原子炉冷却の最終手段:水棺とは?
防災防犯を教えて
先生、「水棺」ってどういう意味ですか? 原子力発電所で事故が起きたときにするんですよね?
防災防犯の研究家
よく知ってるね!その通り、原子力発電所の事故でとられる対策の一つだよ。簡単に言うと、事故を起こした原子炉を大きなプールに入れるようなイメージかな。
防災防犯を教えて
プールに入れるんですか? どういうことですか?
防災防犯の研究家
原子炉を冷やすために、大量の水で満たして、熱が外に出ないようにするんだ。水は熱を吸収する力が高いからね。ただ、完全に安全になるわけではなくて、ずっと水を入れ続けないといけないなど、大変な作業になるんだよ。
水棺とは。
「防災・防犯に関する言葉、『水棺』について説明します。水棺とは、原子力発電所での深刻な事故が起きた際、溶け落ちた核燃料を冷やす方法の一つです。原子炉格納容器と呼ばれる建物の内部に大量の水を入れ、燃料棒を水に沈めて冷やし続けます。水の中に閉じ込めることで冷やすと同時に、水は放射線を遮る効果も期待できます。しかし、燃料棒は常に熱を発し続けるため、蒸発した分の水を補充し続けなければなりません。この方法は、2011年3月に起きた福島第一原子力発電所の事故で、一部の原子炉を冷やすために検討されました。実際に使われたのは世界で初めてです。ちなみに、1986年のチェルノブイリ原発事故では、原子炉全体をコンクリートで覆ってしまう『石棺』という方法がとられました。」
深刻な原発事故への対応策
– 深刻な原発事故への対応策原子力発電所では、安全対策には万全を期していますが、万が一、深刻な事故が発生した場合に備え、燃料の溶融を防ぎ、放射性物質の拡散を抑制することが最優先事項となります。このような事態に陥った場合、まずは、原子炉を緊急停止させ、様々な冷却手段を講じることになります。具体的には、残留熱除去系と呼ばれるシステムを用いて、原子炉から発生する熱を継続的に除去します。しかし、何らかの要因で残留熱除去系が機能しない場合、燃料の温度が上昇し、溶融する可能性があります。これを防ぐために、代替注水システムを稼働させ、原子炉に冷却水を注入します。それでもなお、事態が収束せず、燃料の溶融が避けられないと判断された場合、最終手段として「水棺」という方法が検討されることがあります。これは、原子炉格納容器全体を大量の水で満たすことで、燃料を冷却し、放射性物質の拡散を抑制しようとするものです。水棺は、最後の手段として極めて有効な手段となりえますが、膨大な量の水を必要とすること、また、長期的な安定化対策が必要となるなど、多くの課題も残されています。そのため、深刻な原発事故を未然に防ぐための安全対策が何よりも重要であることは言うまでもありません。
事態 | 対応策 | 備考 |
---|---|---|
深刻な原発事故発生 | 燃料溶融の防止、放射性物質の拡散抑制 | 最優先事項 |
原子炉緊急停止後 | 残留熱除去系による冷却 | 原子炉から発生する熱を除去 |
残留熱除去系が機能しない場合 | 代替注水システムによる冷却水の注入 | 燃料溶融を防ぐ |
燃料溶融が避けられない場合 | 最終手段として「水棺」の検討 | 原子炉格納容器全体を水で満たし冷却、放射性物質拡散抑制。膨大な量の水が必要、長期的な安定化対策が必要等の課題あり |
水没による冷却と封じ込め
原子力発電所における深刻な事故の一つとして、炉心溶融があります。これは、原子炉内の燃料棒が過熱し、溶け落ちてしまう現象です。このような事態が発生した場合、燃料棒を冷却し、放射性物質の拡散を抑制することが最優先事項となります。そのための対策の一つが、「水棺」と呼ばれる方法です。
水棺とは、損傷した原子炉格納容器内に大量の水を注入し、溶け出した燃料棒を水没させることで冷却する方法です。水は、熱を吸収する能力が非常に高く、優れた冷却材として機能します。また、水は放射線を遮蔽する効果も持ち合わせています。燃料棒を水中に完全に沈めることで、冷却と放射性物質の拡散抑制を同時に図ることができます。
水棺は、最終的な解決策ではありません。あくまでも、時間稼ぎのための応急処置です。水没状態を維持するためには、継続的な注水が必要となります。また、放射性物質を含む水が漏れ出すリスクも考慮しなければなりません。しかしながら、炉心溶融のような緊急事態において、事態の沈静化と被害拡大の防止に大きく貢献する手段と言えるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
事象 | 炉心溶融 (燃料棒の過熱・溶解) |
最優先事項 | 燃料棒の冷却、放射性物質の拡散抑制 |
対策 | 水棺 (損傷した原子炉格納容器内に大量の水を注入) |
水棺の効果 | – 水による燃料棒の冷却 (優れた冷却材) – 水による放射線遮蔽 – 冷却と拡散抑制の同時達成 |
水棺の注意点 | – 最終的な解決策ではなく、時間稼ぎのための応急処置 – 継続的な注水が必要 – 放射性物質を含む水の漏出リスク |
