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大動脈瘤の低侵襲治療:ステントグラフト内挿術とは

- 大動脈瘤の新たな治療法大動脈瘤は、命に関わる危険性を持つ病気です。心臓から血液を送り出す重要な血管である大動脈の一部が、風船のように膨らんでしまう病気で、破裂すると命に関わることもあるため、早期発見と適切な治療が重要です。従来、大動脈瘤の治療は、開腹手術によって動脈瘤を切除し、人工血管に入れ替える方法が一般的でした。しかし、この手術は患者さんへの負担が大きく、高齢者や合併症を持つ患者さんにとっては、手術のリスクが高いことが課題でした。近年、このような課題を克服する新たな治療法として、ステントグラフト内挿術が注目されています。ステントグラフト内挿術は、足の付け根の血管からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、動脈瘤のある部分までステントグラフトと呼ばれる人工血管を留置する治療法です。ステントグラフト内挿術は、開腹手術と比較して、身体への負担が少なく、入院期間も短いといった利点があります。そのため、高齢者や合併症を持つ患者さんにとっても、新たな治療の選択肢として期待されています。しかし、ステントグラフト内挿術は、すべての大動脈瘤に適応できるわけではありません。血管の状態や動脈瘤の大きさ、位置などによって、治療法を検討する必要があります。大動脈瘤は自覚症状が出にくい病気ですが、早期発見できれば、より身体への負担が少ない治療を選択できる可能性があります。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
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進化する医療:代用血液の可能性と未来

医療現場において、輸血は欠かせない治療法のひとつです。怪我や手術などで大量の血液を失った場合、失われた血液を補うことで命を救うことができます。しかし、輸血には解決すべき課題も存在します。まず、輸血に必要な血液は、健康な人からの献血によって賄われています。しかし、少子高齢化の影響もあり、献血協力者は年々減少しており、常に血液不足という深刻な問題を抱えています。さらに、輸血には感染症のリスクも伴います。血液製剤は厳密な検査を経て提供されていますが、未知のウイルスなどによる感染の可能性を完全に排除することはできません。また、血液型が一致する血液を輸血する必要があり、血液型によっては、より深刻な血液不足に直面しています。このような輸血に伴う様々な問題を解決するために、近年注目を集めているのが「代用血液」です。これは、人間の血液の代わりに使用できる人工的に作られた血液製剤のことです。代用血液には、大きく分けて二つのタイプがあります。一つは、酸素を運搬する機能に特化した「赤血球代替物」です。もう一つは、血液の量を増やし、血圧を維持する働きを持つ「血漿増量剤」です。これらの代用血液は、血液型や感染症のリスクを考慮する必要がなく、長期保存も可能なため、血液不足の解消や安全性の向上といったメリットが期待されています。現在、様々な研究機関や企業が、より安全で効果的な代用血液の開発に取り組んでおり、近い将来、輸血に代わる新たな選択肢として、医療現場に革新をもたらす可能性を秘めています。
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知っておきたい呼吸の危険:死腔様効果とは?

私たちは、生きていくために絶えず呼吸をしています。息を吸うことで体の中に酸素を取り込み、息を吐くことで体の中に溜まった二酸化炭素を排出しています。この一連の呼吸運動によって、体の中と外の空気の間でガス交換が行われ、生命活動に必要な酸素が体の隅々まで届けられているのです。しかし、病気や怪我など、様々な原因によってこのガス交換がうまくいかなくなることがあります。これを呼吸不全と呼びます。呼吸不全になると、体の中に十分な酸素を取り込めなくなり、同時に二酸化炭素をうまく排出できなくなります。その結果、息苦しさを感じたり、意識がもうろうとしたりするなど、様々な症状が現れます。呼吸不全を引き起こす原因は、肺炎や気管支喘息などの呼吸器疾患だけでなく、心臓病や糖尿病、また、事故による怪我など多岐に渡ります。原因が何であれ、呼吸不全は命に関わることもあるため、迅速な診断と適切な治療が必要となります。日頃から、呼吸器の健康に気を配り、呼吸不全の予防に努めることが大切です。
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緊急事態!心嚢気腫とは?

