
記憶の彼方:健忘とは何か
- 健忘記憶の欠落健忘とは、脳の働きが何らかの原因で損なわれ、特定の期間の記憶が抜け落ちてしまう状態を指します。私たちは日々、様々な出来事を経験し、それを記憶として脳に刻み込んでいます。この記憶のプロセスは、「記名」「把持」「追想」という三つの段階に大きく分けられます。まず「記名」とは、新しく経験した情報にラベルを貼るように、脳に登録する過程を指します。そして「把持」は、登録された情報を脳の引き出しにしまい、一定期間保持しておく過程を意味します。最後に「追想」は、必要な時に引き出しから情報をスムーズに取り出す過程を指します。健忘は、これらの段階のいずれか、あるいは複数の段階で支障が生じることで発症すると考えられています。例えば、事故による頭部への衝撃や、脳卒中などの病気によって脳が損傷を受けると、記名や把持の段階で問題が生じ、新しい情報を記憶することが困難になる場合があります。また、加齢に伴う脳の機能低下や、ストレス、睡眠不足なども健忘の原因となることがあります。健忘の症状は、記憶の欠落の程度や範囲、原因などによって大きく異なります。軽度の場合は、昨日の夕食を思い出せないといった一時的な記憶の不確かさにとどまりますが、重症化すると、自分の名前や家族の顔さえも分からなくなることがあります。