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ARDS治療における肺保護戦略:肺への負担を軽減する

- はじめ呼吸をすることは、私たちにとってごく自然な行為であり、普段は意識することすらありません。しかし、肺に重い病気を抱えた時、その自然な行為は困難を極めるものとなります。 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、まさにそのような病の一つです。肺に激しい炎症が起こり、呼吸が苦しくなるだけでなく、血液中の酸素濃度が低下し、生命を脅かす危険性も高い病気です。ARDSの治療には、人工呼吸器を用いて肺を休ませ、呼吸を助けることが不可欠です。人工呼吸器は、患者さんの代わりに呼吸をサポートする重要な役割を担いますが、その設定や使い方によっては、逆に肺に負担をかけてしまい、症状を悪化させてしまう可能性もはらんでいます。そこで近年、注目されているのが「肺保護戦略」という考え方です。これは、人工呼吸器を使用する際に、肺への負担をできる限り減らし、肺自身の回復力を高めることを目的とした呼吸管理法です。具体的には、人工呼吸器の設定を細かく調整し、肺にかかる圧力や体積を適切に保つことで、肺への負担を軽減します。 また、患者さんの状態に合わせて体位を変えたり、薬物療法を併用するなど、様々な方法を組み合わせることで、より効果的な肺保護を目指します。
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非侵襲的陽圧換気法:やさしい呼吸管理

- 非侵襲的陽圧換気法とは非侵襲的陽圧換気法(NIPPV)は、呼吸が苦しい患者さんの肺に、外から空気を送り込むことで呼吸を助ける治療法です。従来の人工呼吸器は、口や鼻から気管に管を入れる必要がありました。しかし、NIPPVでは、鼻や口を覆うマスクを装着するだけで治療が可能です。そのため、気管挿管に伴う痛みや不快感、合併症のリスクを回避できます。NIPPVは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や心不全、睡眠時無呼吸症候群など、様々な呼吸器疾患の治療に用いられます。特に、在宅医療においても重要な役割を担っており、患者さんが自宅でより快適に過ごせるようサポートします。NIPPVは、患者さんの負担を軽減できる一方、適切なマスクの選択や装着、空気圧の設定などが重要となります。そのため、医師や呼吸療法士などの専門家による適切な指導と管理が必要です。
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運動機能と呼吸困難からみた呼吸器疾患の重症度

- ヒュー・ジョーンズの基準とはヒュー・ジョーンズの基準は、呼吸器の病気を持つ方が、どのくらい息苦しさを感じているかを、体を動かせる程度と結びつけて評価する指標です。この基準は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった病気を持つ方が、日常生活でどの程度活動できるかを把握する際に役立ちます。具体的には、息が切れないで歩ける距離や、階段の上り下りがどの程度可能な状態かといった、具体的な活動レベルを基準に、I度からV度までの五段階で評価します。* I度息苦しさを感じることなく、日常生活を送ることができます。激しい運動でも支障はありません。* II度平坦な場所を歩いたり、日常生活を送る際には問題ありませんが、階段の上り下りや坂道を登る際には、息苦しさを感じることがあります。* III度平坦な場所を歩いたり、自分の身の回りのことをする際には問題ありませんが、それ以上の活動になると息苦しさを感じ、休まなければならなくなります。* IV度少し体を動かすだけでも息苦しさを感じ、日常生活に支障が出てきます。* V度安静にしていても息苦しさが強く、身の回りのことを自分で行うことができません。ヒュー・ジョーンズの基準を用いることで、患者さん自身の状態を客観的に把握できるだけでなく、医師とのコミュニケーションをスムーズにすることにも役立ちます。
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脳の酸素消費と保護

