血管攣縮：その原因と予防法

血管攣縮：その原因と予防法

血管攣縮とは

– 血管攣縮とは血管は、体中に張り巡らされた重要な器官であり、血液を体の隅々まで送り届ける役割を担っています。この血管が、様々な要因によって一時的に収縮し、血液の流れが滞ってしまう現象を血管攣縮と呼びます。血管攣縮を引き起こす要因は、薬剤の影響や医療行為における機械的な刺激、血管の収縮に関与する物質やホルモンの作用など、多岐にわたります。例えば、寒冷刺激によって指先の血管が縮み、白くなる現象も血管攣縮の一種です。血管が収縮すると、血液の流れが悪くなり、酸素や栄養が十分に供給されなくなります。その結果、軽い場合は、しびれや痛みを感じますが、重症化すると、組織が壊死したり、臓器に障害が出たりする可能性もあります。血管攣縮は、くも膜下腔出血や狭心症、心筋梗塞など、私たちの健康や生命に関わる様々な病気のリスクを高める可能性があります。そのため、血管攣縮のメカニズムや原因を理解し、予防や治療に役立てることが重要です。

血管攣縮のメカニズム

– 血管攣縮のメカニズム私たちの体内には、全身に張り巡らされた血管が存在し、血液を体の隅々まで送り届ける役割を担っています。 血管は、状況に応じてその太さを自在に変えることで、血圧の調整や体温の調節などを行っています。 この血管の収縮には、主に二つのメカニズムが関与しています。一つ目は、カルシウムイオンが関与する血管平滑筋の収縮です。 カルシウムイオンは、細胞内外で濃度が厳密にコントロールされており、様々な生理現象に関与しています。 血管においては、このカルシウムイオンが血管平滑筋細胞内に流入することで収縮を引き起こし、血圧の維持などに貢献しています。 これは、いわば生理的な血管収縮と言えるでしょう。二つ目は、カルシウムイオン非依存性の、Rhoキナーゼという酵素を介した収縮です。 Rhoキナーゼは、細胞骨格の制御に関与しており、血管平滑筋の収縮にも関与していることが近年明らかになってきました。 このRhoキナーゼを介した血管収縮は、先ほどのカルシウムイオンによるものとは異なり、過剰に起こると様々な病気を引き起こす可能性があります。 具体的には、冠動脈という心臓に血液を送る血管で起こると狭心症、脳の血管で起こるとくも膜下出血に伴う脳血管攣縮、目の血管で起こると血管攣縮性網膜症などを引き起こすと考えられています。このように、血管の収縮は、私たちの健康を維持するために欠かせない生理現象であると同時に、その異常は様々な病気を引き起こす可能性を秘めているのです。

血管攣縮性狭心症

– 血管攣縮性狭心症

心臓は、休むことなく全身へ血液を送り出すために、常に酸素を必要としています。その酸素を心臓自身に届けているのが冠動脈と呼ばれる血管です。何らかの原因でこの冠動脈が狭くなったり、一時的にけいれんを起こしたりすると、心臓が必要とする十分な血液が送り込めなくなり、胸の痛みや圧迫感などの症状が現れます。これが狭心症と呼ばれる病気です。

狭心症の中でも、血管攣縮性狭心症は、冠動脈がけいれんを起こして一時的に狭くなることで引き起こされます。このけいれんは、喫煙習慣や動脈硬化といった生活習慣病に加え、自律神経の乱れや女性ホルモンの変動なども影響していると考えられています。また、血管の内側にある細胞の働きに異常が生じることも、血管攣縮性狭心症のリスクを高める要因の一つです。

血管攣縮性狭心症は、安静時に起こりやすく、特に早朝や夜間に多くみられます。症状としては、胸の痛みや圧迫感、息苦しさなどが挙げられます。発作時には、心臓の電気的な活動を記録する心電図検査を行うと、STと呼ばれる部分が上昇していることが特徴です。

血管攣縮性狭心症の予防には、血管を広げる作用のあるカルシウム拮抗薬などが用いられます。また、生活習慣の改善も重要です。禁煙、バランスの取れた食事、適度な運動を心掛け、ストレスを溜めないようにすることも大切です。

くも膜下出血と脳血管攣縮

– くも膜下出血と脳血管攣縮くも膜下出血は、脳を覆う薄い膜（くも膜）と脳の表面との間の血管が破れ、出血が起こる病気です。出血により脳への酸素供給が不足し、意識消失や激しい頭痛、吐き気などの症状が現れます。くも膜下出血を発症すると、後遺症が残ったり命に関わる可能性もあるため、迅速な治療が必要です。くも膜下出血を発症した方の多くは、その後３日から２週間の間に「脳血管攣縮」という合併症を起こすことがあります。これは、脳の表面にある太い血管（脳血管）が一時的に縮んでしまう現象です。脳血管攣縮が起こると、血液の流れが悪くなり、再び脳への酸素供給が不足してしまいます。脳血管攣縮の原因は、くも膜下腔に流れ出した血液成分が血管を刺激することが関係していると考えられています。具体的には、血液中の赤血球が壊れる際に放出される物質や、血管を収縮させる作用を持つ物質が影響を与えているとされています。脳血管攣縮は一時的なものですが、重症化すると脳梗塞を引き起こし、麻痺などの重い後遺症や命に関わる危険性も生じます。そのため、くも膜下出血を発症した場合は、脳血管攣縮の発症予防や早期発見、適切な治療が非常に重要になります。

脳血管攣縮の予防と治療

脳の血管は、生命維持に欠かせない重要な役割を担っています。 しかし、様々な要因によって血管が縮んでしまい、血液の流れが悪くなる「脳血管攣縮」という病態が起こることがあります。 これは、くも膜下出血の合併症として発症するケースが多く、重篤な場合は命に関わることもあるため、予防と治療が極めて重要です。

脳血管攣縮の予防には、「トリプルH療法」と呼ばれる集中的な治療が行われます。これは、「高血圧」「高容量血症」「血液希釈」の三本柱から成り立ち、縮まった血管を広げ、脳への血流を維持することを目指します。具体的には、血圧を一定以上に保ちながら、点滴によって血液量を増やし、血液をサラサラにする薬を投与します。さらに、血管を拡張する効果のある「オザグレルナトリウム」や「塩酸ファスジル」といった薬剤を静脈内に投与することもあります。

万が一、脳血管攣縮を発症してしまった場合には、縮まった血管を再び拡張させるための治療が行われます。 その代表的な治療法が、「塩酸ファスジル」を血管内に直接注入する「動注療法」です。これによって、ピンポイントで血管を拡張し、血流を改善することができます。また、「バルーン血管形成術」という治療法も用いられます。これは、細い管の先端に風船のついたカテーテルを血管内に挿入し、風船を膨らませることで血管を広げる方法です。このように、脳血管攣縮の治療には、薬物療法とカテーテル治療を組み合わせることで、より効果的な治療戦略が立てられます。

まとめ

血管が極端に細くなってしまう「血管攣縮」。放置すると、狭心症や脳梗塞など、命に関わる病気を引き起こす可能性もある危険な状態です。
血管攣縮は、一体何が原因で起こるのでしょうか？
その要因は、喫煙、過労やストレス、冷えなど、私たちの身近に潜んでいます。
健康的な生活を送る上で、これらの要因をできるだけ取り除くことが重要です。
例えば、禁煙を心がけ、十分な睡眠をとり、ストレスを溜め込まない生活を送りましょう。
また、寒い環境では、身体を冷やさないよう、防寒対策をしっかり行うことが大切です。
血管攣縮は、初期段階では自覚症状がない場合も少なくありません。
しかし、進行すると、指先の痺れや冷え、胸の痛み、頭痛などの症状が現れます。
これらの症状に心当たりがある場合は、自己判断せずに、速やかに医療機関を受診しましょう。
早期発見・早期治療が、血管攣縮による重篤な病気を防ぐために重要です。