- 心臓を圧迫する危険な状態、心嚢気腫とは?心臓は、私たちの体全体に血液を送るために休むことなく動き続けている重要な臓器です。この大切な心臓は、「心嚢」と呼ばれる薄い袋状の組織に包まれています。通常、この心嚢の中には少量の液体があり、心臓がスムーズに動くための潤滑油の役割を果たしています。しかし、何らかの原因でこの心嚢の中に空気が入り込んでしまうことがあります。これが「心嚢気腫」と呼ばれる状態です。心嚢気腫になると、心臓を取り巻く空間の圧力が異常に高まります。この圧力は、まるで心臓を風船のように外側から締め付けるように作用し、心臓の動きを阻害してしまいます。その結果、心臓は十分な量の血液を送り出すことができなくなり、息切れや胸の痛み、意識障害などの深刻な症状が現れることがあります。心嚢気腫を引き起こす原因は様々です。例えば、肺に穴が開いてしまう気胸や、胸部に強い衝撃を受ける外傷、心臓自身に穴が開いてしまう心破裂などが挙げられます。また、細菌やウイルスによる感染症が原因となる場合もあります。心嚢気腫は命に関わる危険性もあるため、早期発見と適切な治療が非常に重要です。もしも、息苦しさや胸の痛み、脈の乱れなど、普段と異なる症状を感じたら、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。早期発見と適切な治療によって、心臓への負担を軽減し、健康な状態を取り戻せる可能性が高まります。
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活性酸素消去酵素:スーパーオキサイドディスムターゼ

- 活性酸素とスーパーオキサイドディスムターゼ私たちは、呼吸によって体内に酸素を取り込み、生命活動のエネルギーを得ています。このエネルギーを生み出す過程で、酸素の一部は「活性酸素」と呼ばれる物質に変化します。活性酸素は、まるで錆が生じるように、細胞を傷つける作用があります。しかし、ただ有害な物質というわけではありません。活性酸素は、体内に侵入してきた細菌やウイルスを攻撃し、排除する免疫機能においても重要な役割を担っています。健康な状態であれば、私たちの体内では活性酸素の発生と消去がバランスよく保たれており、問題なく過ごせているのです。しかし、ストレスや喫煙、紫外線、大気汚染などの影響によって活性酸素が過剰に発生してしまうと、細胞や組織への攻撃が激しくなり、様々な不調を引き起こすと考えられています。この状態は「酸化ストレス」と呼ばれ、老化の促進や、がん、動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病、 Alzheimer型認知症など、様々な病気との関連が指摘されています。活性酸素にはいくつか種類があり、その中でも「スーパーオキサイド」と呼ばれる活性酸素を分解するのが、「スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)」という酵素です。SODは、スーパーオキサイドを、毒性の低い過酸化水素と酸素に変換することで、細胞を酸化ストレスから守る働きをしています。過酸化水素は、その後別の酵素によって無害な水と酸素に分解されます。このように、SODは私たちの体にとって非常に重要な役割を担っており、健康を維持するために欠かせない酵素と言えるでしょう。
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持続的血液濾過透析法:生命を支える高度な血液浄化技術

- 持続的血液濾過透析法とは持続的血液濾過透析法(CHDF)は、従来の血液透析とは異なり、24時間以上という長時間にわたり、ゆっくりと血液を浄化する治療法です。この治療法は、まるで体の中に小さな腎臓があるかのように、休みなく血液を浄化し続けることができます。CHDFでは、血液を体外へ取り出し、人工的に作った特殊な膜に通します。この膜には、目に見えないほど小さな穴が無数に開いており、血液中の老廃物や余分な水分だけを通過させることができます。不要なものは取り除かれ、浄化された血液は再び体内に戻ります。CHDFの最大の特徴は、従来の血液透析に比べて、体に優しい治療だということです。従来の方法では、短時間で集中的に血液を浄化するため、体に負担がかかってしまうことがありました。しかし、CHDFは長時間かけてゆっくりと浄化を行うため、体の負担を軽減することができます。このため、心臓や血管の状態が不安定な方や、重症の病気で体力が低下している方でも、安心して治療を受けることができます。
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脊髄損傷:その原因と対策

