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持続的気道陽圧法:その役割と利点

- 持続的気道陽圧法とは持続的気道陽圧法(CPAP)は、呼吸に問題を抱える方を助けるための治療法です。睡眠中に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」の治療法として特に知られていますが、その他多くの呼吸器疾患にも効果があります。この治療法では、鼻に装着したマスクを通して、空気を送り込む機械を使用します。送風機は、常に一定の圧力で空気を送り込み続けることで、気道を広げ、呼吸を楽にする効果があります。睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、睡眠中にのどの奥にある気道が狭くなったり、塞がってしまったりすることで、呼吸が苦しくなります。CPAPはこの気道が狭くなる、あるいは閉塞してしまうことを防ぎ、スムーズな呼吸を助ける役割を果たします。CPAPは、患者さん一人ひとりの症状に合わせて、適切な圧力で空気を送り込むことが重要です。そのため、医師の診断のもと、適切な圧力を設定した専用の機械を使用するようにしてください。
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命を守る呼吸管理: 呼気終末陽圧 (PEEP) の役割

私たちは、普段何気なく呼吸をしていますが、この行為こそが私たちの命を支える大切なものです。呼吸によって、体中に酸素が届けられ、それと同時に不要な二酸化炭素が体外へ排出されます。空気中の酸素は、肺の中にある小さな袋状の器官、肺胞で血液中に取り込まれ、体全体に運ばれます。そして、細胞が活動で使った後の二酸化炭素は、再び血液によって肺胞まで運ばれ、呼吸によって体外へ排出されるのです。しかし、病気や事故など、様々な原因によって肺胞が縮んでしまうことがあります。これを肺虚脱と呼びますが、肺虚脱が起こると、肺胞で正常に酸素と二酸化炭素の交換が行われなくなり、血液中に十分な酸素を取り込むことができなくなります。その結果、息苦しさや意識障害が現れ、最悪の場合、死に至る危険性も伴います。このように、呼吸は私たちの生命維持にとって非常に重要な役割を担っており、肺の健康を守ることは、健康的な生活を送る上で欠かせない要素の一つと言えるでしょう。
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限局性腹膜炎:原因と治療法

- 腹膜炎の種類腹膜炎は、お腹の中の臓器を包む膜である腹膜に炎症が起こる病気です。腹膜は、胃や腸などの消化器官を衝撃から守ったり、臓器を正しい位置に保つ役割をしています。この腹膜に細菌感染などが起こると、炎症反応によって激しい腹痛や発熱などの症状が現れます。腹膜炎は、炎症が広がる範囲によって大きく二つに分けられます。一つは、お腹全体に広がる汎発性腹膜炎です。汎発性腹膜炎は、消化管に穴が開いてしまい、そこから腸内細菌などが腹腔内へ漏れることによって起こることが多く、緊急手術が必要となる場合が多い重篤な病気です。もう一つは、炎症が一部に限局する限局性腹膜炎です。限局性腹膜炎は、虫垂炎や大腸憩室炎などの炎症が周囲の腹膜に波及することによって起こります。限局性腹膜炎の場合も、放置すると汎発性腹膜炎に進行する可能性があり、早期の治療が重要です。どちらの腹膜炎も、早期発見・早期治療が非常に重要になります。激しい腹痛や発熱など、気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。
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緊急出血時の処置:硬化療法とは?

- 硬化療法の概要硬化療法とは、食道や胃、腸などの消化管や、肛門部にできる痔核といった場所にできる静脈瘤からの出血に対して行われる治療法です。静脈瘤は、静脈の一部が太く膨らんでしまった状態を指します。硬化療法は、緊急を要する出血に対して行われる場合と、出血を予防する目的で行われる場合の二つに分けられます。 緊急性の高い状況においては、出血を速やかに止めるために硬化療法が選択されます。また、出血のリスクが高い場合や、過去に出血を繰り返している場合などには、予防的に硬化療法が行われることがあります。硬化療法では、静脈瘤またはその付近に、硬化剤と呼ばれる薬剤を注射針を用いて注入します。 硬化剤には、静脈瘤の内壁に炎症を引き起こし、血管を固化させる働きがあります。これにより、静脈瘤への血液の流れが止まり、静脈瘤は徐々に縮小していきます。硬化療法は、身体への負担が少ない比較的安全な治療法と考えられていますが、合併症のリスクもゼロではありません。 硬化剤によるアレルギー反応や、注射部位の痛み、腫れ、発赤などがみられることがあります。また、まれに、静脈瘤の破裂や血栓症などの重篤な合併症が起こる可能性もあります。そのため、治療を受ける際には、事前に医師から十分な説明を受け、治療のリスクとベネフィットを理解しておくことが重要です。
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高気圧酸素療法:現代医療における新たな可能性