- 脳のエネルギー源人間の脳は、思考、記憶、運動など、生命維持や日々の活動を司る非常に重要な器官です。常に活発に活動している脳は、他の臓器と比べて大量のエネルギーを必要とします。では、脳はこのエネルギーをどこから得ているのでしょうか?その答えは、酸素です。酸素は、呼吸によって体内に取り込まれ、血液中の赤血球によって全身に運ばれます。そして、脳に到達した酸素は、脳細胞の中に存在するミトコンドリアという小さな器官に取り込まれます。ミトコンドリアは、酸素を使ってブドウ糖を分解し、体内で使いやすいエネルギーに変換します。このエネルギーを使って、脳は様々な活動を行っているのです。つまり、酸素は脳にとって、いわばガソリンのような役割を果たしていると言えます。もし、脳への酸素供給が不足すると、脳細胞はエネルギー不足に陥り、正常な活動が維持できなくなります。 その結果、めまいや意識障害などの症状が現れ、最悪の場合、脳細胞が死滅してしまう可能性もあるのです。 このように、脳の働きを維持するためには、常に十分な酸素を供給することが非常に重要になります。
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人の生死を分ける脳死とは

- 脳死の定義脳死とは、脳全体の機能が完全に停止し、二度と回復の見込みがない状態を指します。これは、心臓が停止した状態である「心停止」とは明確に異なります。脳死を引き起こす原因は、大きく分けて直接的なものと間接的なものの二つに分類できます。交通事故などによる頭部外傷や、脳卒中などの脳血管障害といった脳への直接的なダメージは、脳細胞を破壊し、広範囲にわたる損傷を引き起こす可能性があります。一方、心停止による酸素不足や、一酸化炭素中毒なども、脳に酸素を供給する血液の流れを阻害するため、間接的に脳に深刻なダメージを与える可能性があります。脳死と診断されるためには、大脳、小脳、そして生命維持に不可欠な機能を担う脳幹を含む、脳全体が不可逆的に機能を失っているという条件を満たす必要があります。具体的には、意識や思考、運動、感覚、そして自発呼吸といった機能が完全に失われ、人工呼吸器などの生命維持装置なしでは生存が不可能な状態を指します。たとえ人工呼吸器によって心臓が動いている状態であっても、脳死状態の人の意識が回復することはなく、自分自身で呼吸をすることも、体を動かすことも二度とできません。
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救命に繋がる?脳低温療法の可能性

- 脳低温療法とは脳低温療法とは、事故や病気などによって脳がダメージを受けた際に、その後の影響をできる限り抑え、脳の機能回復を助けるための治療法です。私たちの脳は、心臓が止まって血液の流れが止まると、酸素不足に陥り、短時間で大きな損傷を受けてしまいます。さらに、血液が再び流れ始めると、今度は活性酸素などが発生し、脳に炎症やむくみが引き起こされ、さらなるダメージを受けてしまいます。脳低温療法では、脳の温度を通常よりも低い32度から34度程度にまで下げることで、これらのダメージを抑えます。体温を下げることによって、脳の活動が抑制され、酸素の消費量が減少するため、損傷からの悪影響を軽減できると考えられています。脳低温療法は、心停止後の脳機能回復や、新生児の脳性麻痺のリスクを軽減する効果が期待されています。しかし、すべての患者さんに有効なわけではなく、合併症のリスクもゼロではありません。そのため、専門医による適切な診断と治療が必要となります。
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命に関わる脳波の異常:バーストサプレッションとは

私たちの脳は、起きている時でも眠っている時でも、常に活動しています。そして、その活動状態は脳波という電気信号として記録することができます。健康な状態の脳波は、意識の状態によって特徴的なパターンを示します。例えば、起きてリラックスしている時には、α波と呼ばれる比較的ゆっくりとした波形が優勢に現れます。α波は、目を閉じたり、穏やかな気持ちでいる時など、リラックスしている状態を示しています。逆に、目を開けて周囲に注意を向けたり、何か考え事をしている時には、α波は減少します。一方、眠りに落ちると、脳波はさらにゆっくりとした波形へと変化していきます。この状態では、θ波やδ波と呼ばれる、α波よりも周波数の低い波形が観察されます。θ波は浅い睡眠時に、δ波は深い睡眠時に多く見られる脳波です。このように、脳波は私たちの意識レベルや脳の活動状態を反映する重要な指標となり、健康状態を把握する上でも役立ちます。
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命を守る知識:肺うっ血とその基礎

