予防接種

感染症から守る

静かな脅威:破傷風について

- 身近に潜む破傷風菌破傷風は、破傷風菌という細菌が原因で起こる感染症です。この細菌は、土の中など、私たちの身の回りのどこにでもいる、ごくありふれたものです。普段は土の中で静かに過ごしており、私たちに危害を加えることはありません。しかし、傷口から私たちの体の中に入ると、毒素と呼ばれる体に悪い物質を作り出し、深刻な症状を引き起こすことがあります。破傷風菌は、特に土の中に多く存在しています。そのため、土いじりやガーデニングなどをしていると、知らず知らずのうちに傷口から菌が侵入している可能性があります。また、錆びた釘や刃物で怪我をした場合にも注意が必要です。これらのものには、破傷風菌が付着していることが多いためです。破傷風は、早急に適切な治療を行えば、治癒する病気です。しかし、治療が遅れると、全身の筋肉が硬直したり、けいれんを起こしたりするなど、深刻な症状に悩まされることになります。最悪の場合、命を落とす危険性もゼロではありません。破傷風を予防するためには、日頃から怪我をしないように注意することが大切です。また、万が一、傷を負った場合には、すぐに傷口を洗い流し、消毒するなど適切な処置を行いましょう。そして、破傷風に対する免疫をつけるために、定期的なワクチンの接種も有効な手段となります。
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免疫の力:追加免疫でさらに強化

私たちは、一度病気にかかったり、予防接種を受けたりすると、その病気の原因となる病原体に対する抵抗力を獲得します。これは、まるで体が過去の侵入者を「記憶」しているかのようで、次に同じ病原体が侵入してきたときに、素早く撃退できるように準備を整えている状態といえます。この体の防御システムの記憶は、免疫記憶と呼ばれ、私達が健康を維持する上で非常に重要な役割を担っています。免疫記憶は、主にリンパ球と呼ばれる白血球によって支えられています。リンパ球の中には、特定の病原体を認識し、攻撃する能力を持つものがあり、一度その病原体と戦った経験を持つリンパ球は、記憶細胞として体内に長く留まります。次に同じ病原体が侵入してきたときには、これらの記憶細胞が素早く増殖し、効率的に病原体を攻撃することで、発症を防いだり、症状を軽くしたりすることができるのです。しかし、この免疫記憶は、時間の経過とともに薄れてしまうことがあります。そのため、はしかやおたふく風邪など、一度かかると生涯免疫が得られると考えられている病気もありますが、インフルエンザのように、時間の経過とともに免疫が弱まり、再び感染する可能性のある病気もあります。また、加齢によっても免疫機能は低下するため、高齢者は感染症にかかりやすくなる傾向があります。免疫記憶を維持するためには、予防接種が有効な手段となります。予防接種は、病原体を弱毒化したり、無毒化したりしたものを体内に入れることで、免疫システムに病原体を「記憶」させることができます。また、健康的な生活習慣を維持することも、免疫機能を正常に保つために重要です。バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけましょう。
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旅行者のための予防策:黄熱とは

黄熱は、主にアフリカや南アメリカの暖かい地域で流行する、ウイルスが原因となる感染症です。人から人へとうつることはなく、蚊がウイルスを媒介して感染します。感染すると、高熱が出たり、頭が痛くなったり、体がだるくなったりします。吐き気や嘔吐の症状が出ることもあります。多くの場合、これらの症状は数日で軽快します。しかし、症状が重くなることもあり、その場合は、皮膚や目が黄色くなる黄疸、腹痛、出血傾向などがみられます。重症化すると、肝臓や腎臓など、体の大切な器官が機能しなくなり、命に関わることもあります。かつては、黄熱は大変恐れられており、特に船で旅をする人にとって大きな脅威でした。現代では、ワクチンによって黄熱を予防することができるため、流行地域へ渡航する際には、事前にワクチン接種を受けることが重要です。また、蚊に刺されないように、長袖長ズボンを着用したり、虫よけ剤を使用したりするなど、対策をしっかり行いましょう。