- 高気圧酸素療法とは高気圧酸素療法とは、普段私たちが生活している気圧よりも高い、2~3気圧という特殊な環境に設置された部屋の中で、高濃度の酸素を吸入する治療法です。この治療法は、体に取り込む酸素の量を大幅に増やすことで、様々な病状の改善に効果を発揮します。私たちの体は、呼吸によって酸素を取り込み、血液によって全身に運びます。しかし、病気や怪我などによって、血液の流れが悪くなったり、酸素を十分に取り込めなくなったりすることがあります。このような状態になると、体の組織は酸素不足に陥り、様々な機能が低下してしまいます。高気圧酸素療法では、気圧を高めた環境で高濃度の酸素を吸入することで、血液中に溶け込む酸素の量を増加させます。これにより、酸素不足に陥っている組織にも十分な酸素を供給することができるようになり、組織の修復や機能回復を促します。高気圧酸素療法は、一酸化炭素中毒や潜水病などの急性疾患から、難聴や糖尿病性壊疽などの慢性疾患まで、幅広い疾患に効果が期待できます。また、近年では、美容や健康増進を目的とした利用も増えています。
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抗凝固療法:血栓を予防し、健康を守る

- 抗凝固療法とは抗凝固療法とは、血液を固まりにくくすることで、血管内に血栓ができるのを防ぐ治療法です。 私たちの血液には、血管が傷ついたときに傷口を塞いで出血を止める働きがあります。これは、血液中の成分が複雑に作用することで、血液を固める働きを持つ「血栓」が作られるためです。 しかし、何らかの原因でこの血栓が血管内でできてしまうと、血液の流れが悪くなり、様々な病気を引き起こすことがあります。 例えば、心臓に栄養を送る血管に血栓ができると、心臓の筋肉が壊死してしまう「心筋梗塞」を引き起こします。 また、脳の血管で血栓が生じると、脳梗塞の原因になります。 さらに、足の血管に血栓ができると「エコノミークラス症候群」を発症する可能性があります。抗凝固療法は、このような血栓が原因で起こる病気を予防するために、血液を固まりにくくする薬を服用します。 薬の種類や量は、患者さんの状態や血栓ができるリスクなどを考慮して、医師が適切に判断します。
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糖尿病の合併症:高浸透圧高血糖症候群

- 静かなる脅威高浸透圧高血糖症候群とは高浸透圧高血糖症候群は、糖尿病の合併症として発症する、命に関わる危険性もある病態です。糖尿病というと、血糖値が高くなることで、体内のエネルギー源であるブドウ糖がうまく利用されず、のどが渇いたり、尿の量が増えたりするというイメージが強いかもしれません。高浸透圧高血糖症候群では、血糖値が異常に高くなることで、血液の濃度が上昇します。これは、細胞内の水分が、濃度の高い血液中に移動してしまうために起こります。その結果、脱水症状を引き起こし、意識が朦朧としたり、最悪の場合、意識不明に陥ったりすることもあります。高浸透圧高血糖症候群は、糖尿病でよくみられるケトアシドーシス性昏睡と症状が似ています。どちらも高血糖を伴いますが、高浸透圧高血糖症候群では、ケトン体の産生が少ないという特徴があります。ケトン体は、ブドウ糖が利用できないときに、代わりにエネルギー源となる物質ですが、酸性の性質を持つため、体内で過剰に作られると、血液が酸性に傾くことがあります。高浸透圧高血糖症候群は、ケトン体の産生が少ないため、初期症状が軽い場合が多く、気づかずに放置してしまうケースも少なくありません。しかし、適切な治療を行わなければ、意識障害や脱水症状が進行し、死に至る可能性もあります。そのため、早期発見・早期治療が重要となります。
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後負荷:心臓の負担と治療法

