奇脈

けが人へ医療

命を脅かす緊急事態:心タンポナーデ

私たちの心臓は、「心膜」と呼ばれる袋のような組織に包まれて守られています。普段は、心膜と心臓の間には少量の液体(心嚢液)があり、心臓がスムーズに動くようにサポートしています。しかし、病気や怪我など、何らかの原因でこの心嚢に血液や体液が過剰に溜まってしまうことがあります。すると、心臓は圧迫されてしまい、正常に拍動することができなくなります。これが「心タンポナーデ」と呼ばれる危険な状態です。心タンポナーデは、心臓を圧迫することで血液を全身に送り出すポンプとしての機能を低下させます。その結果、息切れやめまい、意識障害などの症状が現れ、最悪の場合、死に至ることもあります。心タンポナーデは、迅速な対応が必要となる緊急事態です。症状が現れた場合は、一刻も早く医療機関を受診する必要があります。治療では、過剰に溜まった心嚢液を針で穿刺して排出する「心嚢穿刺術」などが行われます。心タンポナーデは命に関わる病気ですが、早期発見・早期治療によって救命できる可能性があります。
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緊急時に注意!奇脈とその重要性

- 奇脈とは?聞き慣れない言葉かもしれませんが、「奇脈」は心臓の健康状態を把握する上で重要なサインです。健康な状態では、息を吸うと胸腔が広がり、心臓に戻る血液の量が一時的に減少します。すると、体は血圧を保とうとして、心臓をより強く収縮させます。そのため、通常は息を吸っても血圧は大きく変動しません。しかし、心臓に何らかの異常があると、このバランスが崩れます。例えば、心臓を包む袋に水が溜まる「心タンポナーデ」や、心臓を圧迫するような病気にかかると、心臓は十分に血液を取り込めなくなります。その結果、息を吸った際に心臓に戻る血液量がさらに減少し、血圧が大きく低下してしまうのです。これが奇脈です。具体的には、息を吸った時の収縮期血圧(心臓が収縮した時の血圧)の低下が10mmHg以上になると、奇脈と診断されます。奇脈は、脈拍が弱くなったり、場合によっては消失するように感じられることもあります。これは、息を吸った際に心臓のポンプ機能が低下し、血液を十分に送り出せなくなるために起こります。奇脈は、心臓の病気が隠れているサインである可能性があります。そのため、もしも奇脈のような症状を感じたら、速やかに医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしてください。