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髄膜刺激症状:項部硬直とは

- 髄膜刺激症状の概要髄膜刺激症状とは、脳と脊髄を包む薄い膜である髄膜に炎症や刺激が起きた際に現れる、いくつかの症状を組み合わせた呼び方です。この髄膜は、私達の大切な脳と脊髄を外からの衝撃やばい菌から守る、いわば防護服のような役割を担っています。この髄膜に何らかの原因で炎症が起きると、周囲の組織や神経が刺激されてしまいます。その結果、頭を締め付けられるような激しい頭痛や、高い熱、吐き気といった症状が現れます。さらに症状が進むと、意識が朦朧としたり、痙攣を起こしたりするなど、命に関わる危険性も出てきます。髄膜刺激症状を引き起こす病気には、細菌やウイルス感染によって髄膜に炎症が起きる髄膜炎や、脳の血管が破れて出血するくも膜下出血などがあります。これらの病気は、いずれも早急な診断と適切な治療が必要となるため、少しでも疑わしい症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診することが大切です。
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命を守る呼吸管理: 呼気終末陽圧 (PEEP) の役割

私たちは、普段何気なく呼吸をしていますが、この行為こそが私たちの命を支える大切なものです。呼吸によって、体中に酸素が届けられ、それと同時に不要な二酸化炭素が体外へ排出されます。空気中の酸素は、肺の中にある小さな袋状の器官、肺胞で血液中に取り込まれ、体全体に運ばれます。そして、細胞が活動で使った後の二酸化炭素は、再び血液によって肺胞まで運ばれ、呼吸によって体外へ排出されるのです。しかし、病気や事故など、様々な原因によって肺胞が縮んでしまうことがあります。これを肺虚脱と呼びますが、肺虚脱が起こると、肺胞で正常に酸素と二酸化炭素の交換が行われなくなり、血液中に十分な酸素を取り込むことができなくなります。その結果、息苦しさや意識障害が現れ、最悪の場合、死に至る危険性も伴います。このように、呼吸は私たちの生命維持にとって非常に重要な役割を担っており、肺の健康を守ることは、健康的な生活を送る上で欠かせない要素の一つと言えるでしょう。
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災害医療におけるアンダートリアージ:見過ごされてしまう重症者

- triageとは大規模な災害や事故などが発生した場合、同時に多数の負傷者が出てしまうことがあります。このような緊急事態において、限られた医療スタッフや医療資源を最大限に活用し、一人でも多くの命を救うために重要なプロセスが「triage(トリアージ)」です。triageとは、フランス語で「選別する」という意味を持つ言葉が由来となっています。医療現場においては、負傷者一人ひとりの緊急度や重症度を迅速に評価し、治療の優先順位を決定することを指します。限られた時間の中、症状の重さではなく、救命の可能性が高い負傷者を優先的に治療するという、過酷な判断を下さなければならない場合もあります。例えば、軽症者の治療を後回しにすることで、重症者の救命に繋がる可能性がある場合などです。triageは、災害医療において非常に重要な役割を担っており、その判断が多くの人の生死を分けるといっても過言ではありません。迅速かつ的確なtriageの実施は、一人でも多くの命を救うために不可欠なのです。
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救命時に役立つ知識:昏睡体位とは?

- 意識がない!そんな時に大切なこと事故や病気で突然意識を失って倒れている人を目の前にしたら、まずは落ち着いて行動することが大切です。呼吸ができているか、怪我をしているかなど、落ち着いて状況を確認しましょう。しかし、意識がない状態では、吐き気をもよおしたり、舌が喉に詰まったりしてしまい、呼吸が苦しくなる危険性があります。呼吸を確保し、窒息を防ぐためには、適切な体位を保たせることが重要です。意識がない人を安全な場所に移動させたら、頭を後ろに傾け、あごを持ち上げるようにして気道を確保します。この体位は『昏睡体位』と呼ばれ、舌根沈下による気道閉塞を防ぎ、呼吸を楽にする効果があります。昏睡体位は、意識がない人を横向きに寝かせ、下になった方の腕を上に伸ばし、上になった方の腕は胸の前で曲げて、その上に頭を乗せるようにします。そして、上になった方の足を軽く曲げておくと、体が安定しやすくなります。昏睡体位を保つことで、嘔吐物や唾液などが気管に入ってしまうことを防ぎ、窒息のリスクを減らすことができます。ただし、昏睡体位はあくまで応急処置です。意識がない状態を発見したら、すぐに救急車を呼ぶようにしましょう。
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偶発性低体温症:命を脅かす危険な状態

- 偶発性低体温症とは偶発性低体温症とは、事故や不測の事態によって、意図せず体が冷え切ってしまい、深部体温が35℃以下に低下してしまう深刻な状態を指します。これは手術など医療現場で意図的に体温を下げる低体温麻酔とは全く異なるものです。山岳遭難や水難事故に遭った際に発生するイメージが強いですが、実際には、私たちの身近にも危険は潜んでいます。例えば、泥酔状態や薬物中毒によって意識がもうろうとなり、屋外で長時間過ごしてしまうことで発症するケースや、屋外での活動中に天候が急変し、気温が急激に低下することで発症するケースも少なくありません。体温が低下すると、体中の機能が徐々に低下していきます。初期症状としては、震えや意識の混濁、判断力の低下などが見られます。さらに体温が低下すると、脈拍や呼吸が遅くなり、意識を失ってしまうこともあります。最悪の場合、命を落としてしまう危険性も潜んでいます。日頃から、偶発性低体温症に対する正しい知識を身につけておくことが重要です。特に、冬山登山や水上スポーツなど、寒冷環境での活動を行う際には、十分な注意が必要です。また、もしもの事態に備え、体温を保持できるウェアや非常食、携帯カイロなどを準備しておくことも大切です。
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高気圧酸素療法:現代医療における新たな可能性

- 高気圧酸素療法とは高気圧酸素療法とは、普段私たちが生活している気圧よりも高い、2~3気圧という特殊な環境に設置された部屋の中で、高濃度の酸素を吸入する治療法です。この治療法は、体に取り込む酸素の量を大幅に増やすことで、様々な病状の改善に効果を発揮します。私たちの体は、呼吸によって酸素を取り込み、血液によって全身に運びます。しかし、病気や怪我などによって、血液の流れが悪くなったり、酸素を十分に取り込めなくなったりすることがあります。このような状態になると、体の組織は酸素不足に陥り、様々な機能が低下してしまいます。高気圧酸素療法では、気圧を高めた環境で高濃度の酸素を吸入することで、血液中に溶け込む酸素の量を増加させます。これにより、酸素不足に陥っている組織にも十分な酸素を供給することができるようになり、組織の修復や機能回復を促します。高気圧酸素療法は、一酸化炭素中毒や潜水病などの急性疾患から、難聴や糖尿病性壊疽などの慢性疾患まで、幅広い疾患に効果が期待できます。また、近年では、美容や健康増進を目的とした利用も増えています。
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命を守る!喉頭痙攣の対処法

- 喉頭痙攣とは喉頭痙攣とは、呼吸の際に空気が通る重要な器官である喉頭の周辺にある筋肉が、意図せず収縮してしまうことを指します。この筋肉の痙攣によって、空気の通り道が狭くなったり、完全に塞がったりしてしまうため、呼吸が困難になります。喉頭痙攣が起こると、まるで喉の奥に蓋をされたかのように感じ、息を吸うことが難しくなります。激しい苦しさを感じ、息をしようとすると「ヒューヒュー」といった音がする場合もあります。痙攣の程度や時間によって異なりますが、短時間であれば自然と治まることが多いです。しかし、症状が長く続くと、酸素不足に陥り、意識を失ったり、最悪の場合、命に関わる危険性も孕んでいます。喉頭痙攣の原因は様々ですが、アレルギー反応、タバコの煙や刺激物の吸入、胃食道逆流症などが挙げられます。また、精神的なストレスや緊張がきっかけとなることもあります。喉頭痙攣は、決して珍しい症状ではありません。日頃から予防を心がけ、もし発症した場合は適切な対応をとることが大切です。
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妊婦さんの仰臥位は要注意!

