プレホスピタルケア

けが人へ医療

救命現場におけるMAST:効果と限界

- MASTとはMAST (Medical Anti-Shock Trousers)は、ショック状態にある患者の症状を改善するために用いられる医療機器です。これは、空気を入れて膨らませることのできる、いわば「空気圧ズボン」のような構造をしています。MASTを装着すると、両足全体と骨盤、腹部を空気圧で圧迫します。この圧迫によって、下半身への血流が制限され、その結果として心臓や脳などの重要臓器への血流量が増加します。ショック状態とは、様々な原因によって血流量が著しく低下し、生命を脅かす危険性のある状態です。MASTは、このショック状態に陥った患者さんに対して、一時的に血圧を上昇させ、重要臓器への血流を維持することで、症状の改善を図ります。しかしながら、MASTはあくまでも一時的な処置であり、根本的な治療ではありません。そのため、MASTを装着した後には、速やかに病院へ搬送し、適切な治療を受けることが重要です。
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命を脅かす緊張性気胸:緊急時の対応とは

- 緊張性気胸とは緊張性気胸は、肺を包んでいる胸腔と呼ばれる空間に空気が入り込み、肺が圧迫されて縮んでしまう気胸の一種です。 一般的な気胸では、胸腔内に漏れ出た空気は自然に吸収されていきます。しかし、緊張性気胸の場合、何らかの原因で胸腔内に漏れ出た空気が、息を吸っても吐いても外に出られず、胸腔内に溜まり続けてしまいます。その結果、胸腔内の圧力(胸腔内圧)が異常に高くなり、縮んだ肺はますます圧迫されます。さらに、心臓や血管も圧迫され、血液の循環が悪くなってしまいます。その結果、血圧が低下し、意識がもうろうとしたり、ショック状態に陥ったりする危険性があります。緊張性気胸は命に関わる危険な状態であり、一刻を争う迅速な対応が求められます。