低体温

けが人へ医療

致死的3徴とは:重症外傷における危険な兆候

- 致死的3徴の概要事故や災害で大きな怪我を負った時、命に関わる深刻な状態に陥ることがあります。医学の世界では『致死的3徴』と呼ばれるものがそれにあたります。これは、一般的に死のサインとして知られる『瞳孔反応の停止』『呼吸の停止』『心臓の停止』の三徴とは全く異なるものです。致死的3徴は、重症外傷後に現れる『低体温』『アシドーシス』『凝固異常』の3つの状態を指します。 これらの状態が重なると、生存率が著しく低下してしまうため、一刻を争う迅速な処置が必要となります。まず、『低体温』とは、文字通り体温が低下した状態を指します。大量出血や体温の低下する環境下では、体が冷えやすく、低体温に陥りやすくなります。低体温になると、心臓、脳、血液の循環などの機能が低下し、生命の危機に繋がります。次に、『アシドーシス』は、血液が酸性に傾いた状態です。呼吸不全やショック状態になると、体内で酸素がうまく取り込めなくなり、血液中に酸が溜まりやすくなります。アシドーシスは、心臓の機能低下や意識障害を引き起こし、最悪の場合、死に至ることもあります。最後に、『凝固異常』は、血液が固まりにくくなる状態です。大怪我や手術などにより大量出血が起こると、血液の凝固因子と呼ばれる成分が消費され、体が本来持つ止血機能がうまく働かなくなります。その結果、出血が止まらず、生命の危機に直面することになります。このように、致死的3徴はそれぞれが独立した危険因子であると同時に、互いに悪影響を及ぼし合い、負の連鎖を引き起こす点に注意が必要です。迅速な処置と適切な治療によって、この負の連鎖を断ち切ることが、救命率向上に不可欠と言えるでしょう。
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忘れられた治療法? 胃冷却法の現在

- 胃冷却法とは?胃冷却法とは、読んで字のごとく、胃の中の温度を冷やす治療法です。どのように行うかというと、口から管を通して、冷たい液体や気体を胃の中に直接送り込みます。この方法で、胃の温度を意図的に下げることができるのです。胃冷却法が初めて世に出たのは、1958年のこと。アメリカの外科医であるワンゲンステーン氏によって発表されました。当時、胃潰瘍による出血は命に関わる大きな問題でした。そこで、胃酸の分泌を抑え、出血を止めるために、この画期的な治療法が考案されたのです。胃の温度を下げることで、胃酸の分泌が抑えられ、出血を止める効果が期待できます。そのため、胃潰瘍の出血に対する画期的な治療法として、世界中で注目を集めました。しかし、その後の研究で、胃冷却法には効果が薄いということが明らかになり、現在ではほとんど行われていません。