- 仰臥位低血圧症候群とは?妊娠後期、特に臨月を迎えた妊婦さんや、お腹に大きな腫瘍がある方に見られる、仰向けに寝ると血圧が一時的に低下してしまう症状があります。医学的には『仰臥位低血圧症候群』と呼ばれ、英語の頭文字をとって『SHS』と略されることもあります。なぜこのような症状が起こるのでしょうか?その原因は、大きくなった子宮や腫瘍が、身体の奥にある太い血管である下大静脈を圧迫してしまうことにあります。この下大静脈は、身体の下半身から心臓へ血液を戻す重要な役割を担っています。しかし、妊娠後期や大きな腫瘍がある状態では、子宮や腫瘍の重みでこの血管が圧迫されてしまい、スムーズに血液が流れなくなってしまいます。その結果、心臓に戻る血液の量が減少し、心臓から全身に送り出される血液の量も同時に減少してしまいます。すると、全身に十分な血液が循環しなくなり、めまいやふらつき、吐き気、冷や汗、意識消失といった症状が現れることがあります。これが、仰臥位低血圧症候群です。
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命を脅かす緊張性気胸:緊急時の対応とは

- 緊張性気胸とは緊張性気胸は、肺を包んでいる胸腔と呼ばれる空間に空気が入り込み、肺が圧迫されて縮んでしまう気胸の一種です。 一般的な気胸では、胸腔内に漏れ出た空気は自然に吸収されていきます。しかし、緊張性気胸の場合、何らかの原因で胸腔内に漏れ出た空気が、息を吸っても吐いても外に出られず、胸腔内に溜まり続けてしまいます。その結果、胸腔内の圧力(胸腔内圧)が異常に高くなり、縮んだ肺はますます圧迫されます。さらに、心臓や血管も圧迫され、血液の循環が悪くなってしまいます。その結果、血圧が低下し、意識がもうろうとしたり、ショック状態に陥ったりする危険性があります。緊張性気胸は命に関わる危険な状態であり、一刻を争う迅速な対応が求められます。
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災害時の駆け込み寺!応急救護所の役割とは?

いつ襲ってくるか分からない地震や台風などの自然災害。発生すると、私たちの生活に大きな影響を与え、家屋が倒壊したり、道路が寸断したり、甚大な被害をもたらすことがあります。このような状況下では、怪我をしてしまう危険性も高まります。安心して暮らしていくためには、日頃から防災に対する意識を高め、いざという時のために備えておくことが何よりも重要です。具体的には、飲料水や食料、懐中電灯、携帯ラジオなどの防災用品を準備しておくことが大切です。これらの物は、災害発生直後から数日間、自力で生活するために必要不可欠です。また、家族との連絡手段や避難場所、緊急連絡先などを事前に確認しておくことも重要です。家具の固定や家の周りの安全確認など、日頃から災害に強い環境作りを心がけることも重要です。いざという時に慌てないために、家族で防災計画を立て、定期的に避難訓練を実施することも有効な備えと言えるでしょう。
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緊急事態!筋膜切開で救肢:筋区画症候群とは?

- 筋区画症候群の危機私たちの身体は、骨や筋肉、神経、血管など、様々な組織が複雑に組み合わさり、それぞれの役割を果たしながら絶妙なバランスで成り立っています。筋肉は、「筋膜」という丈夫な膜で包み込まれ、いくつかの筋肉が束になって「筋区画」を形成しています。この筋区画は、まるで部屋のように、筋肉を保護し、その動きをサポートする役割を担っています。しかし、この筋区画内で、強い衝撃や圧迫などによって出血や腫れが生じると、筋膜に包まれた空間内の圧力(区画内圧)が異常に上昇することがあります。すると、筋肉や神経、血管は、この圧力によって圧迫され、深刻なダメージを受けてしまいます。これが「筋区画症候群」と呼ばれる危険な状態です。特に、腕や脚などの四肢に多くみられ、放置すると、筋肉が壊死し、最悪の場合、切断に至ることもあります。早期発見と適切な処置が非常に重要です。
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知らないと危険!頸動脈洞症候群とは?

