医療

その他

命を救う!冠インターベンション治療とは?

- 心臓の血管の詰まりを解消!心臓は、体全体に血液を送り出す重要な臓器です。そして、その心臓自身にも栄養を届けるための血管が存在します。それが冠動脈と呼ばれる血管です。毎日休むことなく働き続ける心臓にとって、冠動脈はまさに生命線と言えるでしょう。しかし、この冠動脈も、加齢や生活習慣の影響などによって、徐々に動脈硬化を起こしてしまうことがあります。動脈硬化とは、血管の内側にコレステロールなどが溜まり、血管が硬く狭くなってしまう状態のことです。水道管に例えると、内側に錆や汚れが付着して、水の通りが悪くなってしまうイメージです。冠動脈が動脈硬化を起こすと、心臓の筋肉に十分な血液が行き渡らなくなり、胸の痛みや圧迫感などの症状が現れます。このような状態を狭心症と呼びます。さらに症状が進行すると、冠動脈が完全に詰まってしまい、心臓の筋肉の一部が壊死してしまうことがあります。これが心筋梗塞です。心筋梗塞は命に関わる危険性も高く、迅速な治療が必要となります。冠インターベンションは、狭窄や閉塞を起こした冠動脈を治療し、心臓の筋肉への血流を改善するための治療法です。カテーテルと呼ばれる細い管を血管内に挿入し、風船やステントなどを用いて、狭くなった血管を拡張します。この治療により、心臓への血流が回復し、胸の痛みや圧迫感などの症状が改善されます。また、心筋梗塞の再発予防にも効果が期待できます。
その他

知っておきたい体の指標:換気血流比

私たちは、息を吸うことで酸素を体内に取り込み、息を吐くことで二酸化炭素を体外に出しています。体内に取り込まれた酸素は、血液によって体の隅々まで運ばれます。この酸素を運ぶ血液の流れと、肺で行われる空気の循環(換気)のバランスを示す指標が「換気血流比」です。換気血流比は、肺のガス交換効率を理解する上で非常に重要です。肺の一部において、空気は十分に供給されているにもかかわらず、血液の流れが悪い状態を「死腔様換気」と呼びます。逆に、血液は十分に流れているにもかかわらず、空気の供給が少ない状態を「肺内シャント」と呼びます。換気血流比が適切に保たれている状態では、肺胞で効率的にガス交換が行われ、体内の酸素と二酸化炭素のバランスが保たれます。しかし、病気や環境などの影響で換気血流比が乱れると、息切れや動悸、最悪の場合には意識障害などを引き起こす可能性があります。健康な状態を保つためには、バランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠など、健康的な生活習慣を心がけることが大切です。
その他

静かに進行する脅威:間質性肺炎について

- 間質性肺炎とは間質性肺炎は、肺の奥深くで静かに進行する病気です。 私たちの呼吸を支える肺は、空気を取り込む気管支と、その先でぶどうの房のように広がる肺胞で構成されています。 肺胞は、毛細血管と呼ばれる細い血管で覆われており、ここで血液中に酸素を取り込み、不要な二酸化炭素を排出する、ガス交換を行っています。間質性肺炎は、この肺胞と肺胞の周りの組織に炎症が起こり、傷ついてしまう病気です。 健康な肺では、肺胞は弾力があり、呼吸に合わせてスムーズに膨らんだり縮んだりしますが、炎症が続くと、肺胞の壁が厚く硬くなり、弾力を失ってしまいます。 これが肺線維化と呼ばれる状態で、まるで風船がしぼんで固くなってしまったように、肺が膨らみにくくなるため、呼吸が苦しくなってしまうのです。間質性肺炎は、初期の段階では自覚症状が現れにくく、気づかないうちに病気が進行してしまう場合もあります。 しかし、進行すると、息切れや咳などの症状が現れ、日常生活に支障をきたすようになります。 早期発見、早期治療が重要となるため、少しでも気になる症状があれば、医療機関を受診するようにしましょう。
感染症から守る

新生児に脅威となる壊死性腸炎

- 壊死性腸炎とは壊死性腸炎は、生まれたばかりの赤ちゃん、特に小さく生まれた赤ちゃんや未熟児に多く見られる病気です。赤ちゃんの腸は、お母さんのお腹の中にいる間は発達段階にあります。そのため、生まれたばかりの時期は腸の機能が未熟で、様々な影響を受けやすい状態です。壊死性腸炎は、何らかの原因で腸の粘膜に炎症が起こり、腸の壁が壊死してしまう病気です。進行すると腸に穴が開いてしまい、命に関わる危険な状態になることもあります。壊死性腸炎の主な症状としては、ミルクの飲みが悪くなる、嘔吐、腹部膨満、血便などが挙げられます。これらの症状は他の病気でも見られることが多いため、注意深く観察する必要があります。壊死性腸炎は早期発見と適切な治療が非常に重要です。もし赤ちゃんに上記の症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
組織

災害医療のスペシャリスト集団:DMATとは

大規模な地震や大事故が発生すると、同時に多くの人が怪我をしてしまうことがあります。怪我の程度は様々ですが、病院で治療を受けなければならない人も大勢発生します。しかしながら、病院で一度に対応できる人数には限りがあり、負傷者の搬送や治療の優先順位を決める必要があります。このような緊急事態に、国の指示を受けて被災地に駆けつける専門家集団がいます。それが災害派遣医療チーム、通称DMAT(ディーマット)です。DMATは、医師、看護師、業務調整員などで構成され、被災地で医療活動の指揮を執り、傷病者の状態に応じて治療の優先順位を決定する「トリアージ」を行います。また、病院での治療が必要な重症者の搬送先を調整したり、医療物資の確保なども行います。DMATは、被災地で活動するために、特殊な車両や医療機器を備えています。また、過酷な環境下でも活動できるよう、日々訓練を重ねています。災害現場は、電気や水道などのライフラインが断たれていることも多く、医療活動を行う上で大変厳しい環境です。 DMATは、このような厳しい環境の中でも、一人でも多くの命を救うために、持てる知識と技術を駆使して活動しています。
感染症から守る

エンドトキシン吸着療法:敗血症治療の革新

- エンドトキシン吸着療法とはエンドトキシン吸着療法は、血液の中に存在する毒素であるエンドトキシンを取り除く治療法です。私たちの体内では、通常、免疫システムが細菌などの病原体と戦ってくれています。しかし、細菌の中には、グラム陰性菌という種類があり、その細胞壁の外膜にはエンドトキシンという毒素が含まれています。グラム陰性菌が血液中に侵入し、増殖すると、エンドトキシンが血液中に放出され、敗血症と呼ばれる重篤な病態を引き起こすことがあります。敗血症は、過剰な免疫反応によって臓器障害やショック状態を引き起こし、命に関わることもある恐ろしい病気です。エンドトキシン吸着療法では、血液を体外循環させながら、エンドトキシンだけを吸着する特殊なフィルター(カラム)に通すことで、血液を浄化します。この治療法によって、血液中のエンドトキシン濃度を低下させ、敗血症の症状を改善させる効果が期待できます。エンドトキシン吸着療法は、主にグラム陰性菌感染による敗血症の治療に用いられます。ただし、この治療法単独ですべての敗血症を治せるわけではなく、抗菌薬による治療などと併用されることが一般的です。
その他

気管支肺胞洗浄:肺の奥深くを探る診断法

健康診断では、胸部エックス線検査が広く行われています。これは、肺の異常を発見するための簡便で有効な方法です。しかし、肺の奥深くで起きている小さな変化や、病気のより詳しい情報を得るためには、さらに精密な検査が必要となる場合があります。そこで登場するのが「気管支肺胞洗浄」という検査法です。気管支肺胞洗浄は、口や鼻から細い管(気管支鏡)を肺まで挿入し、肺の末梢にある小さな袋状の器官である肺胞に、生理食塩水などの洗浄液を注入して、その後、吸引して回収する検査です。この回収された洗浄液中には、肺胞内に存在する細胞や、炎症や感染症の原因となる物質などが含まれています。この検査によって得られた細胞や物質を分析することで、肺炎、肺がん、間質性肺炎、肺結核などの病気の診断や、病気の原因究明、治療効果の判定などに役立てることができます。気管支肺胞洗浄は、肺の奥深くの状態を調べるための有用な検査法と言えるでしょう。
けが人へ医療

命を守る気道確保:気管切開とは?

- 気管切開の目的気管切開とは、呼吸が困難になった際に、命を繋ぐために行われる重要な手術です。 この手術は、様々な原因で気道が塞がったり狭くなったりして、十分な呼吸ができなくなった場合に実施されます。私たちの体には、鼻や口から吸い込んだ空気を肺に届けるための気道と呼ばれる器官があります。しかし、病気や事故などによってこの気道が塞がれてしまうと、空気の通り道が狭くなり、呼吸が苦しくなります。さらに重症化すると、自力での呼吸が困難になり、生命の危機に瀕することもあります。このような状況において、気管切開は非常に有効な手段となります。気管切開では、首の前方にある気管軟骨という部分に小さな穴を開け、そこから直接チューブを挿入します。これにより、鼻や口を通らずに、肺に直接空気を送り込むことが可能になります。気管切開は、一時的な呼吸の補助として行われる場合もあれば、長期にわたって呼吸管理が必要な場合にも行われます。手術後は、チューブを通して呼吸の管理を行いながら、原因となった病気の治療やリハビリテーションなどを進めていきます。
感染症から守る

静かなる脅威:ガス壊疽について

- ガス壊疽とはガス壊疽は、傷口から侵入したある種の細菌によって引き起こされる、急速に進行する組織の感染症です。この細菌は、筋肉やその他の組織内でガスを発生させるという特徴があり、これが「ガス壊疽」という名前の由来となっています。ガス壊疽を引き起こす細菌は、土壌や人間の腸内に常在しているものが多く、傷口から体内に入り込むことで感染します。特に、深い傷や、土壌で汚染された傷、銃創や爆発による傷など、組織が大きく損傷している場合に発症しやすくなります。感染初期には、傷口周辺の腫れや痛み、発赤が現れます。その後、患部が急速に腫れ上がり、皮膚の色は赤紫色から青黒く変化していきます。また、触るとパチパチとした音がする場合もあります。さらに、発熱、悪寒、倦怠感、嘔吐などの全身症状が現れ、放置すると敗血症や多臓器不全を引き起こし、死に至ることもあります。ガス壊疽は非常に危険な感染症であるため、早期の診断と治療が不可欠です。治療は、抗生物質の大量投与と、壊死した組織の迅速な外科的切除が中心となります。場合によっては、高圧酸素療法が行われることもあります。ガス壊疽は、適切な傷の処置と早期の医療機関への受診によって予防できる病気です。傷口を清潔に保ち、少しでも異常を感じたら、すぐに医療機関を受診しましょう。
その他

身体の向きと肺の関係:下側肺障害にご用心

私たちは普段、何気なく呼吸をしていますが、体の向きによって肺への負担が変わってくることをご存じでしょうか。特に、仰向けに寝転んだ状態である「仰臥位」は、肺の働きに影響を与えやすい姿勢です。仰臥位の状態が長く続くと、重力の影響で血液や体液が背中側に溜まりやすくなります。すると、肺の下側が圧迫されてしまい、十分な量の空気を吸い込んだり、吐き出したりすることが難しくなるのです。このような状態を「無気肺」と呼びます。無気肺の状態になると、肺で酸素を取り込む機能が低下するため、血液中の酸素濃度が低下してしまいます。その結果、息苦しさを感じたり、呼吸が速くなったりするなど、呼吸困難の症状が現れることがあります。これが、仰臥位によって引き起こされる「下側肺障害」と呼ばれる状態です。特に、高齢者や呼吸機能が低下している方、寝たきりの方は、下側肺障害のリスクが高いと言われています。日頃から、体の向きを変えたり、軽い運動を取り入れたりするなどして、肺への負担を軽減することが大切です。
けが人へ医療

知っておきたい医療用語:片肺換気とは?

- 片肺換気とは片肺換気とは、文字通り、左右どちらか片方の肺だけを使って呼吸をする状態を指します。普段私たちが何気なく行っている呼吸は、左右両方の肺を使っていますが、様々な理由で片方の肺だけが機能し、呼吸を行わなければいけない場合があります。片肺換気になってしまう原因は大きく分けて二つあります。一つは、怪我や病気などによって、意図せず片肺換気の状態になってしまう場合です。例えば、交通事故などで胸部に強い衝撃を受けると、肺が損傷し、空気が漏れてしまうことがあります。これが片方の肺だけで起こると、その肺は膨らんだり縮んだりすることができなくなり、結果として片肺換気の状態になってしまうのです。また、肺炎などの病気によって、片方の肺が機能しなくなる場合もあります。二つ目は、手術や治療のために、意図的に片肺換気の状態を作り出す場合です。例えば、肺がんの手術では、がんに侵された肺の一部、もしくは全体を切除することがあります。その際、手術する側の肺に麻酔薬を集中させ、機能を一時的に停止させることで、安全に手術を行うことがあります。片肺換気は、健康な状態であれば、もう片方の肺だけで呼吸を補うことができるため、すぐに命に関わるような状態ではありません。しかし、長時間にわたって続く場合は、体に負担がかかり、呼吸困難などの症状が現れる可能性もあります。そのため、片肺換気になった原因を特定し、適切な処置を行うことが重要です。
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活性化プロテインC:血液凝固と炎症の制御

- 活性化プロテインCとは私たちの体内には、怪我などで出血した際に血液を固めて止血する、血液凝固系というシステムが備わっています。このシステムは、血液をスムーズに流すという役割と同時に、出血が起きた際には速やかに止血するという、相反する働きを両立させています。活性化プロテインC(APC)は、この血液凝固系において重要な役割を担うタンパク質の一つです。APCは、肝臓で作られるプロテインCが、血液凝固反応の過程で活性化されたものです。プロテインCの活性化には、食事から摂取する脂溶性ビタミンであるビタミンKが欠かせません。ビタミンKが不足すると、プロテインCが十分に活性化されず、血液が固まりすぎる状態、つまり血栓症のリスクが高まります。APCは、血液凝固反応を促進する働きを持つタンパク質の働きを阻害することで、血液凝固反応を抑制し、血栓の形成を防ぐ役割を担っています。また、APCは血液凝固系だけでなく、炎症反応にも関与しており、炎症反応を抑制する効果も期待されています。このように、APCは私たちの体内で非常に重要な役割を担っており、健康を維持する上で欠かせない存在と言えるでしょう。
その他

災害医療:いざという時に備えて

- 災害医療とは災害医療とは、地震や台風、洪水といった自然災害や、事故やテロといった人為的な災害が発生した際に、人々の健康と生命を守るための医療活動全体を指します。 平穏な日常では考えにくいことですが、災害発生時は、病院での普段通りの医療活動が困難になる場合があります。 地震によって建物が倒壊し、医療機関が機能しなくなるかもしれませんし、道路が寸断され、病院までの搬送が遅れてしまうことも想定されます。災害医療は、このような極限状態において、限られた医療資源と人員で、一人でも多くの命を救うことを目指す学問であり、実践の場でもあります。 具体的な活動としては、災害現場でのトリアージの実施、応急処置、病院への搬送、病院での治療などが挙げられます。 また、被災者の心のケアや、衛生状態の悪化による感染症の予防なども重要な活動です。災害医療は、医師や看護師だけでなく、救急救命士、薬剤師、行政機関、自衛隊、消防、警察など、様々な機関と連携して活動することが求められます。 日頃から関係機関同士が連携し、災害発生時の役割分担や情報共有などを綿密に行うことで、より円滑で効果的な医療活動が可能になります。
その他

活性炭:小さな粒に秘められた大きな力

- 活性炭とは活性炭は、木炭や石炭などを原料として作られる、多孔質の炭素物質です。その構造は、小さな孔が無数に開いた、まるでミクロの世界の迷路のようです。この孔のサイズや形状は、原料や製造方法によって異なりますが、その表面積は驚くほど広く、例えば、わずかスプーン一杯の活性炭の表面積は、テニスコート一面に匹敵するほどの広さに達します。活性炭の最大の特徴は、この無数の孔が持つ、様々な物質を吸着する力です。空気中や水中の臭い物質、色素、有害物質などが、この孔の内部に捕らえられ、除去されます。この吸着力は、物理的な現象と化学的な現象の両方が複雑に組み合わさって発揮されます。活性炭は、その優れた吸着性能を活かして、浄水場での水の浄化、空気清浄機や冷蔵庫の脱臭、食品や医薬品の精製など、私たちの生活の様々な場面で利用されています。また、近年では、環境浄化やエネルギー貯蔵の分野でも注目を集めています。
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命を守るために知っておきたいカテーテル感染

- カテーテル感染とは何か病院で治療を受ける際に、血管に管を入れる医療行為を受けることがあります。これは、点滴や栄養剤の投与、血液検査など、様々な治療に必要な場合に行われます。この血管に入れる管のことをカテーテルと呼びます。カテーテルは、患者さんの治療をスムーズに進める上で、とても大切な役割を担っています。しかし、このカテーテルを介して、細菌やカビなどの病原体が体内に侵入し、感染症を引き起こしてしまうことがあります。これがカテーテル感染です。カテーテル感染は、決して珍しいものではありません。入院している患者さんにとって、誰にでも起こりうる可能性があります。特に、病気や治療の影響で免疫力が低下している患者さんや、長期にわたってカテーテルを使用しなければならない患者さんは、注意が必要です。カテーテル感染は、発熱や患部の腫れ、痛み、膿など、様々な症状を引き起こします。重症化すると、敗血症など、命に関わる危険な状態に陥ることもあります。そのため、カテーテル感染を予防するために、医療従事者は、カテーテルを挿入する際には徹底した衛生管理を行い、患者さん自身も、手洗いをこまめに行うなど、清潔を心がけることが重要です。
けが人へ医療

一時的ペーシング:緊急時の心臓のペースメーカー

- 一時的ペーシングとは心臓は、規則正しいリズムを刻んで血液を全身に送り出す、人間の体にとって非常に重要な臓器です。しかし、様々な原因によって、このリズムが乱れてしまうことがあります。心臓の鼓動が遅くなりすぎる状態を「徐脈」といい、放置すると、めまいやふらつき、意識消失、最悪の場合は心停止に至ることもあります。このような徐脈の状態に対して、心臓に電気的な刺激を与えて、正常なリズムに戻すための緊急処置が、「一時的ペーシング」です。一時的ペーシングは、主に、洞不全症候群や房室ブロックといった、心臓の電気信号の伝達に異常をきたす病気によって引き起こされる徐脈に対して行われます。一時的ペーシングには、体外式と経静脈式の二つの方法があります。体外式は、胸部に電極を貼り付けて、外部から電気刺激を与える方法で、救急現場などでよく用いられます。一方、経静脈式は、静脈からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、心臓内部に電極を留置して電気刺激を与える方法で、より精密な治療が必要な場合に選択されます。一時的ペーシングは、徐脈による症状を改善し、生命を維持するために非常に重要な役割を果たします。
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一過性脳虚血発作:前兆を見逃さないで

- 一時的な脳の危機皆さんは「一過性脳虚血発作」という言葉を聞いたことがありますか? これはTIAとも呼ばれ、脳への血液の流れが一時的に悪くなることで、様々な神経症状が現れる病気です。例えるなら、脳卒中の軽い症状が短時間だけ現れるようなもので、「脳の軽い梗塞」とも呼ばれています。症状としては、手足の麻痺やしびれ、言葉が出にくくなる、ろれつが回らなくなる、ものが二重に見える、ふらつきなど、脳卒中に似た症状が現れます。 ただし、TIAは脳卒中と違って、これらの症状が通常は数分から数時間以内でおさまってしまう点が特徴です。症状がすぐに消えてしまうため、「気のせい」や「疲れ」と勘違いしてしまいがちですが、TIAは決して軽視してはいけません。 なぜなら、TIAは脳梗塞の前触れである可能性が高く、放置すると命に関わるような重い脳梗塞につながる危険性があるからです。実際に、TIAを経験した人の約3割は、その後、脳梗塞を発症すると言われています。もし、TIAと思われる症状が現れたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。 早期に適切な治療を受けることで、脳梗塞を予防できる可能性があります。
その他

忘れられた治療法? 胃冷却法の現在

- 胃冷却法とは?胃冷却法とは、読んで字のごとく、胃の中の温度を冷やす治療法です。どのように行うかというと、口から管を通して、冷たい液体や気体を胃の中に直接送り込みます。この方法で、胃の温度を意図的に下げることができるのです。胃冷却法が初めて世に出たのは、1958年のこと。アメリカの外科医であるワンゲンステーン氏によって発表されました。当時、胃潰瘍による出血は命に関わる大きな問題でした。そこで、胃酸の分泌を抑え、出血を止めるために、この画期的な治療法が考案されたのです。胃の温度を下げることで、胃酸の分泌が抑えられ、出血を止める効果が期待できます。そのため、胃潰瘍の出血に対する画期的な治療法として、世界中で注目を集めました。しかし、その後の研究で、胃冷却法には効果が薄いということが明らかになり、現在ではほとんど行われていません。
けが人へ医療

応急処置の基礎知識

- 応急処置とは病気や怪我をしてしまった時、すぐに病院に行けば良いとは限りません。救急車が到着するまで、あるいは病院に到着するまでの間、適切な処置を行うことで、命を救ったり、症状が悪化するのを防いだりすることができます。このような、医療機関による専門的な治療を受けるまでの間に行う一時的な処置のことを、応急処置と言います。応急処置の目的は、大きく分けて三つあります。最も重要なのは、生命の危機を回避することです。例えば、呼吸が止まってしまった場合や、大量に出血している場合、一刻も早い処置が生死を分けることになります。次に、症状が悪化するのを防ぐことも大切です。怪我の状態によっては、適切な処置を行わないことで、後遺症が残ってしまう可能性もあります。そして、回復を助けることも、応急処置の重要な役割です。早期に適切な処置を行うことで、回復を早めたり、痛みを和らげたりすることができます。応急処置は、医師や看護師などの専門家だけがするものと思われがちですが、決してそうではありません。一般市民であっても、正しい知識と技術を身につけていれば、応急処置を行うことができます。いざという時に、落ち着いて行動し、大切な人を守るためにも、日頃から応急処置について学んでおくことが重要です。
その他

隠れた危険!浸透圧ギャップでわかる体の異変

- 浸透圧ギャップって何?私たちの血液の中には、体に必要な栄養や酸素を運ぶ役割を担う、たくさんの成分が含まれています。例えば、食事から摂る塩分に含まれるナトリウムや、エネルギー源となるブドウ糖などが挙げられます。血液中に溶けているこれらの物質の濃度を表す指標として、「浸透圧」というものが用いられます。通常、血液中の浸透圧は、ナトリウムやブドウ糖などの濃度を測定することで、おおよその値を計算することができます。しかし、実際に測定してみると、計算で予測した値と、実測値との間に、わずかな差が生じることがあります。この計算値と実測値の差を「浸透圧ギャップ」と呼びます。浸透圧ギャップは、血液中に、計算では予測できない物質が溶け込んでいることを示唆しています。健康な状態であれば、血液中に溶け込んでいる物質のほとんどは計算で予測できるものなので、浸透圧ギャップはほとんどゼロに近い値を示します。しかし、もしも体の中で異常が起こり、血液中に通常は存在しない物質が溶け込むようなことがあれば、浸透圧ギャップが大きくなることがあります。具体的には、腎不全や糖尿病、アルコール中毒などの病気が隠れている可能性が考えられます。そのため、浸透圧ギャップは、これらの病気を早期発見するための重要な指標として用いられています。
けが人へ医療

多発外傷の重症度を評価する:外傷重症度スコアの解説

- 外傷重症度スコアとは外傷重症度スコア(ISS)は、交通事故や転落事故などによって、一箇所だけでなく身体の複数の部位に怪我を負った、いわゆる多発外傷の患者さんの状態を評価するための指標です。1974年にベイカーという医師たちによって考案され、その後もより正確に評価できるように改良が重ねられてきました。このスコアは、患者さんが負った怪我の重症度を数値化することで、医師が患者さん一人ひとりに最適な治療方針を決定するのに役立ちます。怪我の程度を客観的な数値で表すことができるため、医師間での情報共有や治療方針の決定がスムーズに行えるようになるというメリットもあります。ISSは、人体を頭部・頸部、顔面、胸部、腹部、四肢、体表の6つの部位に分け、それぞれの部位で最も重症な怪我に対して、1点(軽傷)から5点(致命傷)までの点数がつけられます。そして、最も点数が高い部位が2つ以上ある場合は、そのうち点数の高い上位2つの部位の点数をそれぞれ2乗して足し合わせることで、総合的な外傷重症度スコアを算出します。例えば、頭部に重症な怪我(5点)を負い、その他に腕の骨折(3点)などの怪我を負った場合、ISSは5の2乗と3の2乗を足した34点となります。ISSが15点以上の場合、重症多発外傷と判断され、救命救急センターでの集中的な治療が必要となります。ISSを用いることで、患者さんの予後、つまり将来的な回復の見込みを予測することも可能になります。スコアが高いほど、後遺症が残ったり、最悪の場合、亡くなってしまうリスクが高くなるということが統計的に示されています。このように、外傷重症度スコアは、多発外傷の患者さんの治療方針決定や予後予測に非常に役立つ重要な指標と言えます。
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見過ごせない脳のサイン:可逆性虚血性神経障害

- 一時的な神経症状日常生活において、手足の痺れや、言葉がうまく話せなくなる、呂律が回らなくなるといった神経の症状が一時的に現れることがあります。このような症状は、一般的に数分から数時間でおさまることが多く、多くの人は深刻に捉えずに放置してしまうかもしれません。しかし、これらの症状が24時間以上続く場合は注意が必要です。それは「可逆性虚血性神経障害」と呼ばれる、脳梗塞の一種である可能性があります。可逆性虚血性神経障害は、脳の血管が一時的に詰まることで起こりますが、比較的短時間で血流が再開するため、後遺症が残りにくいのが特徴です。しかし、放置すると本格的な脳梗塞に進行するリスクもあるため、早期の発見と治療が重要となります。手足の痺れや言語障害などの神経症状が一時的に現れた場合でも、24時間以上続く場合は速やかに医療機関を受診しましょう。また、症状が短時間で治まった場合でも、再発の可能性があるため、一度は医師の診察を受けることをおすすめします。
その他

アンチトロンビン:血液凝固の番人

私たちは日常生活で、ちょっとした傷を作ってしまうことがあります。するとそこから出血しますが、しばらくすると自然に血が止まります。これは、体が傷を治そうと、血液を固めて出血を止める「血液凝固」という働きによるものです。この血液凝固は、体の中で作られる複数の「凝固因子」と呼ばれるタンパク質が、複雑に絡み合って起こる反応です。怪我などで出血したときに、この働きがなければ、私たちは血が止まらなくなってしまいます。しかし、血液が固まりすぎるのも問題です。血液凝固が過剰に働いてしまうと、血管の中で血液が固まって「血栓」と呼ばれるものができてしまいます。血栓は血管を詰まらせてしまい、血液の流れを悪くするため、様々な病気を引き起こす原因となります。そこで重要な役割を果たすのが「アンチトロンビン」です。アンチトロンビンは、血液凝固が過剰に進まないように調節する、いわば血液凝固にブレーキをかける働きを持つタンパク質です。このアンチトロンビンが、血液凝固のバランスを保ち、私たちの体の健康を守っているのです。
地震への備え

総合防災訓練:目的と課題

- 総合防災訓練とは大きな災害が起こった場合を想定し、関係する様々な機関が協力して行う実践的な訓練のことを、総合防災訓練といいます。この訓練では、例えば、地震や台風などによって甚大な被害が発生したと仮定し、消防や警察、自衛隊、自治体、病院などが連携して救助や救護活動を行います。それぞれの機関が連携し、迅速かつ的確に対応できるよう、日頃から訓練を重ねることが重要です。具体的な例として、病院における総合防災訓練を見ていきましょう。大規模災害が発生すると、病院には多くの負傷者が搬送されてきます。このような状況下では、限られた医療資源を最大限に活用し、一人でも多くの命を救う必要があります。そこで、総合防災訓練では、負傷者の搬送から始まり、症状の重さによって治療の優先順位を決めるトリアージ、そして実際の治療まで、災害発生から病院内での対応を一連の流れでシミュレーションします。多数の参加者による緊迫感のある状況を作り出すことで、医療従事者は、実践的な対応能力を身につけることができます。このように、総合防災訓練は、関係機関が連携し、実践的な経験を積むことで、大規模災害発生時の被害を最小限に抑えるために非常に重要な役割を担っています。