- 後負荷とは何か私たちの体は、心臓という重要な臓器が休みなく血液を送り出すことで、その機能を維持しています。心臓は、全身に血液を送り届けるポンプのような役割を担っており、このポンプが血液を押し出す際に、心臓の筋肉(心筋)には、常に一定の負担がかかっています。この負担の大きさを表す指標となるのが「後負荷」です。心臓が血液を送り出す時、血管には自然と抵抗が生まれます。この抵抗は、血管の太さや柔軟性、そして血液自体の粘り気など、様々な要因によって変化します。この血管からの抵抗が大きくなればなるほど、心臓はより強い力で血液を押し出さなければならず、その結果、心筋にかかる負担も大きくなってしまいます。この、心臓が血液を送り出す際に感じる抵抗こそが、後負荷と呼ばれるものです。後負荷は、高血圧や動脈硬化など、様々な要因によって上昇することが知られています。後負荷が高い状態が続くと、心臓は常に大きな負担を抱えながら血液を送り続けなければならず、心不全などの深刻な病気を引き起こすリスクも高まります。そのため、健康な状態を保つためには、後負荷を適切な範囲に保つことが重要です。
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敗血症治療における強化インスリン療法:メリットと課題

- 強化インスリン療法とは強化インスリン療法は、敗血症などの体の状態が急激に悪化する病気にかかった時に起こる、血糖値の異常な上昇を抑えるための治療法です。私たちの体は、病気や怪我をすると、それを治そうとして様々な反応を起こします。この反応をストレス反応といいますが、このストレス反応によって血糖値が上昇することがあります。また、治療のために使う薬の影響で血糖値が上がることもあります。敗血症などの病気にかかると、このストレス反応が強く出てしまい、血糖値が非常に高くなることがあります。さらに、高血糖の状態が続くと、免疫の力が低下したり、様々な臓器がダメージを受けたりして、病気が悪化するリスクが高まります。そこで、強化インスリン療法では、インスリンを積極的に投与することで、血糖値を厳しく管理し、高血糖による悪影響を防ぐことを目指します。 インスリンは、血液中の糖をエネルギーとして利用するために必要なホルモンであり、血糖値を下げる働きがあります。強化インスリン療法によって、血糖値を適切にコントロールすることで、敗血症などの病気の経過を良くし、回復を早める効果が期待できます。
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緊急事態!筋膜切開で救肢:筋区画症候群とは?

- 筋区画症候群の危機私たちの身体は、骨や筋肉、神経、血管など、様々な組織が複雑に組み合わさり、それぞれの役割を果たしながら絶妙なバランスで成り立っています。筋肉は、「筋膜」という丈夫な膜で包み込まれ、いくつかの筋肉が束になって「筋区画」を形成しています。この筋区画は、まるで部屋のように、筋肉を保護し、その動きをサポートする役割を担っています。しかし、この筋区画内で、強い衝撃や圧迫などによって出血や腫れが生じると、筋膜に包まれた空間内の圧力(区画内圧)が異常に上昇することがあります。すると、筋肉や神経、血管は、この圧力によって圧迫され、深刻なダメージを受けてしまいます。これが「筋区画症候群」と呼ばれる危険な状態です。特に、腕や脚などの四肢に多くみられ、放置すると、筋肉が壊死し、最悪の場合、切断に至ることもあります。早期発見と適切な処置が非常に重要です。
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偶発性低体温症:命を脅かす危険な状態

- 偶発性低体温症とは偶発性低体温症とは、事故や不測の事態によって、意図せず体が冷え切ってしまい、深部体温が35℃以下に低下してしまう深刻な状態を指します。これは手術など医療現場で意図的に体温を下げる低体温麻酔とは全く異なるものです。山岳遭難や水難事故に遭った際に発生するイメージが強いですが、実際には、私たちの身近にも危険は潜んでいます。例えば、泥酔状態や薬物中毒によって意識がもうろうとなり、屋外で長時間過ごしてしまうことで発症するケースや、屋外での活動中に天候が急変し、気温が急激に低下することで発症するケースも少なくありません。体温が低下すると、体中の機能が徐々に低下していきます。初期症状としては、震えや意識の混濁、判断力の低下などが見られます。さらに体温が低下すると、脈拍や呼吸が遅くなり、意識を失ってしまうこともあります。最悪の場合、命を落としてしまう危険性も潜んでいます。日頃から、偶発性低体温症に対する正しい知識を身につけておくことが重要です。特に、冬山登山や水上スポーツなど、寒冷環境での活動を行う際には、十分な注意が必要です。また、もしもの事態に備え、体温を保持できるウェアや非常食、携帯カイロなどを準備しておくことも大切です。
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口から食べられない時でも:経腸栄養のススメ

- 経腸栄養とは経腸栄養とは、病気や怪我など様々な理由で口から十分な食事を摂ることが難しい方に対して、胃や腸などの消化管を利用して栄養を供給する方法です。口から食べ物を胃へ、そして腸へと送り込む自然な流れと同じように、栄養を体に届けることができます。経腸栄養は、大きく分けて2つの方法があります。一つは、口や鼻から細いチューブを挿入して、胃または腸まで栄養剤を直接送り込む方法です。もう一つは、口から摂取できるが、食事だけでは十分な栄養を摂ることが難しい場合に、栄養補助食品などを利用する方法です。経腸栄養は、体に負担が少なく、自然な形で栄養を摂取できるという点で、点滴などによる静脈栄養と比較して多くの利点があります。消化管の機能を維持することで、感染症などの合併症のリスクを減らす効果も期待できます。さらに、経腸栄養は、在宅医療においても重要な役割を担っています。自宅で安心して療養生活を送ることができるよう、医師や看護師、管理栄養士などの専門家チームが、患者さんの状態に合わせて栄養剤の種類や量、投与方法などを検討し、適切なサポートを行います。
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緊急医療の切り札:経皮的心肺補助(PCPS)とは?

- 経皮的心肺補助(PCPS)の概要経皮的心肺補助(PCPS)は、心臓や肺が正常に機能しなくなり、生命の危機に瀕している患者さんの血液循環と呼吸を補助する治療法です。心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割、肺は血液中に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する役割を担っていますが、心筋梗塞や重症肺炎などが原因でこれらの臓器が機能不全に陥ると、血液循環が悪化し、全身の組織に酸素が行き渡らなくなります。このような状態を放置すると、臓器障害が進行し、死に至る可能性もあります。PCPSは、開胸手術を行うことなく、足の付け根や首などの血管からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、心臓と肺の働きを補助します。カテーテルは、体外に設置された人工心臓ポンプと人工肺に接続され、血液を体外循環させます。人工心臓ポンプは、心臓の代わりとなって血液を全身に送り出し、人工肺は、血液中の二酸化炭素を取り除き、酸素を供給します。PCPSは、従来の開胸手術を必要とする心肺補助と比較して、身体への負担が小さく、短時間で開始できるという利点があります。そのため、緊急性の高い心臓や肺の疾患の治療に広く用いられるようになっています。
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痙攣:その原因と症状について

- 痙攣とは痙攣は、私たちの体を動かすための指令を出す中枢神経に異常が生じることで、自分の意思とは関係なく筋肉が収縮してしまう現象です。普段は私たちが体を動かそうとすると、脳から筋肉へ「動け」という指令が神経を通して伝えられます。しかし、痙攣が起こると、この指令系統が乱れてしまい、筋肉が勝手に収縮と弛緩を繰り返してしまうのです。痙攣が起こると、体が急に硬直したり、手足が突っ張ったり、逆に曲げ伸ばしを繰り返したりするといった症状が現れます。痙攣は、その影響範囲によって大きく二つに分けられます。全身の筋肉に症状が現れるものを「全身性痙攣」、体の一部分だけに症状が現れるものを「局所性痙攣」と呼びます。全身性痙攣は、意識を失って倒れてしまうこともあるため、周囲の人はそのような事態にも対応できるよう、正しい知識を身につけておくことが大切です。一方、局所性痙攣は、まぶたがピクピクする、指先が震えるなど、比較的軽度の症状で済む場合も多いです。しかし、頻繁に起こる場合は、重大な病気のサインである可能性も考えられます。いずれの場合も、自己判断せずに、医療機関を受診して適切な診断を受けるようにしましょう。
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生命を支える血液浄化法:その役割と種類

- 血液浄化法とは人間の体には、不要なものを体外へ排出する働きが備わっています。腎臓もその役割を担う臓器の一つで、血液をろ過し、老廃物や余分な水分を尿として排出しています。しかし、腎臓の機能が低下すると、体内に老廃物が蓄積し、様々な症状が現れます。血液浄化法は、低下した腎臓の働きを補い、血液を浄化する治療法です。血液浄化法には、大きく分けて「血液透析」と「血液濾過」の二つの方法があります。血液透析は、透析器と呼ばれる装置を用いて、血液と透析液という特殊な液体を、半透膜を介して接触させます。この時、濃度の差を利用して、血液中の老廃物や余分な水分を透析液側に移動させ、除去します。血液濾過は、血液を特殊なフィルターに通すことで、老廃物や余分な水分をろ過する方法です。体への負担が比較的少なく、体に優しい治療法として知られています。これらの治療法は、腎臓の機能が低下した腎不全の患者さんに行われるほか、重症の心臓病や糖尿病、一部のがんなどの治療にも用いられています。血液浄化法は、患者さんの生活の質を維持し、生命を prolong する上で、非常に重要な役割を担っています。
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生死を分ける胸部大動脈損傷:早期診断と治療の重要性

- 胸部大動脈損傷とは胸部大動脈損傷とは、心臓から身体に血液を送る太い血管である大動脈のうち、胸の部分にある胸部大動脈が損傷してしまう深刻な状態です。交通事故や高所からの転落など、強い衝撃が身体に加わることで、胸部大動脈に大きな力がかかり、引き裂かれたり、断裂したりすることがあります。特に損傷が多いのは大動脈峡部と呼ばれる部分です。ここは心臓から送り出された血液が最初に通る場所で、最も圧力が高いため、損傷を受けやすいとされています。胸部大動脈損傷は、大量出血を引き起こし、適切な処置が遅れると命に関わる危険性があります。そのため、早期発見と迅速な治療が極めて重要です。
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命を救う治療の裏側:虚血再灌流障害とその影響

私たちの体は、血液を通じて酸素や栄養を全身に届け、健康な状態を保っています。しかし、病気や怪我によって血流が滞ってしまうと、細胞は酸素不足に陥り、大きなダメージを受けてしまいます。これを虚血と呼びます。当然、一刻も早く血流を回復させることが重要となりますが、実は、血流の回復、つまり再び血液が流れ込むことによって、組織に新たな危機が訪れることがあるのです。これが「虚血再灌流障害」と呼ばれる現象です。再び血液が流れ込むことは、一見すると良いことのように思えます。しかし、虚血状態に陥った組織では、活性酸素と呼ばれる有害な物質が大量に発生します。そして、血流が回復した際に、この活性酸素が周囲の組織に拡散し、炎症を引き起こしたり、細胞を傷つけたりしてしまうのです。これが虚血再灌流障害の大きな原因の一つです。虚血再灌流障害は、心臓、脳、腎臓など、様々な臓器で起こる可能性があります。例えば、心筋梗塞や脳梗塞などの治療において、血流を回復させることは非常に重要ですが、同時に再灌流障害のリスクも考慮する必要があります。現在、虚血再灌流障害のメカニズムを解明し、そのリスクを軽減するための研究が進められています。近い将来、より安全で効果的な治療法が確立されることが期待されています。
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深く速い呼吸「クスマウル大呼吸」とは

- クスマウル大呼吸とはクスマウル大呼吸とは、まるで激しい運動をした後のように、呼吸が深く速くなる特徴的な呼吸パターンを指します。息を吸ったり吐いたりする動作が普段よりも大きくなり、周囲にもハアハアという呼吸音が聞こえるようになります。しかし、意識ははっきりとしていて、周囲の状況や会話の内容を理解することができます。この呼吸パターンは、体内の酸とアルカリのバランスが崩れ、酸性に傾く「代謝性アシドーシス」という状態になった際に、体がその状態を改善しようと起こす反応の一つです。代謝性アシドーシスは、糖尿病の合併症や腎臓の機能低下、激しい下痢などが原因で起こることがあります。クスマウル大呼吸は、体が酸性化するのを防ぐための緊急措置と言えるでしょう。深く速い呼吸によって、体内の二酸化炭素をより多く排出することで、酸性化する血液を中和しようと体が働いているのです。しかし、これはあくまで一時的な対処法に過ぎません。クスマウル大呼吸が見られる場合は、酸性化を引き起こしている根本的な原因を突き止め、治療することが重要です。放置すると意識障害や昏睡状態に陥る可能性もあり、命に関わる危険な状態となることもあります。
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逆比換気法:重症呼吸不全の切り札

私たちは普段、無意識に呼吸をしていますが、息を吸う時間と吐く時間は同じではありません。一般的には、息を吸う時間に対して、吐く時間は約2倍と言われています。これは、機械を使って呼吸を助ける人工呼吸の場合でも同様で、多くの場合はこの自然な呼吸のリズムを参考に換気が行われます。しかし、肺の機能が著しく低下し、呼吸困難に陥っている患者さんに対しては、息を吸う時間と吐く時間の比率を逆転させた「逆比換気」と呼ばれる方法が用いられることがあります。これは、通常の呼吸とは逆に、息を吸う時間を長く、吐く時間を短くすることで、肺の中に新鮮な空気をより多く取り込み、血液中の酸素濃度を高めることを目的としています。逆比換気は、重症の肺炎や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの治療において、肺の機能改善効果が期待されています。しかし、一方で、肺への負担増加や血圧低下などのリスクも伴うため、患者さんの状態を慎重に観察しながら、適切な設定で実施する必要があります。
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命を守る!急性冠症候群の基礎知識

- 急性冠症候群とは?心臓は、体中に血液を送り出すために休むことなく働き続けています。この重要な臓器に栄養豊富な血液を届けているのが、心臓を囲むように張り巡らされた冠動脈です。急性冠症候群は、この冠動脈に突然の変化が起こることで発症する、命に関わる可能性のある危険な状態です。1992年にファスター氏らによって提唱されたこの概念は、簡単に言うと、心臓の血管が急に詰まったり狭まったりすることで、心臓の筋肉に十分な血液が行き渡らなくなる病気です。心臓の筋肉は、血液によって酸素や栄養を供給されています。しかし、急性冠症候群になると、冠動脈の閉塞や狭窄によって心臓への血流が滞り、心臓の筋肉が酸欠状態に陥ってしまいます。これが続くと、心臓の筋肉の一部が壊死してしまう可能性があり、これが一般的に心臓発作と呼ばれる状態です。急性冠症候群は、決して他人事ではありません。心臓発作の主な原因の一つとなっており、一刻も早い医療処置が必要な緊急事態です。そのため、急性冠症候群について正しく理解し、適切な対処法を身につけておくことが重要です。
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命を脅かす病気:急性呼吸促迫症候群とは

- 急性呼吸促迫症候群とは急性呼吸促迫症候群(ARDS)は、肺に大量の水分がたまり、血液中の酸素が不足してしまう、命に関わる深刻な病気です。私たちの肺は、無数の小さな空気の袋、「肺胞」でできています。ARDSを発症すると、この肺胞が炎症によって傷つけられ、十分に機能しなくなります。その結果、血液中に十分な酸素を取り込むことができなくなり、呼吸困難に陥ります。ARDSは、肺炎や敗血症などの特定の病気にかかった後、または重度の怪我をした後に発症することがあります。ARDSは、集中治療室での治療が必要となる重篤な病気であり、場合によっては人工呼吸器による治療が必要となることもあります。ARDSの治療には、酸素吸入や人工呼吸器による呼吸の補助、炎症を抑える薬剤の投与などがあります。また、ARDSの原因となる基礎疾患の治療も重要です。ARDSは重篤な病気ですが、早期に発見し適切な治療を行えば、回復の可能性は高まります。
その他

体からのサイン:急性期蛋白質を理解する

私たちは日常生活の中で、ちょっとした切り傷や擦り傷、あるいは風邪などの感染症にかかることがあります。このようなとき、私たちの体は自然治癒力を発揮し、傷ついた部分を修復したり、体内に入ってきた病原菌と戦ったりしようとします。この体の反応こそが炎症と呼ばれるものです。炎症が起こると、患部は赤く腫れ上がり、熱や痛みを感じることがあります。これは、体が治癒のために様々な物質を送り込んでいるサインです。その中には、急性期蛋白質と呼ばれる一群の蛋白質も含まれます。急性期蛋白質は、肝臓で作られ、炎症が起こると血液中に放出されるという特徴があります。医療現場では、この急性期蛋白質を測定することで、体内で炎症が起きているかどうか、そしてどの程度の炎症が起こっているのかを調べることができます。炎症の指標となる急性期蛋白質には、CRPやSAAなど、いくつかの種類があります。これらの検査値を見ることで、病気の診断や治療効果の判定に役立てることができます。また、炎症が長引くと、体に負担がかかり、様々な病気を引き起こす可能性があります。急性期蛋白質の検査は、早期発見・早期治療にも繋がる重要な検査と言えます。
その他

命に関わる緊急事態!急性大動脈解離とは?

私たちの体の中には、心臓から送り出された血液を全身に運ぶ、非常に重要な役割を担う血管があります。それが大動脈です。まるで体中に張り巡らされた高速道路のように、大動脈は酸素を豊富に含んだ血液を体の隅々まで届け、私たちが生きていく上で欠かせない働きをしています。しかし、この重要な大動脈に、ある日突然異変が起こることがあります。それが急性大動脈解離と呼ばれる病気です。この病気は、大動脈の壁に亀裂が入り、その亀裂から血液が血管壁の中に流れ込んでしまうことで起こります。まるで高速道路に亀裂が入り、そこから車が入り込んでしまうようなもので、大変危険な状態です。急性大動脈解離は、突然激しい痛みに襲われることが多く、一刻も早く適切な処置を受けなければ命に関わることもあります。日頃から動脈硬化などのリスク因子を減らす生活を心がけ、万が一、突然の胸や背中の痛みに襲われた場合には、ためらわずにすぐに医療機関を受診することが重要です。
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命を脅かす危険な呼吸障害:急性肺傷害 (ALI) とは

- 急性肺傷害 (ALI) とは急性肺傷害 (ALI) は、肺に急激に炎症が起こり、呼吸が困難になる深刻な病気です。交通事故や大手術など、体に大きな負担がかかった後、12時間から48時間以内に症状が現れるのが特徴です。健康な肺は、たくさんの小さな空気の袋でできており、そこで血液中に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出しています。しかし、ALIになると、この空気の袋に水がたまり、炎症を起こしてしまいます。そのため、十分な酸素を血液に取り込めなくなり、息苦しさや呼吸困難といった症状が現れるのです。ALIの診断には、胸部X線写真で両方の肺に影が見られること、そして血液中の酸素濃度が著しく低下していることが重要となります。これは、肺の重要な機能である、血液中に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する働きが、ALIによって著しく阻害されているためです。ALIは命に関わる病気であり、早期の診断と適切な治療が重要となります。もし、体に大きな負担がかかった後、息苦しさや呼吸困難といった症状が現れた場合には、すぐに医療機関を受診してください。