- 肺うっ血とは?私たちは、呼吸をすることで、体の中に酸素を取り込み、不要になった二酸化炭素を排出しています。この大切な役割を担っているのが肺です。肺の中には、肺胞と呼ばれる小さな袋がたくさんあり、ここで血液に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するガス交換が行われています。肺うっ血とは、この肺胞周辺の血管に血液が必要以上に溜まってしまう状態を指します。心臓は、体全体に血液を循環させるポンプのような役割を担っていますが、この心臓に何らかの異常が起こり、血液をうまく送り出せなくなると、肺に血液が滞ってしまうことがあります。これが肺うっ血です。つまり、肺うっ血は、肺そのものの病気ではなく、心臓の機能と密接に関係しているといえます。心臓のポンプ機能が低下することで、肺の血管に負担がかかり、血液が過剰に溜まってしまうのです。
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低心拍出量症候群:命に関わる心臓の緊急事態

- 低心拍出量症候群とは心臓は、まるで体中に血液という大切な荷物を届ける働き者のポンプです。しかし、このポンプの働きが弱くなってしまい、十分な血液を送り出せなくなることがあります。これが低心拍出量症候群と呼ばれる病気です。健康な状態であれば、心臓は力強く収縮し、全身に血液を送り出しています。しかし、心臓の手術後や心筋梗塞、心肺蘇生後など、心臓に大きな負担がかかった場合、このポンプ機能が低下してしまうことがあります。血液は、酸素や栄養を体の隅々まで運ぶ、いわば宅配便のような役割を担っています。しかし、低心拍出量症候群になると、この宅配便の数が減ってしまい、体全体に行き渡らなくなってしまいます。結果として、息切れやだるさ、めまい、意識障害などが現れ、重症になると命に関わる危険性も出てきます。低心拍出量症候群は、心臓からのSOSサインです。早期発見と適切な治療が非常に重要となります。
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命に関わることもある胃の病気:デュラフォイ潰瘍

- デュラフォイ潰瘍とはデュラフォイ潰瘍は、胃の粘膜にできた異常な血管から出血してしまう病気です。1898年にフランスの医師デュラフォイによって発見されました。 胃の粘膜には通常、栄養を吸収したり、胃酸から自身を守ったりするための細かい血管が張り巡らされています。デュラフォイ潰瘍では、何らかの原因でこれらの血管の一部が太く拡張し、もろくなってしまいます。そして、このもろくなった血管が破れることで、胃の中に大量の出血が起こります。デュラフォイ潰瘍は、消化管出血の原因となる病気の中では比較的まれです。しかし、一度出血すると命に関わるほどの大量出血を引き起こすこともあり、注意が必要です。原因は解明されていませんが、動脈硬化や高血圧などの血管の病気を患っている高齢者に多くみられます。また、喫煙や飲酒、ピロリ菌感染なども発症リスクを高めると考えられています。自覚症状が少ないことも多く、胃のむかつきや軽い腹痛、貧血などを自覚して医療機関を受診した際に、初めてデュラフォイ潰瘍と診断されるケースも少なくありません。早期発見と適切な治療が重要となります。気になる症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
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命に関わることも!てんかん重積状態とは?

- てんかん重積状態とはてんかん重積状態は、発作が長く続く、もしくは発作を繰り返すことで意識が回復しない状態を指します。具体的には、一度のてんかん発作が30分以上続く場合や、短い発作を繰り返して、発作と発作の間に意識が戻らない場合が該当します。この状態は、脳が過剰に興奮し続けることで、脳に大きなダメージを与え、後遺症が残ったり、命に関わる危険性も高まります。そのため、てんかん重積状態は、一刻も早く治療を開始する必要がある、非常に危険な状態といえます。周りの人が、てんかん重積状態かどうかを判断し、適切な対応をとることが重要です。普段てんかんを持っている人が、いつもより発作が長く続く、発作後意識がなかなか戻らないなどの症状が見られたら、すぐに救急車を呼ぶなど、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
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救命の連鎖:二次救命処置の重要性

