呼吸器

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手術を支える縁の下の力持ち:分離肺換気

- 左右の肺を別々に換気する手術中には、左右の肺をそれぞれ別々に換気する、「分離肺換気」という高度な技術が使われることがあります。これは、片方の肺だけに休憩を与えたり、それぞれの肺に合わせた換気の調整が必要な時に非常に役立ちます。分離肺換気が特に力を発揮するのは、片方の肺に手術が必要な場合です。例えば、肺の一部を切除する手術や、腫瘍を取り除く手術などが挙げられます。このような場合、手術を受ける側の肺は空気を抜いて小さくしておく必要があります。これは、手術する部分を医師がはっきりと見やすくするため、そして、手術操作を行いやすくするためです。一方、手術を受けない方の肺には、引き続き空気が送り込まれ、正常に呼吸を続けることができます。これにより、手術中であっても、体全体への酸素供給を維持することができます。分離肺換気は、まさに左右の肺を別々に、そして、それぞれに最適な状態で管理することを可能にする技術と言えるでしょう。
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無気肺:呼吸が浅いときの危険性

- 無気肺とは無気肺は、肺の一部または全部が膨らまなくなる病気です。呼吸をする際、私達は普段意識していませんが、空気は気管を通って肺へと送られています。そして、肺の中で酸素と二酸化炭素の交換が行われ、私達は生きていくことができます。しかし、無気肺になると、肺に十分な空気が届かなくなってしまうのです。その原因は様々で、空気の通り道である気道が、痰や異物によって塞がってしまう場合や、肺の外側から腫瘍や胸水が圧迫することで起こる場合があります。健康な状態であれば、肺は常に空気を吸い込んで膨らんでいます。しかし、無気肺になるとこの肺の膨らみが十分に行われなくなり、呼吸が困難になります。さらに、肺で酸素と二酸化炭素の交換がうまくいかなくなるため、血液中の酸素濃度が低下してしまいます。その結果、息切れや動悸といった症状が現れるようになり、重症化すると意識を失ってしまうこともあります。無気肺は、肺炎や気管支喘息、肺塞栓症などの病気の合併症として起こることが多く、注意が必要です。もし、呼吸困難や息切れなどの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診するようにしてください。
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肺と胸郭のコンプライアンス:息を吸う仕組みを理解する

私たちは、普段意識することなく呼吸をしていますが、この自然な呼吸は、肺や胸郭が持つゴムのような伸び縮みする性質によって行われています。肺や胸郭は、まるでゴム風船のように、常に縮もうとする力を持っています。この縮もうとする力のことを弾性といいます。コンプライアンスは、この弾性とは反対の性質を示す指標です。つまり、肺や胸郭が、どれくらい膨らみやすいかを表しています。コンプライアンスが高いということは、少しの力で肺や胸郭が大きく膨らむことを意味し、逆にコンプライアンスが低い場合は、多くの力が必要になります。例えば、風船を思い浮かべてみましょう。新しい風船は少しの力で膨らませることができますが、何度も膨らませたり、時間が経って古くなった風船は、膨らませるのに力がいるようになります。これは、風船のゴムの弾性が変化したためですが、肺や胸郭も同様に、病気や年齢によって弾性が変化し、コンプライアンスも変化することがあります。
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低酸素性肺血管攣縮:命を守る体の神秘

私たちは、呼吸をすることで体の中に酸素を取り込み、生きていくために必要なエネルギーを生み出しています。呼吸によって肺に取り込まれた酸素は、肺胞と呼ばれる小さな袋状の器官で血液中に取り込まれ、全身に届けられます。しかし、病気や周囲の環境の影響によって、この肺胞内の酸素濃度が低下することがあります。これを低酸素状態と呼びます。低酸素状態になると、体はその状況を異常ととらえ、様々な反応を起こします。酸素をより多く体に取り込もうとして、呼吸が速くなったり、心臓がドキドキと速く鼓動したりすることがあります。このような状態が続くと、めまいや頭痛、吐き気などを感じやすくなります。さらに症状が進むと、意識がぼやけたり、最悪の場合、意識を失ってしまうこともあります。低酸素状態を引き起こす原因は様々ですが、代表的なものとしては、肺炎や喘息などの呼吸器疾患、心不全などの循環器疾患、一酸化炭素中毒などが挙げられます。また、高山地帯など、空気中の酸素濃度が低い場所に行くと、健康な人でも低酸素状態になることがあります。低酸素状態は命に関わる危険な状態です。呼吸が苦しい、息切れがする、顔色が悪いなどの症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診することが大切です。
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持続的気道陽圧法:その役割と利点

- 持続的気道陽圧法とは持続的気道陽圧法(CPAP)は、呼吸に問題を抱える方を助けるための治療法です。睡眠中に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」の治療法として特に知られていますが、その他多くの呼吸器疾患にも効果があります。この治療法では、鼻に装着したマスクを通して、空気を送り込む機械を使用します。送風機は、常に一定の圧力で空気を送り込み続けることで、気道を広げ、呼吸を楽にする効果があります。睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、睡眠中にのどの奥にある気道が狭くなったり、塞がってしまったりすることで、呼吸が苦しくなります。CPAPはこの気道が狭くなる、あるいは閉塞してしまうことを防ぎ、スムーズな呼吸を助ける役割を果たします。CPAPは、患者さん一人ひとりの症状に合わせて、適切な圧力で空気を送り込むことが重要です。そのため、医師の診断のもと、適切な圧力を設定した専用の機械を使用するようにしてください。
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知っておきたい体の指標:換気血流比

私たちは、息を吸うことで酸素を体内に取り込み、息を吐くことで二酸化炭素を体外に出しています。体内に取り込まれた酸素は、血液によって体の隅々まで運ばれます。この酸素を運ぶ血液の流れと、肺で行われる空気の循環(換気)のバランスを示す指標が「換気血流比」です。換気血流比は、肺のガス交換効率を理解する上で非常に重要です。肺の一部において、空気は十分に供給されているにもかかわらず、血液の流れが悪い状態を「死腔様換気」と呼びます。逆に、血液は十分に流れているにもかかわらず、空気の供給が少ない状態を「肺内シャント」と呼びます。換気血流比が適切に保たれている状態では、肺胞で効率的にガス交換が行われ、体内の酸素と二酸化炭素のバランスが保たれます。しかし、病気や環境などの影響で換気血流比が乱れると、息切れや動悸、最悪の場合には意識障害などを引き起こす可能性があります。健康な状態を保つためには、バランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠など、健康的な生活習慣を心がけることが大切です。
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気管支肺胞洗浄:肺の奥深くを探る診断法

健康診断では、胸部エックス線検査が広く行われています。これは、肺の異常を発見するための簡便で有効な方法です。しかし、肺の奥深くで起きている小さな変化や、病気のより詳しい情報を得るためには、さらに精密な検査が必要となる場合があります。そこで登場するのが「気管支肺胞洗浄」という検査法です。気管支肺胞洗浄は、口や鼻から細い管(気管支鏡)を肺まで挿入し、肺の末梢にある小さな袋状の器官である肺胞に、生理食塩水などの洗浄液を注入して、その後、吸引して回収する検査です。この回収された洗浄液中には、肺胞内に存在する細胞や、炎症や感染症の原因となる物質などが含まれています。この検査によって得られた細胞や物質を分析することで、肺炎、肺がん、間質性肺炎、肺結核などの病気の診断や、病気の原因究明、治療効果の判定などに役立てることができます。気管支肺胞洗浄は、肺の奥深くの状態を調べるための有用な検査法と言えるでしょう。