- 脊髄損傷とは私たちの体の中心を走る背骨、その中にある神経の束である脊髄は、脳からの指令を全身に伝え、また、全身からの感覚を脳に伝えるという重要な役割を担っています。この脊髄が、外部からの強い衝撃によって傷つくことで、様々な機能に障害が生じる病気を脊髄損傷と呼びます。脊髄損傷を引き起こす原因として最も多いのは交通事故です。自動車やバイクの衝突事故など、体に強い衝撃が加わることで脊髄が損傷を受けます。また、高所からの転落や落下物による事故、スポーツ中の事故なども脊髄損傷の原因となりえます。 脊髄が損傷すると、その程度や部位によって、手足の麻痺、感覚の麻痺、排泄障害、体温調節機能の障害など、様々な症状が現れます。 重度の場合は、生涯にわたっての後遺症が残る可能性もあり、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。脊髄損傷は、決して他人事ではありません。交通事故や転倒など、日常生活における危険を認識し、予防に努めることが大切です。また、スポーツを行う際には、事前に準備運動をしっかり行い、安全な環境で行うように心がけましょう。
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エックス線の基礎知識:防災と防犯への応用

- エックス線とはエックス線は、太陽光や照明の光と同じく電磁波の一種です。しかし、私たちの目で捉えることのできる光と比べて、波長が非常に短いという特徴を持っています。この波長の短さこそが、エックス線を特別な存在にしているのです。19世紀末、ドイツの物理学者レントゲンは、真空管を使った実験中に、目に見えない新しい光を発見しました。当時はその正体が解明されていなかったため、未知を表す「X」の文字を用いて「エックス線」と名付けられました。エックス線の最大の特徴は、物質を透過する能力が高いことです。これは、波長が短いほど物質を構成する原子間の隙間を通り抜けやすくなるためです。この性質を利用すると、私たちの体はもとより、鞄の中身や、建物内部まで透視することができます。現在では、医療現場における画像診断でお馴染みです。骨などの硬い組織はエックス線をあまり通さないため、レントゲン写真に白く映し出されます。一方、筋肉などの軟組織はエックス線を比較的通すため、黒っぽく映ります。この濃淡の違いを利用して、骨折や腫瘍などの診断に役立てられています。また、エックス線は医療分野以外にも、空港の手荷物検査や、工場における製品の非破壊検査など、幅広い分野で活用されています。私たちの生活の安全と安心を支える、なくてはならない技術と言えるでしょう。
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遷延性意識障害:知っておきたいこと

- 遷延性意識障害とは遷延性意識障害とは、脳に起きた病気や怪我などが原因で、長い間意識が戻らない状態のことを指します。具体的には、3か月以上経っても、自力で体を動かしたり、食事を摂ったり、トイレに行ったりすることができない状態をいいます。また、話したり、周囲の人とコミュニケーションを取ったりすることも困難になります。さらに、視線を動かして周囲のものを見たり、目で物を追ったりすることもできなくなります。遷延性意識障害は、意識の回復が難しい状態とされています。しかし、患者さんによって症状や回復の過程は異なり、中には少しずつ意識が回復していく場合もあります。遷延性意識障害の患者さんに対しては、医療ケアやリハビリテーションなど、専門的なサポートが不可欠となります。また、ご家族の方々にとっては、患者さんの状態を理解し、長い期間にわたる介護やサポートが必要となるため、精神的な負担も大きくなってしまうことがあります。遷延性意識障害は、患者さん本人だけでなく、ご家族にとっても大変辛い状況ではありますが、諦めずに、希望を持って、患者さんを支えていくことが大切です。
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持続動注療法:新しい治療の選択肢

- 持続動注療法とは持続動注療法とは、患部に直接、継続的に薬を送り込む治療法です。従来の治療では、薬は口から服用したり、血管に注射したりする方法が一般的でした。しかし、これらの方法では、薬が全身に広がってしまい、目的とする患部以外にも作用してしまうことがあります。一方、持続動注療法では、カテーテルと呼ばれる細い管を血管内に留置し、その先端を治療が必要な血管の近くに配置します。そして、持続注入ポンプを用いて、カテーテルを通じて薬を低濃度で継続的に患部に直接送り込みます。この方法により、必要な部位に集中的に薬剤を届けることができるため、効果を高めつつ、副作用を抑える効果が期待できます。また、全身への影響が少なくなるという利点もあります。持続動注療法は、がん治療をはじめ、様々な疾患の治療に用いられています。
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命に関わる臓器の緊急事態:穿孔とは?