- 頸動脈洞症候群とは何か首の両側には、心臓から脳へ血液を送る太い血管である頸動脈が通っています。この頸動脈の分岐点付近には、頸動脈洞と呼ばれる重要な場所があります。頸動脈洞は、血管内の圧力を感知するセンサーの役割を担っており、血圧の調整に深く関わっています。通常、血圧が上昇すると、頸動脈洞にあるセンサーがこの変化を感知し、脳に信号を送ります。すると、脳からの指令で心臓の動きが抑制され、血圧は正常な範囲に保たれます。しかし、頸動脈洞症候群では、この頸動脈洞が過敏になってしまい、少しの刺激や圧迫でも過剰に反応してしまう状態です。例えば、ネクタイをきつく締めたり、髭を剃ったり、激しい運動をしたりすることで頸動脈洞が刺激されると、めまいやふらつき、冷や汗、吐き気などの症状が現きます。さらに、症状が進むと、意識を失ってしまうこともあります。このような症状が現れた場合、速やかに医療機関を受診する必要があります。
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災害医療の三つのT:迅速な救命のために

- 災害医療における三つのTとは大規模な災害が発生すると、多数の負傷者が発生し、医療現場は極度の混乱に陥ります。このような状況下では、限られた医療資源と人員で、一人でも多くの命を救うためには、迅速かつ的確な判断と行動が求められます。そこで重要となるのが、「三つのT」と呼ばれる原則です。これは、災害医療の現場における行動の優先順位を示したもので、「Triage(トリアージ)」、「Transportation(患者搬送)」、「Treatment(緊急治療)」の頭文字を取っています。まず初めに、「トリアージ」を行います。これは、負傷者の重症度を迅速に判定し、治療の優先順位を決めることです。限られた医療資源を最も効果的に活用するために、重症度に応じて患者を分類し、治療の緊急性を判断します。次に、「患者搬送」です。トリアージの結果に基づき、重症者を適切な医療機関へ搬送します。この段階では、搬送手段の確保や搬送先の病院との連携が重要となります。最後に、「緊急治療」を行います。搬送前に現場でできる限りの応急処置を施し、救命率の向上を図ります。これらの三つのTは、いずれも重要なプロセスであり、それぞれの段階で適切な判断と行動をとることが、災害医療においては非常に重要となります。これらの原則を理解し、日頃から訓練しておくことで、災害時でも落ち着いて行動し、多くの命を救うことに繋がるでしょう。
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緊急医療の切り札:経皮的心肺補助(PCPS)とは?

- 経皮的心肺補助(PCPS)の概要経皮的心肺補助(PCPS)は、心臓や肺が正常に機能しなくなり、生命の危機に瀕している患者さんの血液循環と呼吸を補助する治療法です。心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割、肺は血液中に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する役割を担っていますが、心筋梗塞や重症肺炎などが原因でこれらの臓器が機能不全に陥ると、血液循環が悪化し、全身の組織に酸素が行き渡らなくなります。このような状態を放置すると、臓器障害が進行し、死に至る可能性もあります。PCPSは、開胸手術を行うことなく、足の付け根や首などの血管からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、心臓と肺の働きを補助します。カテーテルは、体外に設置された人工心臓ポンプと人工肺に接続され、血液を体外循環させます。人工心臓ポンプは、心臓の代わりとなって血液を全身に送り出し、人工肺は、血液中の二酸化炭素を取り除き、酸素を供給します。PCPSは、従来の開胸手術を必要とする心肺補助と比較して、身体への負担が小さく、短時間で開始できるという利点があります。そのため、緊急性の高い心臓や肺の疾患の治療に広く用いられるようになっています。
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命を守る!気道異物への対処法

- 身近に潜む危険、気道異物私たちは日常生活の中で、食事をしたり遊んだりする際に、気道異物となる危険性のあるものに囲まれています。気道異物とは、誤って口に入れてしまった物が、空気の通り道である気管に詰まってしまうことを指します。食べ物をよく噛まずに飲み込んでしまったり、遊びに熱中するあまりおもちゃを口に入れてしまったりすることが原因で、食べ物のかけらや小さな玩具などが気道異物となることがあります。気管に異物が詰まると、呼吸困難に陥ったり、最悪の場合には窒息死に至るケースもあるため、決して軽視できない問題です。特に、小さな子供は体が小さく、大人のように咳をして異物を吐き出す力が弱い上、気道も狭いため、気道異物による事故のリスクがより高くなります。そのため、周囲の大人が注意深く見守り、子供が口に物を入れないように注意したり、食事中は落ち着いてよく噛んで食べるように指導するなど、予防に努めることが重要です。
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痙攣:その原因と症状について

- 痙攣とは痙攣は、私たちの体を動かすための指令を出す中枢神経に異常が生じることで、自分の意思とは関係なく筋肉が収縮してしまう現象です。普段は私たちが体を動かそうとすると、脳から筋肉へ「動け」という指令が神経を通して伝えられます。しかし、痙攣が起こると、この指令系統が乱れてしまい、筋肉が勝手に収縮と弛緩を繰り返してしまうのです。痙攣が起こると、体が急に硬直したり、手足が突っ張ったり、逆に曲げ伸ばしを繰り返したりするといった症状が現れます。痙攣は、その影響範囲によって大きく二つに分けられます。全身の筋肉に症状が現れるものを「全身性痙攣」、体の一部分だけに症状が現れるものを「局所性痙攣」と呼びます。全身性痙攣は、意識を失って倒れてしまうこともあるため、周囲の人はそのような事態にも対応できるよう、正しい知識を身につけておくことが大切です。一方、局所性痙攣は、まぶたがピクピクする、指先が震えるなど、比較的軽度の症状で済む場合も多いです。しかし、頻繁に起こる場合は、重大な病気のサインである可能性も考えられます。いずれの場合も、自己判断せずに、医療機関を受診して適切な診断を受けるようにしましょう。
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いざという時のために!知っておきたい気道確保

- 気道確保の基礎知識気道確保とは、事故や病気などで呼吸が苦しくなった人の命を救うための、とても大切な処置です。私たちの体の中では、常に呼吸が行われており、空気は鼻や口から喉を通って肺へと送られます。この空気の通り道を気道と呼びます。しかし、事故や病気によって、この気道が狭くなったり、塞がったりすることがあります。例えば、意識を失って舌が喉の奥に落ち込んでしまったり、食べ物が詰まったり、アレルギー反応で喉が腫れてしまうなどが考えられます。気道が狭くなったり、塞がったりすると、肺に十分な空気が送られなくなり、体が酸素不足に陥ります。酸素は体のあらゆる場所で必要とされるため、不足すると意識を失ったり、最悪の場合、命を落としてしまう危険性もあります。気道確保は、このような事態を防ぎ、再び肺に十分な空気を送り込むための処置です。気道確保の方法には、頭を後ろに傾けてあごを持ち上げる方法や、気道に詰まった異物を取り除く方法など、様々なものがあります。
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命を守る最後の砦:外科的気道確保とは

- 外科的気道確保とは何か外科的気道確保とは、呼吸が困難な患者に対して、口や鼻からの気管挿管といった通常の方法では気道を確保できない場合に、緊急的に行われる外科手術のことを指します。人間の身体は、通常、鼻や口から吸い込んだ空気を、喉頭と呼ばれる部分を通過させて気管、そして肺へと送り込みます。しかし、病気や怪我などによって、この空気の通り道である気道が塞がってしまうことがあります。このような場合、空気の通り道を確保して呼吸を可能にするため、外科的気道確保が必要となります。外科的気道確保は、主に意識を失った状態や、呼吸困難が極めて深刻な状況など、一刻を争う場面で行われます。具体的には、首の部分を切開し、気管に直接チューブを挿入することで空気の通り道を作ります。外科的気道確保は、命を救うための最後の手段と言えるほど、リスクの高い処置です。しかし、適切な状況下で迅速に行われれば、呼吸を再開させ、患者を救命できる可能性があります。
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生命を支える血液浄化法:その役割と種類