- 二次救命処置とは二次救命処置とは、突然の心臓停止などにより生命の危機に瀕している人を対象に、医師や看護師、救急救命士といった特別な訓練を受けた医療従事者が行う高度な救命処置です。医療機器や薬剤を使用するため、一般の人がその場で行う一次救命処置とは区別されます。一次救命処置には、胸骨圧迫や人工呼吸といった心肺蘇生法などが含まれます。これは、たまたま居合わせた人でも、特別な医療知識がなくても行うことができます。一方、二次救命処置は、一次救命処置に引き続いて医療機関において開始され、より専門的な知識と技術を必要とします。例えば、電気ショックを用いて心臓の動きを正常に戻す「除細動」や、心臓の動きを維持するための薬剤投与、気管挿管による人工呼吸管理などが行われます。二次救命処置は、心停止からの回復率を高めるために極めて重要です。1970年代以降、心肺蘇生法の普及活動が世界的に広がり、それと同時に一次救命処置と二次救命処置を体系的に指導するシステムが構築されました。その結果、多くの人々が救命処置について学ぶ機会を得て、救命率の向上に大きく貢献しました。二次救命処置は、文字通り人の命を救うための最後の砦と言えるでしょう。
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二相性陽圧とは?仕組みと利点を解説

二相性陽圧の概要二相性陽圧は、自発的に呼吸をする力を助ける医療機器の一つで、持続的気道内陽圧(シーパップCPAP)をさらに進化させたものです。シーパップは、常に一定の圧力で空気を気道に送り込み続けることで、気道の閉塞を防ぎます。一方、二相性陽圧は、シーパップのように常に一定の圧力をかけるのではなく、高い圧力と低い圧力を交互にかけることで、より自然な呼吸をサポートします。この圧力の変化は、通常、自発呼吸のリズムよりも長い周期で繰り返されます。低い圧力の時は、息を吸いやすくすることで呼吸を楽にし、高い圧力の時は、十分な酸素を体に取り込めるようにサポートします。この二つの圧力を交互にかけることで、自然な呼吸のリズムに近づき、快適な睡眠を得ることができます。二相性陽圧は、シーパップよりも効果が高い場合があり、睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられます。ただし、すべての人に効果があるわけではなく、医師の診断が必要です。
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体のSOSを見逃すな!:粘膜内pHでわかること

私たちは日々、呼吸をすることで酸素を取り込み、体中に送っています。この酸素は、体の中で行われる様々な活動のエネルギー源として欠かせないものです。もし、酸素が不足してしまうと、細胞は正常に働かなくなり、体に様々な不調が現れます。酸素不足は、目に見える形で現れるとは限りません。そのため、体の奥深くで起きている酸素不足を早期に発見することは容易ではありません。しかし、最近注目されている「粘膜内pH」を測定することで、血液検査などでは分からない、体の奥の酸素不足の状態を把握できる可能性があります。「粘膜内pH」とは、胃や腸などの粘膜の酸性度を示す数値です。酸性度は、0から14の範囲で表され、数値が低いほど酸性が強く、高いほどアルカリ性が強くなります。健康な状態では、粘膜内pHは弱酸性に保たれています。しかし、酸素不足の状態になると、細胞はエネルギーを生み出すために乳酸を作り出すようになり、その結果、粘膜内pHが酸性に傾くのです。粘膜内pHの変化は、自覚症状が出る前に現れることもあるため、体の奥底で起きている酸素不足のサインを見つけるための重要な指標となります。
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傷を癒す技術:代用皮膚の可能性