私たちの体内には、食べ物を消化したり、血液を循環させたりするために、管状の臓器が数多く存在します。口から肛門までは消化管と呼ばれ、栄養を吸収する大切な役割を担っています。また、心臓から全身へ、そして全身から心臓へと血液を送り届ける血管も、同じく管状の臓器です。これらの臓器は、私たちの生命維持に欠かせないものです。しかし、このような体内の管に、病気や怪我など様々な原因で穴が開いてしまうことがあります。これが「穿孔」と呼ばれる状態です。穿孔が起こると、本来、管の中にあるべきものが漏れ出てしまい、周囲の組織に炎症を引き起こしたり、臓器の機能を低下させたりすることがあります。例えば、胃や腸に穿孔が起こると、消化液や内容物が腹腔内に漏れ出し、激しい腹痛や発熱を引き起こします。また、血管に穿孔が起こると、内出血を起こし、生命に関わる危険な状態となることもあります。穿孔は、早期発見・早期治療が非常に重要です。穿孔の症状は、その原因や発生部位によって様々ですが、激しい痛みや発熱、吐き気、嘔吐などが見られる場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
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見えない脅威:縦隔気腫とその対処法

- 胸部に空気が? 縦隔気腫とは縦隔気腫とは、呼吸によって肺に吸い込まれた空気が、本来あるべきでない胸腔内の縦隔という場所に漏れ出てしまう病気です。縦隔は、心臓や大動脈、大静脈といった太い血管、気管や食道など、生命維持に欠かせない重要な臓器が集まっている場所です。ここに空気が入り込むことで、様々な症状が現れることがあります。縦隔気腫は、胸のレントゲン写真やCT検査で偶然見つかることが多くあります。自覚症状がない場合も多いのですが、症状としては、胸の痛み、呼吸困難、声がれ、首や顔の腫れなどがみられることがあります。原因としては、肺の病気、例えば気管支喘息の悪化や肺炎、肺気腫などが挙げられます。また、激しい咳や嘔吐、重い物を持ち上げる動作など、急激な胸腔内圧の上昇がきっかけとなる場合もあります。交通事故などによる胸部への強い衝撃や医療行為中の合併症によって起こることもあります。多くの場合、縦隔気腫自体は命に関わる病気ではありません。安静にしていれば自然に治ることがほとんどです。しかし、原因や症状によっては、酸素吸入や胸腔ドレナージなどの治療が必要になることもあります。また、まれに、心臓や肺、食道などの臓器が圧迫されて、重篤な合併症を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。気になる症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
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災害医療のジレンマ:オーバートリアージとは?

- 災害医療におけるトリアージ大規模な地震や広範囲に被害をもたらすような事故が発生すると、負傷者の数が病院や診療所の対応能力をはるかに超えてしまうことがあります。このような、医療現場が極度の緊張状態におかれる状況において、限られた医療スタッフや医薬品、資材を最大限に活用し、一人でも多くの命を救うためには、的確な状況判断と迅速な行動が求められます。この、極めて重要かつ困難な役割を担うのがトリアージです。トリアージとは、刻一刻と変化する状況の中で、負傷者の容態の緊急度に応じて治療の優先順位を決定するプロセスを指します。トリアージは、ただ単に負傷の程度だけで判断するのではなく、現場の状況、負傷者の数、そして利用可能な医療資源などを総合的に考慮しながら、冷静かつ的確に判断を下していく必要があり、非常に高度な知識と技術、そして冷静さを求められます。 そのため、トリアージは、災害医療において非常に重要な役割を担っていると言えるでしょう。
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緊急事態!縦隔偏位とその影響

私たちの胸の中央には、肋骨、胸骨、そして背骨の一部である胸椎によって守られた空間である胸郭が存在します。この胸郭の中には、生命維持に欠かせない心臓や肺などの重要な臓器が収められています。心臓と肺に挟まれた、胸郭の中央部分を縦隔と呼びます。縦隔には、心臓と肺以外にも、大動脈や肺動脈といった太い血管、気管や気管支といった空気の通り道、食道、リンパ節など、多くの重要な器官が存在しています。通常、左右の肺はほぼ同じ大きさで、縦隔を挟んで左右対称に位置しています。このバランスによって、縦隔は胸郭の中央に安定して存在することができます。しかし、肺や胸膜(肺を包む膜)に病気があると、このバランスが崩れ、縦隔が本来の位置からずれてしまうことがあります。この状態を縦隔偏位と呼びます。縦隔偏位を引き起こす病気には、気胸(肺に穴が開いて空気が漏れる病気)、胸水(胸の中に水が溜まる病気)、肺炎、肺がん、 pneumothorax などがあります。縦隔が大きく偏位すると、心臓や大血管、気管などが圧迫され、呼吸困難や血圧低下などの症状が現れることがあります。縦隔偏位は、胸部レントゲン写真やCT検査で確認することができます。
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命に関わることもある重症急性膵炎

- 重症急性膵炎とは私たちの体の中にある、食べ物を消化するための液(膵液)と血糖値を調節するホルモンを作る臓器、膵臓。この膵臓に急性の炎症が起こり、出血や組織の壊死を引き起こす病気を急性膵炎と言います。急性膵炎の中でも、特に重症化したものが-重症急性膵炎-です。重症急性膵炎は、単に膵臓だけに留まらず、生命維持に重要な役割を担う他の臓器にも深刻な影響を及ぼします。例えば、呼吸を司る肺や、血液をろ過して老廃物を排泄する腎臓、代謝や解毒を行う肝臓などが、重症急性膵炎の影響を受ける可能性があります。これらの臓器が正常に機能しなくなることで、命に関わるような状態に陥ってしまう危険性もあるのです。さらに、重症急性膵炎は、重篤な感染症を併発するリスクも孕んでいます。例えば、膵臓に膿瘍(うみ)が溜まるなどして、体の抵抗力が弱っているところに、さらに細菌感染などが重なってしまうと、治療がより困難になる可能性があります。このように、重症急性膵炎は命に関わる危険性も秘めた病気であるため、早期発見と適切な治療が非常に重要になります。
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浸透圧利尿:体からの水分の排出について

- 浸透圧利尿とは私たちの体には、不要になったものや余分な水分を尿として体の外に出す仕組みが備わっています。この大切な役割を担っているのが腎臓です。腎臓は、血液をろ過して、老廃物や余分な水分を尿として膀胱へ送り出しています。このとき、腎臓は体の状態に合わせて、必要な水分や電解質を再び血液中に取り込む再吸収という働きも同時に行っています。この巧みな働きによって、体内の水分の量や電解質のバランスは常に一定に保たれているのです。しかし、血液中に浸透圧物質と呼ばれるものが過剰に存在すると、腎臓での水分の再吸収がうまくいかなくなってしまうことがあります。浸透圧物質には、ブドウ糖や尿素など様々なものがありますが、腎臓が再吸収する水の量よりも多くの浸透圧物質が尿に溶け込むことで、水分は尿中に留まりやすくなってしまいます。その結果、尿の量が増えてしまう現象を浸透圧利尿と呼びます。浸透圧利尿は、糖尿病などの病気によって起こることもあれば、点滴などによって人工的に引き起こされることもあります。
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持続的気道陽圧法:その役割と利点

- 持続的気道陽圧法とは持続的気道陽圧法(CPAP)は、呼吸に問題を抱える方を助けるための治療法です。睡眠中に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」の治療法として特に知られていますが、その他多くの呼吸器疾患にも効果があります。この治療法では、鼻に装着したマスクを通して、空気を送り込む機械を使用します。送風機は、常に一定の圧力で空気を送り込み続けることで、気道を広げ、呼吸を楽にする効果があります。睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、睡眠中にのどの奥にある気道が狭くなったり、塞がってしまったりすることで、呼吸が苦しくなります。CPAPはこの気道が狭くなる、あるいは閉塞してしまうことを防ぎ、スムーズな呼吸を助ける役割を果たします。CPAPは、患者さん一人ひとりの症状に合わせて、適切な圧力で空気を送り込むことが重要です。そのため、医師の診断のもと、適切な圧力を設定した専用の機械を使用するようにしてください。
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緊急事態における循環亢進:敗血症ショックへの理解

