身体の向きと肺の関係：下側肺障害にご用心

身体の向きと肺の関係：下側肺障害にご用心

仰臥位が招く肺への影響

私たちは普段、何気なく呼吸をしていますが、体の向きによって肺への負担が変わってくることをご存じでしょうか。特に、仰向けに寝転んだ状態である「仰臥位」は、肺の働きに影響を与えやすい姿勢です。

仰臥位の状態が長く続くと、重力の影響で血液や体液が背中側に溜まりやすくなります。すると、肺の下側が圧迫されてしまい、十分な量の空気を吸い込んだり、吐き出したりすることが難しくなるのです。

このような状態を「無気肺」と呼びます。無気肺の状態になると、肺で酸素を取り込む機能が低下するため、血液中の酸素濃度が低下してしまいます。その結果、息苦しさを感じたり、呼吸が速くなったりするなど、呼吸困難の症状が現れることがあります。

これが、仰臥位によって引き起こされる「下側肺障害」と呼ばれる状態です。特に、高齢者や呼吸機能が低下している方、寝たきりの方は、下側肺障害のリスクが高いと言われています。日頃から、体の向きを変えたり、軽い運動を取り入れたりするなどして、肺への負担を軽減することが大切です。

下側肺障害のリスクと症状

誰でもかかる可能性があるわけではありませんが、肺の病気がある人や、手術などで筋肉を弛緩させる薬を使った人は、特に注意が必要です。これらの条件下では、肺が本来の働きを十分に果たせなくなるため、下側肺障害のリスクが高まります。
下側肺障害になると、初期には、少し動いただけで息が切れたり、呼吸の回数が速くなったりします。症状が進むと、唇や指先が紫色に変色するチアノーゼや、意識がもうろうとするなど、重篤な症状が現れることもあります。このような症状に心当たりがあれば、速やかに医療機関を受診してください。

下側肺障害の検査と予防

– 下側肺障害の検査と予防

呼吸器疾患の中でも、肺の下側に異常が生じる下側肺障害は、早期発見と適切な予防が重要です。

-# 胸部CT検査による正確な診断
下側肺障害の診断には、胸部CT検査が非常に有効です。レントゲン検査と比較して、CT検査は肺の詳細な状態を把握することができます。
具体的には、肺の断面画像を鮮明に映し出すことで、空気の通り道である気管支の状態や、肺胞と呼ばれる小さな袋に空気が入っているかどうか、無気肺の有無やその範囲を正確に把握することができます。

-# 体位変換と呼吸機能の維持
下側肺障害の予防には、日頃から体位変換を心掛けることが重要です。
特に、病気や怪我などで長時間寝たきりになってしまう場合は、定期的に横向きになったり、枕やクッションを使って体を傾けたりするなどして、肺の下側に体液が溜まらないように工夫しましょう。
また、深呼吸や咳をすることも、肺の機能を維持し、分泌物の排出を促すために効果的です。

下側肺障害は、適切な検査と予防によって重症化を防ぐことができます。日頃から自身の肺の健康に関心を持ち、医師の指示に従って適切な対策を行いましょう。

下側肺障害への対処

「下側肺障害」と診断された場合、その深刻さによって適切な治療が行われます。症状が軽い場合は、酸素を吸入したり、体の向きを変えたりするなどの処置がとられます。重症化すると、人工呼吸器を使用して呼吸を管理しなければならなくなることもあります。

治療法の一つに、「腹臥位呼吸療法」があります。これは、うつ伏せの状態で呼吸を行うことで、肺の下側の空気の入れ替えを良くする方法です。また、「リクルートメント・マヌーバ」と呼ばれる治療法もあります。これは、一時的に気道内の圧力を高くすることで、潰れてしまった肺胞を開いて、再び機能させるという方法です。

いずれの治療法も、専門的な知識と技術が必要となります。医師の指示に従って、適切に実施されるようにしましょう。