水棺の意義 | 緊急事態における事態の沈静化と被害拡大の防止 |
福島第一原発事故での検討
– 福島第一原発事故での検討2011年3月11日、マグニチュード9.0の巨大地震とそれに伴う津波が東日本を襲い、福島第一原子力発電所は甚大な被害を受けました。この未曾有の災害により、原子炉を冷却する機能が失われ、炉心溶融(メルトダウン)という深刻な事態に陥りました。 原子炉の安定化は喫緊の課題となり、その冷却方法として「水棺」が検討されることになりました。水棺とは、文字通り原子炉を水で満たした容器で覆ってしまう方法です。 損傷した原子炉を水で満たすことで冷却効果を持続させ、放射性物質の放出を抑制することを目的としています。 しかし、福島第一原発の場合、建屋が損傷しており、どのように水棺を構築するかが課題となりました。加えて、水棺には膨大な量の水が必要となるため、その調達方法や、放射性物質を含んだ水の処理方法も検討しなければなりませんでした。世界的に見ても、原子炉への水棺の適用は前例のない試みでした。 福島第一原発事故は、原子力災害における水棺の有効性と課題を改めて浮き彫りにする出来事となりました。
項目 | 内容 |
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事象 | 福島第一原発事故 (2011年3月11日)
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検討事項 | 原子炉冷却方法としての「水棺」
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課題 |
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結論 | 福島第一原発事故は、原子力災害における水棺の有効性と課題を改めて浮き彫りにした |
継続的な冷却の必要性
原子炉を停止させた後も、核燃料棒は放射線を出しながら崩壊を続けるため、長期間にわたって熱を発生し続けます。この熱を適切に処理しなければ、燃料棒の溶融や、さらなる放射性物質の放出といった深刻な事態を引き起こす可能性があります。
そこで重要な役割を担うのが「水棺」です。水棺は、使用済み核燃料を貯蔵し、冷却するための巨大なプールのような施設です。水は熱を吸収する能力が高いため、燃料棒から発生する熱を効率的に奪い、温度上昇を抑えることができます。
しかし、水棺による冷却は、ただ水を張っておけば良いという単純なものではありません。燃料棒が発する熱によって水棺の水は蒸発し続けるため、水位を一定に保つためには継続的に水を補給する必要があります。
この作業は、原子力発電所の運転停止後も、長期にわたって続けなければなりません。また、水棺の運用には、水位や水質の管理、設備の保守点検など、さまざまな作業が伴います。これらの作業は、常に放射線被曝のリスクと隣り合わせであり、厳重な安全管理体制のもとで行われなければなりません。
原子炉停止後の課題 | 解決策 | 運用上の注意点 |
---|---|---|
核燃料棒からの発熱(長期継続) →溶融や放射性物質放出のリスク |
水棺による冷却
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他の封じ込め方法との比較
– 他の封じ込め方法との比較
原子炉事故が起きた際に放射性物質が環境中に拡散するのを防ぐためには、事故を起こした原子炉を何らかの方法で封じ込める必要があります。その封じ込め方法のうち、1979年のアメリカのスリーマイル島原子力発電所事故で用いられたのが「水棺」です。これは、原子炉圧力容器全体を水で満たしたプールに沈めることで、放射性物質の放出を抑制するものです。水は放射線を遮蔽する効果が高く、また冷却効果もあるため、事故後の炉心の安定化に役立ちます。
一方、1986年のチェルノブイリ原発事故で用いられたのが「石棺」と呼ばれる方法です。これは、原子炉全体をコンクリートや鉄鋼などの遮蔽材で覆ってしまうことで、放射性物質の放出を物理的に遮断するものです。石棺は、水棺に比べて設置に時間がかかりますが、より長期的な安定化を図ることができます。
このように、水棺と石棺はそれぞれ異なる特徴を持つ封じ込め方法であり、事故の状況や原子炉のタイプ、そして封じ込めの目的に応じて使い分けられます。どちらの方法が適切であるかは、専門家による慎重な検討が必要です。
項目 | 水棺 | 石棺 |
---|---|---|
方法 | 原子炉圧力容器全体を水で満たしたプールに沈める | 原子炉全体をコンクリートや鉄鋼などの遮蔽材で覆う |
メリット | ・放射線を遮蔽する効果が高い ・冷却効果がある ・炉心の安定化に役立つ |
・設置に時間がかかるが、より長期的な安定化を図ることができる |
デメリット | – | – |
使用例 | 1979年 スリーマイル島原子力発電所事故 | 1986年 チェルノブイリ原発事故 |