- 循環動態の基礎私たちは、心臓が絶えず血液を送り出すことで、生きていくために必要な酸素や栄養を体の隅々まで届けています。この血液循環の仕組み全体を循環動態と呼び、私たちの生命維持に欠かせないものです。循環動態を理解する上で重要な指標となるのが、心臓が1分間にどれだけの血液を送り出すかを示す「心拍出量」と、血管の縮み具合を表す「末梢血管抵抗」です。心臓が力強く収縮すると、一度に多くの血液を送り出すことができます。このため、心拍出量は増加します。一方、血管が収縮すると血液が流れにくくなるため、末梢血管抵抗は高くなります。逆に、血管が広がると血液は流れやすくなるため、末梢血管抵抗は低くなります。このように、心拍出量と末梢血管抵抗は、お互いに影響し合いながら循環動態を調節しています。このバランスが崩れると、血圧が変動したり、臓器への血液供給が滞ったりするなど、様々な体の不調につながる可能性があります。
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命を守る!知っておきたいショックの知識

- ショックとはショックとは、生命の維持に欠かせない血液循環が悪化し、身体の組織や臓器に必要な酸素や栄養が行き渡らなくなる状態を指します。放置すると、臓器の機能不全に陥り、死に至ることもある危険な状態です。私たちの身体は、心臓のポンプ機能によって常に血液を循環させています。この血液は、酸素や栄養を全身の細胞に運び、同時に老廃物を回収するという重要な役割を担っています。 しかし、様々な原因で心臓の機能が低下したり、血管が拡張したり、血液量が減少したりすると、血液循環が悪化してしまいます。血液循環が悪くなると、身体は酸素不足に陥ります。初期症状としては、動悸や息切れ、冷や汗、顔面蒼白などが見られます。さらに悪化すると、意識がもうろうとしたり、脈拍が弱くなったり、尿量が減少したりします。 ショックの状態は一刻を争います。少しでも異常を感じたら、ためらわずに救急車を呼ぶことが大切です。
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除脳硬直:その特徴とメカニズム

- 定義-# 定義除脳硬直とは、脳幹の中でも中脳や橋と呼ばれる部分が損傷を受けることで、手足が突っ張ったように伸びてしまう状態を指します。脳幹は、生命維持に不可欠な機能を司る重要な部位です。特に中脳や橋は、意識や運動、呼吸などをコントロールする神経が集まっている場所です。これらの部位が損傷を受けると、脳から手足への運動指令がうまく伝わらなくなり、手足が不自然に伸びた状態になってしまいます。これが除脳硬直です。除脳硬直は、意識障害を伴う重篤な脳損傷の兆候であることが多く、交通事故や頭部外傷、脳卒中などで起こる可能性があります。除脳硬直が見られた場合は、一刻も早く医療機関を受診する必要があります。迅速な診断と治療によって、後遺症のリスクを減らすことができる可能性があります。
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心筋マーカー:心臓を守るための重要な指標

心臓は、私たちの体全体に血液を送り出す、非常に重要な臓器です。この心臓に異常が起こると、生命に関わる重大な事態を引き起こす可能性があります。そのため、心臓の状態を早期に把握し、適切な治療を行うことが非常に重要です。心臓の状態を知るための重要な手がかりとなるのが、血液検査で測定される「心筋マーカー」です。これは、心臓の細胞が傷ついたり、負担がかかったりした際に血液中に流れ出す、いわば心臓からの信号です。心筋マーカーには、いくつかの種類があり、それぞれが異なる情報を伝えてくれます。例えば、「心筋壊死・障害マーカー」は、心臓の細胞が壊れてしまった時に増加するマーカーです。これは、急性心筋梗塞のように、心臓の筋肉が壊死してしまうような緊急性の高い病態を診断する際に特に役立ちます。一方、「心筋ストレスマーカー」は、心臓に過度な負担がかかった際に増加するマーカーです。これは、心不全のように、心臓が弱ってしまい十分に血液を送り出せなくなっている状態を把握する際に役立ちます。その他にも、動脈硬化が進んで血管が不安定になっている状態や、心臓に炎症が起こっている状態を把握するためのマーカーなど、様々な種類があります。このように、心筋マーカーは、心臓病の早期発見や、病状の進行度、適切な治療方針の決定に欠かせない、非常に重要な指標なのです。
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知っておきたい病気:神経因性膀胱

