておく必要があるのです。