初期診療

けが人へ医療

救命現場で活躍するFAST:迅速簡易超音波検査

- FASTとはFASTは、怪我をした人を診察する時、特に事故などで強い衝撃を受けた際に、体の内側で出血が起きていないか超音波を使って素早く確認する方法です。「Focused Assessment with Sonography for Trauma」の頭文字をとってFASTと呼ばれ、日本語では「外傷患者のための超音波検査による集学的評価」と言います。FASTの特徴は、その名の通り、短時間で簡単に検査できることです。特別な機械や高度な技術は必要なく、医療設備が十分にない場所でも行うことができます。FASTでは、主に以下の4つの部位を観察します。1. 心臓の周りの空間心臓を包む膜と心臓の間に、血液が溜まっていないかを確認します。2. 肝臓の周り肝臓は体の右側、肋骨の下にある大きな臓器で、ここに出血がないかを確認します。3. 脾臓の周り脾臓は体の左側、肋骨の下にある臓器で、ここに出血がないかを確認します。4. お腹や胸の中お腹や胸の中に、血液やその他の液体(例えば、肺の周り)が溜まっていないかを確認します。FASTは、事故や転倒などで強い衝撃を受けた人の命に関わる内出血を早期に発見するために非常に役立ちます。
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外傷初期診療の指針:JATEC™とは

- 日本で生まれた外傷診療ガイドライン日本では、交通事故や災害などで、予期せぬ怪我を負う場面は少なくありません。このような、命に関わる可能性のある怪我に対して、迅速かつ適切な処置を行うことは非常に重要です。そこで、日本の医療現場に合わせて独自に開発されたのが、「JATEC™」という外傷診療ガイドラインです。JATEC™は、「Japan Advanced Trauma Evaluation and Care」の略称で、日本語に訳すと「日本の高度外傷評価とケア」となります。これは、1960年代からアメリカで始まった国際的な外傷初期診療のガイドラインである「ATLS(advanced trauma life support)」を参考に、日本の医療現場の実情に合わせて作られました。JATEC™の特徴は、外傷を負った患者に対する初期診療において、医師が取るべき行動を具体的に示している点です。これにより、経験の浅い医師でも、一定水準以上の診療を提供することが可能になります。また、JATEC™はガイドラインだけでなく、医師や看護師などを対象とした教育コースも提供しており、外傷診療の質の向上に大きく貢献しています。このように、JATEC™は、日本の外傷医療において欠かせない存在となっています。
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外傷初期診療の重要性:ATLSとは

事故や災害現場で発生する外傷は、一刻を争う深刻な事態となることが少なくありません。このような状況下では、迅速かつ的確な初期診療が、傷病者の生死を分ける決定的な要因となります。 外傷初期診療の重要性は、救命率に直結すると言っても過言ではありません。医療従事者は、限られた時間の中、的確な状況判断と、迅速かつ適切な処置を行うことが求められます。外傷には、骨折や裂傷、出血、内臓損傷など、様々な種類が存在します。状況に応じて、気道確保、呼吸管理、循環確保といった救命処置を優先的に行う必要があります。これらの処置は、傷病者の状態を安定させ、救命の可能性を高めるために非常に重要です。また、適切な搬送先を選定し、迅速に搬送することも、救命率向上には欠かせません。外傷初期診療を効果的に行うためには、医療従事者は体系的な知識と高度な技術を習得していることが不可欠です。特に、緊急事態における冷静な状況判断と、迅速かつ的確な処置を行うための実践的な能力が求められます。そのため、医療従事者は、日頃からシミュレーション訓練などを通じて、緊急時対応能力の向上に努める必要があります。 外傷初期診療は、医療従事者の知識・技術・経験が試される重要な領域と言えるでしょう。