- 血液浄化法とは人間の体には、不要なものを体外へ排出する働きが備わっています。腎臓もその役割を担う臓器の一つで、血液をろ過し、老廃物や余分な水分を尿として排出しています。しかし、腎臓の機能が低下すると、体内に老廃物が蓄積し、様々な症状が現れます。血液浄化法は、低下した腎臓の働きを補い、血液を浄化する治療法です。血液浄化法には、大きく分けて「血液透析」と「血液濾過」の二つの方法があります。血液透析は、透析器と呼ばれる装置を用いて、血液と透析液という特殊な液体を、半透膜を介して接触させます。この時、濃度の差を利用して、血液中の老廃物や余分な水分を透析液側に移動させ、除去します。血液濾過は、血液を特殊なフィルターに通すことで、老廃物や余分な水分をろ過する方法です。体への負担が比較的少なく、体に優しい治療法として知られています。これらの治療法は、腎臓の機能が低下した腎不全の患者さんに行われるほか、重症の心臓病や糖尿病、一部のがんなどの治療にも用いられています。血液浄化法は、患者さんの生活の質を維持し、生命を prolong する上で、非常に重要な役割を担っています。
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救命率向上に欠かせない「救命の鎖」

- 「救命の鎖」とは突然、目の前で人が倒れ、心臓や呼吸が止まってしまったら…。一刻も早い救命活動が求められるこのような状況において、「救命の鎖」という言葉は、その重要性を端的に表しています。「救命の鎖」とは、心臓や呼吸が停止した人の命を救い、後遺症を最小限に抑えるために、居合わせた人、救急隊、医療機関がそれぞれの役割を分担し、スムーズに連携していくことを意味します。鎖の一つ一つの輪が、それぞれの役割を表しており、この輪が途切れることなく繋がることで、救命の可能性を高めることができるのです。2000年に発表された米国心臓協会(AHA)のガイドラインでは、大人の救命の鎖として、4つの輪が提唱されています。1. 迅速な通報周囲の人が異変に気づき、ためらうことなく、すぐに119番通報をすることが重要です。2. 迅速な心肺蘇生通報後、救急隊が到着するまでの間、居合わせた人がためらわずに心肺蘇生やAEDを用いた電気ショックを行うことが重要です。3. 迅速な除細動救急隊員が到着した後、心臓の動きを正常に戻すための電気ショック(除細動)を迅速に行います。4. 二次救命処置病院へ搬送された後、医療機関において、より高度な治療や処置が速やかに行われます。このように、「救命の鎖」は、それぞれの場面における迅速かつ的確な連携によって成り立っています。鎖の輪が一つでも欠けてしまうと、救命率は著しく低下してしまう可能性があります。日頃から「救命の鎖」について理解を深めておくことが、いざという時に人々の命を救う力となるのです。
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生死を分ける胸部大動脈損傷:早期診断と治療の重要性

- 胸部大動脈損傷とは胸部大動脈損傷とは、心臓から身体に血液を送る太い血管である大動脈のうち、胸の部分にある胸部大動脈が損傷してしまう深刻な状態です。交通事故や高所からの転落など、強い衝撃が身体に加わることで、胸部大動脈に大きな力がかかり、引き裂かれたり、断裂したりすることがあります。特に損傷が多いのは大動脈峡部と呼ばれる部分です。ここは心臓から送り出された血液が最初に通る場所で、最も圧力が高いため、損傷を受けやすいとされています。胸部大動脈損傷は、大量出血を引き起こし、適切な処置が遅れると命に関わる危険性があります。そのため、早期発見と迅速な治療が極めて重要です。
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命を救う治療の裏側:虚血再灌流障害とその影響