私たちの体は、外界と触れ合う場所である皮膚によって守られています。皮膚は、細菌やウイルスなどの侵入を防いだり、体温を調節したりするなど、私達が健康な生活を送る上で欠かせない役割を担っています。しかし、やけどや事故、手術などによって、この大切な皮膚が傷ついてしまうことがあります。皮膚の損傷は、見た目の問題だけでなく、細菌感染のリスクを高めたり、体内の水分が失われやすくなったりするなど、健康にも大きな影響を与えます。このような皮膚の損傷を治し、失われた皮膚の機能を補うために、様々な治療法が開発されてきました。その中でも近年、特に注目を集めているのが「代用皮膚」です。代用皮膚とは、まるで自分の皮膚のように、傷口を覆い、皮膚の再生を促す人工的に作られた皮膚のことを指します。代用皮膚は、実際の皮膚と同じような構造や機能を持つように作られており、傷口を外部の刺激から守りながら、皮膚の細胞が再生しやすい環境を整えます。従来の治療法と比べて、傷跡が目立ちにくく、治癒を早める効果も期待できることから、医療現場で広く活用され始めています。
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多臓器損傷:その危険性と対応

- 多臓器損傷とは交通事故などの大きな事故に遭ったり、災害に巻き込まれたりした際に、私たちの身体は大きな衝撃を受け、様々な傷を負うことがあります。中でも、一度に複数の臓器が損傷を受けてしまう「多臓器損傷」は、命に関わる危険性も非常に高く、一刻を争う深刻な状態です。多臓器損傷は、例えば交通事故で腹部を強く打ち付け、肝臓や脾臓、腎臓など、お腹の中にある複数の臓器が同時に傷ついてしまうような場合を指します。このような状態に陥ると、それぞれの臓器が正常に機能しなくなるだけでなく、臓器同士の連携も崩れてしまい、全身に悪影響が及ぶ可能性があります。多臓器損傷は、初期の段階では外見からはその深刻さを判断しにくい場合もあります。しかし、時間の経過とともに容態が急変する可能性も高く、早期発見と適切な処置が救命の鍵となります。そのため、交通事故などに遭った後、たとえ軽傷だと思えても、必ず医療機関を受診し、医師の診察を受けるように心がけましょう。
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動脈血中ケトン体比:肝臓の健康を知る指標

- 動脈血中ケトン体比とは動脈血中ケトン体比(AKBR)は、肝臓の細胞、特に細胞内のエネルギー生産を担うミトコンドリアが、どの程度効率的に働いているかを評価する指標です。私たちの身体は、通常、糖質を主なエネルギー源としています。しかし、糖質が不足すると、代わりに脂肪を分解してエネルギーを作り出すようになります。この時、肝臓では脂肪の分解によってケトン体と呼ばれる物質が作られます。AKBRは、このケトン体のうち、アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸という二つの物質の比率を表しています。 この比率を見ることで、肝臓が脂肪を分解し、エネルギーを作り出す過程が、円滑に進んでいるかを把握することができるのです。例えば、絶食時や激しい運動後など、糖質が不足している状況では、AKBRは上昇する傾向にあります。これは、身体がエネルギー不足を補うために、脂肪の分解を活発に行っているためです。逆に、肝臓の機能が低下している場合、AKBRは低下することがあります。これは、肝臓が脂肪を効率的に分解できず、ケトン体の産生が減少するためです。このように、AKBRは肝臓の機能を評価する上で、重要な指標となります。
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緊急を要する病気:特発性食道破裂

- 特発性食道破裂とは食道は、口から入った食べ物を胃に送るための重要な器官です。通常、弾力性に富んでおり、多少のことでは傷つくことはありません。しかし、まれに、これまで健康に過ごしてきたにも関わらず、突然、食道に裂け目や穴が開いてしまうことがあります。これを特発性食道破裂と呼びます。この病気は、1724年にベーアハーフェという医学者によって初めて報告されました。 医学が進歩した現代においても、発症する人は少なく、年間100万人あたり約1~10人とされています。特発性食道破裂は、命に関わる危険性も孕んでいます。 裂け目や穴から、食べ物や消化液が漏れ出し、周りの組織に炎症を引き起こすためです。 さらに、細菌感染症などを併発すると、命を落とす危険性も高まります。そのため、早期の診断と適切な治療が非常に重要となります。 特に、胸や背中に激しい痛みを感じ、呼吸困難や吐き気などの症状が現れた場合は、ためらわずに医療機関を受診する必要があります。
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乳酸アシドーシス:その原因と対策