- 神経因性膀胱とは神経因性膀胱とは、脳からの指令を膀胱に伝える神経に障害が起こることで、尿の蓄積と排出がうまくコントロールできなくなる病気です。通常、膀胱に尿がたまると、その情報が神経を通して脳に伝えられます。脳は「今、排尿しても大丈夫か」を判断し、膀胱や尿道周辺の筋肉に指令を出して排尿をコントロールしています。しかし、神経因性膀胱では、この脳と膀胱をつなぐ神経経路が病気や怪我などによって損傷を受けてしまいます。その結果、脳からの指令が膀胱にうまく伝わらず、尿をためたり出したりすることが困難になります。神経因性膀胱を引き起こす原因は様々ですが、代表的なものとしては交通事故による脊髄損傷や、脳卒中、多発性硬化症、パーキンソン病などの神経疾患、糖尿病による神経障害、骨盤内手術の影響などが挙げられます。症状としては、頻尿、尿意切迫感、夜間頻尿、尿失禁、残尿感、尿閉などがみられます。神経因性膀胱は生活の質を著しく低下させる病気ですが、適切な治療やケアを行うことで症状を改善し、快適な日常生活を送ることは可能です。
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運動中の思わぬ危険!コンパートメント症候群とは?

私たちの体は、無数の筋肉によって支えられています。特に腕や脚には多くの筋肉が集まっており、複雑な動きを可能にしています。これらの筋肉は、ただ闇雲に配置されているわけではありません。それぞれの筋肉のグループは、骨や筋膜といった組織によって包み込まれ、まるで部屋のように区切られています。この筋肉を包む部屋のような区画のことを「コンパートメント」と呼びます。コンパートメントは、筋肉を保護する役割を担っています。外部からの衝撃を吸収し、筋肉へのダメージを軽減するクッションのような役割を果たします。また、筋肉が働く際に、その力を効率的に伝える役割も担っています。それぞれのコンパートメントの中には、筋肉以外にも、血管や神経が通っています。血管は筋肉に栄養や酸素を供給し、神経は脳からの指令を筋肉に伝達することで、スムーズな動きを可能にしています。このように、コンパートメントは、私たちの体が正常に機能するために重要な役割を担っています。
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命を脅かす心筋梗塞の合併症:心室瘤

- 心臓にできる瘤、心室瘤とは?心臓は、全身に血液を送り出すために休むことなく働き続ける、私たちにとって欠かせない臓器です。この重要な心臓に、瘤ができてしまうことがあります。それが「心室瘤」と呼ばれる病気です。心臓は、上下左右に4つの部屋に分かれており、それぞれがポンプの役割を果たして血液を循環させています。心室瘤は、この部屋の壁の一部が薄くなってしまい、風船のように膨らんでしまう病気です。心室瘤は、心臓のポンプ機能を低下させてしまうため、様々な症状が現れます。 動悸や息切れ、疲れやすくなるなどの症状が出ることがあります。また、心室瘤ができた部分に血液が滞ってしまうことで、血栓と呼ばれる血の塊ができてしまうことがあります。この血栓が血液の流れに乗って脳に運ばれてしまうと、脳梗塞を引き起こす危険性もあります。心室瘤の原因として最も多いのは、心筋梗塞です。 心筋梗塞は、心臓に栄養を送る血管である冠動脈が詰まってしまい、心筋に酸素や栄養が行き渡らなくなる病気です。心筋梗塞になると、心筋の一部が壊死してしまい、その部分が薄くなってしまうことで心室瘤が形成されることがあります。心室瘤は命に関わる病気であるため、早期発見と適切な治療が重要となります。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。