私たちの体は、血液を通じて酸素や栄養を全身に届け、健康な状態を保っています。しかし、病気や怪我によって血流が滞ってしまうと、細胞は酸素不足に陥り、大きなダメージを受けてしまいます。これを虚血と呼びます。当然、一刻も早く血流を回復させることが重要となりますが、実は、血流の回復、つまり再び血液が流れ込むことによって、組織に新たな危機が訪れることがあるのです。これが「虚血再灌流障害」と呼ばれる現象です。再び血液が流れ込むことは、一見すると良いことのように思えます。しかし、虚血状態に陥った組織では、活性酸素と呼ばれる有害な物質が大量に発生します。そして、血流が回復した際に、この活性酸素が周囲の組織に拡散し、炎症を引き起こしたり、細胞を傷つけたりしてしまうのです。これが虚血再灌流障害の大きな原因の一つです。虚血再灌流障害は、心臓、脳、腎臓など、様々な臓器で起こる可能性があります。例えば、心筋梗塞や脳梗塞などの治療において、血流を回復させることは非常に重要ですが、同時に再灌流障害のリスクも考慮する必要があります。現在、虚血再灌流障害のメカニズムを解明し、そのリスクを軽減するための研究が進められています。近い将来、より安全で効果的な治療法が確立されることが期待されています。
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胸部外傷で見逃せない!気胸、血胸、血気胸とは?

私たちの肺は、胸膜という薄い膜で包まれています。肺と胸膜の間には、わずかな液体で満たされた胸膜腔という空間があります。胸部に強い衝撃を受けると、この胸膜腔で異常が起こることがあります。主な病態として、気胸、血胸、血気胸の3つが挙げられます。気胸は、胸膜腔に空気が入り込むことで肺が圧迫される状態です。息苦しさや胸の痛みを感じ、呼吸が浅く速くなることがあります。重症化すると、顔色が悪くなったり、意識がもうろうとしたりする危険性もあります。血胸は、胸膜腔に出血が起こり、肺が圧迫される状態です。出血量が多いと、酸素を十分に取り込めなくなり、ショック状態に陥ることもあります。血気胸は、気胸と血胸が同時に起こる状態です。空気が入る原因としては、肺を損傷するような外傷が考えられます。呼吸困難や胸の痛み、血圧低下など、気胸と血胸の両方の症状が現れます。いずれの病態も命に関わる危険性があるため、迅速な処置が必要です。特に、交通事故や高所からの落下など、胸部に強い衝撃を受けた場合は、これらの病態を疑い、速やかに医療機関を受診することが重要です。
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緊急時に注意!奇脈とその重要性

- 奇脈とは?聞き慣れない言葉かもしれませんが、「奇脈」は心臓の健康状態を把握する上で重要なサインです。健康な状態では、息を吸うと胸腔が広がり、心臓に戻る血液の量が一時的に減少します。すると、体は血圧を保とうとして、心臓をより強く収縮させます。そのため、通常は息を吸っても血圧は大きく変動しません。しかし、心臓に何らかの異常があると、このバランスが崩れます。例えば、心臓を包む袋に水が溜まる「心タンポナーデ」や、心臓を圧迫するような病気にかかると、心臓は十分に血液を取り込めなくなります。その結果、息を吸った際に心臓に戻る血液量がさらに減少し、血圧が大きく低下してしまうのです。これが奇脈です。具体的には、息を吸った時の収縮期血圧(心臓が収縮した時の血圧)の低下が10mmHg以上になると、奇脈と診断されます。奇脈は、脈拍が弱くなったり、場合によっては消失するように感じられることもあります。これは、息を吸った際に心臓のポンプ機能が低下し、血液を十分に送り出せなくなるために起こります。奇脈は、心臓の病気が隠れているサインである可能性があります。そのため、もしも奇脈のような症状を感じたら、速やかに医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしてください。