災害に強い栃木県へ：条例が目指す未来

災害に強い栃木県へ：条例が目指す未来

条例制定の背景

– 条例制定の背景近年、日本各地で経験したことのないような規模の自然災害が相次いでいます。地震、台風、豪雨など、その種類は多岐にわたり、栃木県も例外ではありません。これらの災害は、私たちの生活の基盤を揺るがし、人々の命を奪い、大切な財産を奪い去り、生活や経済活動に大きな傷跡を残しています。記憶に新しいところでは、令和元年東日本台風（台風19号）の際に、栃木県内各地で河川の氾濫や土砂災害が発生し、尊い命が失われただけでなく、家屋やインフラ設備に甚大な被害が生じました。また、近年頻発している記録的な豪雨は、いつどこで発生するかわからず、その脅威は私たちの生活に常に付きまとうものとなっています。このような厳しい現実を前に、栃木県は、県民の生命、身体及び財産を災害から守り、安全で安心して暮らせる地域社会を実現するため、「災害に強いとちぎづくり条例」を制定しました。この条例は、県、市町村、事業者、そして県民一人ひとりがそれぞれの役割と責任を自覚し、共に力を合わせて災害に強い県土づくりを進めていくための礎となるものです。

条例の目的

この条例は、地震や風水害など、私たちに大きな被害をもたらす災害に備え、被害をできる限り小さく抑え、そして一日も早く元の生活を取り戻せるようにすることを目的としています。

災害はいつどこで起こるかわかりません。そのため、県民一人ひとりが災害に対する日からの備えの大切さを認識し、自分自身を守る行動を積極的にとるとともに、地域社会全体で助け合いの精神に基づいた活動を進めていくことが重要です。この条例は、そのような意識を県全体に広げ、県民の安全を確保し、安心して暮らせる社会を実現するための取り組みを推進していくためのものです。

条例の柱となる考え方：自助・共助・公助

この条例は、災害から住民の命と暮らしを守るため、「自助」「共助」「公助」という三つの考え方を柱としています。

まず「自助」とは、災害はいつ起こるかわからないという意識を常に持ち、日頃から防災について学び、備えておくことです。具体的には、自宅に非常持ち出し袋を用意したり、家具の転倒防止対策をしたり、家族で避難場所や連絡方法を確認したりすることが挙げられます。

次に「共助」とは、地域住民がお互いに協力し合うことで、被害を最小限に抑え、一日も早く元の生活を取り戻すための取り組みです。例えば、地域の防災訓練に積極的に参加したり、災害時には隣近所で助け合ったり、高齢者や障害のある方など支援を必要とする人を気遣ったりすることが大切です。

そして「公助」とは、県や市町が、住民の安全を守るために、様々な対策を行うことです。具体的には、ハザードマップの作成や避難所の設置、防災情報の提供、災害時の救助活動や生活支援などが挙げられます。

このように、「自分の身は自分で守る」「地域で助け合う」「行政が責任を持って支援する」という三つの役割分担を明確にすることで、より効果的に災害に備え、被害を減らし、そして一日も早く復興できるように努めています。

県民の役割：防災意識の向上と行動

近年、世界各地で異常気象や大規模な自然災害が多発しており、いつどこで発生してもおかしくない状況です。このような状況下では、行政機関による対策はもちろん重要ですが、県民一人ひとりが防災意識を高め、主体的に行動することが被害の軽減に不可欠です。

県では、条例によって県民一人ひとりが防災に関する知識を深め、日頃から災害に備えることの重要性を定めています。具体的には、まず、ハザードマップを確認し、自宅周辺がどのような災害のリスクを抱えているかを把握することが大切です。例えば、自宅周辺が洪水時の浸水想定区域に入っているのか、土砂災害警戒区域に指定されているのかなどを知っておく必要があります。

また、家族や地域で防災訓練に参加することも重要です。災害時に適切な行動がとれるよう、日頃から避難経路の確認や、消火器の使い方などを習得しておくことが大切です。さらに、食料や水、懐中電灯などの必需品を詰め込んだ非常持ち出し袋を準備しておくことも重要です。

これらのことを普段から心がけ、準備しておくことで、いざという時に落ち着いて行動できるようになり、被害を最小限に抑えることに繋がります。

企業の責任：事業継続計画の策定

近年、地震や台風などの自然災害が頻発し、企業活動にも大きな影響を与えるケースが増えています。企業は、こうした災害時においても、事業を継続し、従業員の安全を確保する責任があります。

事業継続計画（BCP）は、企業が災害などの緊急事態に直面した場合でも、重要な事業を中断させずに継続あるいは早期復旧させるための計画です。具体的には、事前に想定されるリスクを洗い出し、そのリスクが発生した場合の対応策を検討し、文書化しておく必要があります。例えば、重要な設備の代替手段の確保、代替となる事業拠点の確保、従業員の安否確認システムの導入などが挙げられます。

また、従業員の安全確保も、企業にとって極めて重要な責務です。日頃から、地震や火災発生時の避難訓練を定期的に実施し、従業員一人ひとりが適切な行動をとれるようにしておくことが大切です。また、従業員が家族の安否を気遣い、業務に集中できない事態も想定されます。企業は、従業員が安心して業務を継続できるよう、家族の安全確保のための支援制度を導入することも検討すべきです。

企業は、事業継続計画の策定と従業員の安全確保に積極的に取り組み、地域社会の一員としての責任を果たしていく必要があります。

行政の責務：防災対策の強化と支援

近年、豪雨や地震など、かつて経験したことのないような自然災害が頻発しており、私たちの暮らしや生命、財産を守るためには、日頃からの備えが重要となっています。

県や市町村などの行政には、私たちの生命と財産を守るため、防災対策を強化し、住民を支援していく責務があります。具体的には、住民が安全に避難できるよう、避難所の増設や老朽化した施設の改修、耐震化を進める必要があります。また、災害発生時の情報伝達手段として、防災無線や広報車など、様々な手段を組み合わせ、住民一人ひとりに確実な情報が届く体制を構築することが重要です。

さらに、行政は、地域住民に対して、ハザードマップを用いた危険区域の説明会や防災訓練の実施など、防災意識の向上に向けた取り組みを積極的に推進していく必要があります。また、企業に対しても、事業継続計画の策定を支援するなど、災害に強い地域づくりに向けた協力を促していくことが重要です。