- 乳酸アシドーシスとは私たちの体は、普段活動するためのエネルギーを生み出す過程で、乳酸という物質を作り出しています。健康な状態であれば、この乳酸は主に肝臓で分解され、血液中の濃度は一定に保たれています。しかし、何らかの原因で乳酸の産生が過剰になったり、分解が追いつかなくなったりすると、血液中に乳酸が異常に蓄積し、体の状態が酸性に傾いてしまうことがあります。これが「乳酸アシドーシス」と呼ばれる病態です。乳酸アシドーシスは、大きく分けて「A乳酸アシドーシス」と「B乳酸アシドーシス」の2つのタイプに分類されます。A乳酸アシドーシスは、激しい運動や呼吸不全、心不全など、組織への酸素供給が不足することで起こります。一方、B乳酸アシドーシスは、糖尿病や肝臓病、薬剤などが原因で起こり、酸素供給とは関係なく乳酸が過剰に産生されたり、分解が阻害されたりすることで発症します。乳酸アシドーシスは、意識障害や嘔吐、腹痛などの症状を引き起こし、重症化するとショック状態に陥り、命に関わることもあります。そのため、早期に発見し、適切な治療を行うことが重要です。
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脳死判定と人形の目現象

- 人形の目現象とは「人形の目現象」とは、意識がない状態の人に頭を素早く動かした際、本来であれば頭と一緒に動くはずの眼球が、反対方向に動いてしまう現象を指します。通常、意識がはっきりしている状態であれば、頭を左右に動かしても、視線を一点に固定するために眼球は頭と同じ方向に動きます。しかし、意識がない状態では、この眼球運動の調整機能がうまく働かなくなるため、頭を動かした方向とは逆の方向に眼球が動いてしまうのです。まるで、人形の顔を傾けると目が反対側に残るように見えることから、「人形の目現象」と名付けられました。この現象は、主に脳幹の機能低下を示唆していると考えられています。脳幹は、呼吸や循環など生命維持に不可欠な機能を司っており、意識レベルの調整にも深く関わっています。そのため、人形の目現象が見られる場合、脳幹が何らかの影響を受けている可能性が考えられます。ただし、人形の目現象が見られたとしても、必ずしも重篤な状態であるとは限りません。深い睡眠中や、意識障害の程度が軽い場合は、健康な人でもこの現象が見られることがあります。また、アルコールや睡眠薬などの影響下でも、同様の現象が起こることがあります。人形の目現象が見られた場合は、他の症状や状況も考慮しながら、総合的に判断する必要があります。
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体外式肺補助:重症呼吸不全の最後の砦

- 体外式肺補助とは体外式肺補助(ECLA)は、病気や怪我などによって、自力で呼吸することが難しくなった場合に、肺の働きを一時的に代替する治療法です。私たちの体にとって、呼吸は生きていくために欠かせないものです。 息を吸うことで、肺の中に酸素が取り込まれ、血液によって体の隅々まで届けられます。 同時に、不要になった二酸化炭素は、息を吐くことで体外へ排出されます。 しかし、肺炎や事故などによって肺が正常に機能しなくなると、この呼吸によるガス交換がうまくいかなくなり、「呼吸不全」という状態に陥ります。 呼吸不全は、放置すると生命に関わる危険な状態です。このような場合に、肺の代わりに血液中の酸素と二酸化炭素を交換するのが、ECLAという治療法です。 ECLAでは、人工心肺装置と呼ばれる機械を用いて、血液を体外へ循環させます。 そして、人工肺によって血液中の二酸化炭素を取り除き、酸素を送り込みます。 こうすることで、肺が正常に機能していなくても、血液中の酸素濃度を保ち、体の各臓器へ酸素を供給することが可能になります。ECLAは、あくまで肺の機能を回復させるまでの間の補助的な役割を担うものです。 肺の機能が回復するまで、あるいは肺移植が可能になるまでの間、患者さんの命をつなぐための大切な治療法と言えるでしょう。
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大動脈瘤の低侵襲治療:ステントグラフト内挿術とは

