出血性ショック

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救命現場におけるMAST:効果と限界

- MASTとはMAST (Medical Anti-Shock Trousers)は、ショック状態にある患者の症状を改善するために用いられる医療機器です。これは、空気を入れて膨らませることのできる、いわば「空気圧ズボン」のような構造をしています。MASTを装着すると、両足全体と骨盤、腹部を空気圧で圧迫します。この圧迫によって、下半身への血流が制限され、その結果として心臓や脳などの重要臓器への血流量が増加します。ショック状態とは、様々な原因によって血流量が著しく低下し、生命を脅かす危険性のある状態です。MASTは、このショック状態に陥った患者さんに対して、一時的に血圧を上昇させ、重要臓器への血流を維持することで、症状の改善を図ります。しかしながら、MASTはあくまでも一時的な処置であり、根本的な治療ではありません。そのため、MASTを装着した後には、速やかに病院へ搬送し、適切な治療を受けることが重要です。
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初期輸液療法とレスポンダー

出血を伴う怪我は、命に関わる深刻な状態に陥ることがあります。特に、大量の出血によって血液の循環が著しく悪くなる出血性ショックは、迅速な対応が求められる緊急事態です。出血性ショックに適切に対処するためには、まず出血をできるだけ早く止めることが重要です。傷口を直接圧迫したり、止血帯を使用するなどして、さらなる出血を防ぎます。それと同時に、体内の血液量を補うための輸液療法も欠かせません。これは、点滴によって血管内に直接、水分や電解質を送り込むことで、血液循環を維持する治療法です。輸液療法を行う際には、外傷初期診療ガイドライン(JATEC)などを参考に、適切な輸液の種類や量、速度などを判断する必要があります。自己流の判断で輸液を行うことは大変危険です。出血性ショックは一刻を争う状態です。そのため、救急隊に連絡し、医療機関で適切な治療を受けることが何よりも重要です。
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救命の砦:大動脈内バルーン遮断とは

一刻を争う事態である重篤な出血性ショック状態の患者さんを救命する手段として、『大動脈内バルーン遮断』という治療法があります。これは、外傷による出血などで、命に関わるほどの大量出血が起きた場合に、緊急的に行われる極めて高度な医療技術です。出血性ショックに陥った場合、輸液や輸血といった標準的な治療がまず行われます。しかし、これらの治療にも関わらず、容体が改善せず心臓が停止する危険性が非常に高い場合には、最後の手段としてこの大動脈内バルーン遮断が選択されることがあります。大動脈内バルーン遮断は、カテーテルと呼ばれる細い管を脚の付け根の血管から挿入し、心臓近くの大動脈まで進めます。そして、カテーテルの先端にあるバルーンを膨らませることで大動脈を一時的に閉鎖し、脳や心臓などの重要な臓器への血流を確保することを目的としています。時間との闘いとなる緊急性の高い処置であるため、救命率は決して高くありません。しかし、この治療法によって、貴重な時間を稼ぎ、その間に止血などの根本的な治療を行うことが可能となります。まさに、一刻を争う事態における最後の砦と言えるでしょう。