- 大動脈瘤の新たな治療法大動脈瘤は、命に関わる危険性を持つ病気です。心臓から血液を送り出す重要な血管である大動脈の一部が、風船のように膨らんでしまう病気で、破裂すると命に関わることもあるため、早期発見と適切な治療が重要です。従来、大動脈瘤の治療は、開腹手術によって動脈瘤を切除し、人工血管に入れ替える方法が一般的でした。しかし、この手術は患者さんへの負担が大きく、高齢者や合併症を持つ患者さんにとっては、手術のリスクが高いことが課題でした。近年、このような課題を克服する新たな治療法として、ステントグラフト内挿術が注目されています。ステントグラフト内挿術は、足の付け根の血管からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、動脈瘤のある部分までステントグラフトと呼ばれる人工血管を留置する治療法です。ステントグラフト内挿術は、開腹手術と比較して、身体への負担が少なく、入院期間も短いといった利点があります。そのため、高齢者や合併症を持つ患者さんにとっても、新たな治療の選択肢として期待されています。しかし、ステントグラフト内挿術は、すべての大動脈瘤に適応できるわけではありません。血管の状態や動脈瘤の大きさ、位置などによって、治療法を検討する必要があります。大動脈瘤は自覚症状が出にくい病気ですが、早期発見できれば、より身体への負担が少ない治療を選択できる可能性があります。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
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進化する医療:代用血液の可能性と未来

医療現場において、輸血は欠かせない治療法のひとつです。怪我や手術などで大量の血液を失った場合、失われた血液を補うことで命を救うことができます。しかし、輸血には解決すべき課題も存在します。まず、輸血に必要な血液は、健康な人からの献血によって賄われています。しかし、少子高齢化の影響もあり、献血協力者は年々減少しており、常に血液不足という深刻な問題を抱えています。さらに、輸血には感染症のリスクも伴います。血液製剤は厳密な検査を経て提供されていますが、未知のウイルスなどによる感染の可能性を完全に排除することはできません。また、血液型が一致する血液を輸血する必要があり、血液型によっては、より深刻な血液不足に直面しています。このような輸血に伴う様々な問題を解決するために、近年注目を集めているのが「代用血液」です。これは、人間の血液の代わりに使用できる人工的に作られた血液製剤のことです。代用血液には、大きく分けて二つのタイプがあります。一つは、酸素を運搬する機能に特化した「赤血球代替物」です。もう一つは、血液の量を増やし、血圧を維持する働きを持つ「血漿増量剤」です。これらの代用血液は、血液型や感染症のリスクを考慮する必要がなく、長期保存も可能なため、血液不足の解消や安全性の向上といったメリットが期待されています。現在、様々な研究機関や企業が、より安全で効果的な代用血液の開発に取り組んでおり、近い将来、輸血に代わる新たな選択肢として、医療現場に革新をもたらす可能性を秘めています。
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全身性炎症反応症候群:SIRSとは?

- 全身性炎症反応症候群とは全身性炎症反応症候群(SIRS)は、私たちの体が病気や怪我などの様々な刺激を受けた際に、その刺激から体を守ろうとする免疫システムが過剰に反応してしまうことで起こる、命に関わる可能性のある深刻な状態です。 細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入して起こる感染症だけでなく、火傷や怪我、手術など、感染を伴わない場合でも発症する可能性があります。本来であれば、免疫システムは体にとって有害な病原体や異物を排除し、傷ついた組織を修復するために働く重要な働きをしています。しかし、SIRSでは、この免疫反応が過剰に起こってしまうことで、健康な組織や臓器にもダメージを与えてしまうのです。SIRSは初期の段階では、発熱や心拍数の増加、呼吸数の増加、白血球数の増加といった症状が現れます。これらの症状は風邪などの一般的な病気でも見られるため、SIRSだと気づかれない場合もあります。しかし、SIRSは放置すると、敗血症性ショックや多臓器不全といったより深刻な状態に進行し、命に関わる危険性も高まります。そのため、SIRSを早期に発見し、適切な治療を開始することが非常に重要となります。