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人工呼吸器使用中のリスク、圧外傷とは?

- 圧外傷の概要圧外傷とは、私たちの体の外側と内側の圧力の差が原因で起こる怪我のことをいいます。 普段はあまり意識しませんが、私たちの体は常に大気の圧力に囲まれています。そして、飛行機に乗ったり、ダイビングをしたりするなど、急激に周りの気圧が変わると、体の内側と外側の圧力のバランスが崩れ、体に負担がかかります。 このような圧力の変化によって引き起こされる怪我こそが、圧外傷なのです。圧外傷で最も身近な例として挙げられるのが、飛行機の離着陸時や、高い山に登った際に感じる耳の痛みや閉塞感です。これは、急激な気圧の変化に耳の中の圧力が追いつかず、鼓膜が内側か外側に引っ張られることで起こります。 また、ダイビング中に深く潜りすぎたり、急に浮上したりすると、耳抜きがうまくいかずに同様の症状が現れることがあります。さらに、鼻の奥が痛くなるのも圧外傷の症状の一つです。 圧外傷は、軽度の場合は自然に治ることが多いですが、症状が重い場合は、鼓膜の損傷や内耳の障害、さらには潜水病などの重篤な病気につながる可能性もあります。そのため、圧外傷を予防するためには、飛行機の離着陸時やダイビング中にはこまめな耳抜きや鼻抜きを行い、体の内側と外側の圧力を調整することが重要です。
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圧挫症候群:長時間の圧迫がもたらす危険

- 圧挫症候群とは圧挫症候群は、地震などの災害時や事故に遭った際に、長時間、体の一部、特に腕や脚が重みで押しつぶされることで発症する危険な状態です。例えば、地震で倒壊した家屋や家具の下敷きになったり、交通事故で車に長時間挟まれたりすることで、この圧迫が発生します。長時間圧迫されると、筋肉組織が損傷し、体内に有害な物質が流れ出すことがあります。そして、その有害物質が血液中に流れ込むことで、心臓や腎臓などの臓器に悪影響を及ぼし、様々な合併症を引き起こす可能性があります。具体的な症状としては、腫れや痛み、感覚麻痺、壊死などが挙げられます。また、筋肉が壊死すると、ミオグロビンという毒性のある物質が血液中に流れ出し、急性腎不全を引き起こす可能性もあります。さらに、重症化すると、ショック状態に陥り、死に至るケースもあります。圧挫症候群は、発症後の迅速な処置が重要となります。そのため、日頃から防災意識を高め、適切な行動をとれるようにしておくことが大切です。
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命を守る!アナフィラキシーの基礎知識と対策

- アナフィラキシーとはアナフィラキシーは、特定の物質に対して私たちの体が過剰に防御反応を起こしてしまうことで引き起こされる、重篤なアレルギー反応です。この反応は非常に速く、物質に触れてから数分以内に症状が現れることもあり、場合によっては命に関わる危険性も孕んでいます。私たちの体には、細菌やウイルスなどの異物が侵入してくると、それらを排除して体を守ろうとする免疫システムが備わっています。この免疫システムは、通常は私たちの体を守るために働いていますが、アナフィラキシーの場合、特定の物質に対して過剰に反応してしまい、体に悪影響を及ぼしてしまうのです。例えば、食べ物ではピーナッツやそば、甲殻類などがアナフィラキシーの原因として知られていますが、ハチ毒や薬剤など、人によって原因物質は様々です。症状としては、じんましんや呼吸困難、血圧低下などが挙げられます。アナフィラキシーは適切な処置が遅れると命に関わるため、原因物質となるものを避け、発症した場合は速やかに医療機関を受診することが重要です。
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救命現場で活躍するFAST:迅速簡易超音波検査

- FASTとはFASTは、怪我をした人を診察する時、特に事故などで強い衝撃を受けた際に、体の内側で出血が起きていないか超音波を使って素早く確認する方法です。「Focused Assessment with Sonography for Trauma」の頭文字をとってFASTと呼ばれ、日本語では「外傷患者のための超音波検査による集学的評価」と言います。FASTの特徴は、その名の通り、短時間で簡単に検査できることです。特別な機械や高度な技術は必要なく、医療設備が十分にない場所でも行うことができます。FASTでは、主に以下の4つの部位を観察します。1. 心臓の周りの空間心臓を包む膜と心臓の間に、血液が溜まっていないかを確認します。2. 肝臓の周り肝臓は体の右側、肋骨の下にある大きな臓器で、ここに出血がないかを確認します。3. 脾臓の周り脾臓は体の左側、肋骨の下にある臓器で、ここに出血がないかを確認します。4. お腹や胸の中お腹や胸の中に、血液やその他の液体(例えば、肺の周り)が溜まっていないかを確認します。FASTは、事故や転倒などで強い衝撃を受けた人の命に関わる内出血を早期に発見するために非常に役立ちます。
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身体に優しい治療法:IVRとは?

- 画像診断と治療の融合近年、医療の現場では、患者さんの身体への負担をより軽減できる治療法が求められています。従来の手術に比べて、切開範囲を小さく、身体への負担を軽く抑えられる治療法の一つとして、インターベンショナルラジオロジー(IVR)が注目されています。IVRは、画像診断でおなじみの放射線技術を用いた治療法です。CT、超音波、X線透視といった画像診断技術を用いることで、体内の状態をリアルタイムに把握しながら治療を行うことができます。具体的には、カテーテルなどの医療器具を血管や臓器などの目的の部位まで正確に導き、治療を行います。IVRは、従来の手術に比べて、身体への負担が少ない、低侵襲な治療法として知られています。そのため、体への負担が大きく手術が難しいとされてきた高齢者や合併症を持つ患者さんにも、治療の選択肢を広げることができます。また、入院期間の短縮や早期の社会復帰にもつながることが期待されています。
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外傷初期診療の指針:JATEC™とは

- 日本で生まれた外傷診療ガイドライン日本では、交通事故や災害などで、予期せぬ怪我を負う場面は少なくありません。このような、命に関わる可能性のある怪我に対して、迅速かつ適切な処置を行うことは非常に重要です。そこで、日本の医療現場に合わせて独自に開発されたのが、「JATEC™」という外傷診療ガイドラインです。JATEC™は、「Japan Advanced Trauma Evaluation and Care」の略称で、日本語に訳すと「日本の高度外傷評価とケア」となります。これは、1960年代からアメリカで始まった国際的な外傷初期診療のガイドラインである「ATLS(advanced trauma life support)」を参考に、日本の医療現場の実情に合わせて作られました。JATEC™の特徴は、外傷を負った患者に対する初期診療において、医師が取るべき行動を具体的に示している点です。これにより、経験の浅い医師でも、一定水準以上の診療を提供することが可能になります。また、JATEC™はガイドラインだけでなく、医師や看護師などを対象とした教育コースも提供しており、外傷診療の質の向上に大きく貢献しています。このように、JATEC™は、日本の外傷医療において欠かせない存在となっています。
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救える命を守る!JPTECってなに?

日々、様々な事故や災害が発生する中で、一人でも多くの命を救いたいと願う気持ちは皆同じです。特に、事故や災害の発生直後は、適切な処置を迅速に行うことが、傷病者の生死を大きく左右します。一刻を争う緊迫した状況下において、救急隊員や医療従事者の方々は、日々、私たちのために尽力してくれています。このような状況の中、日本の救急医療現場では、「JPTEC」と呼ばれる取り組みが進められており、多くの命を救うための重要な役割を担っています。JPTECは、日本国内で発生しうる、様々な事故や災害に対応できるよう、救急隊員や医療従事者に対して、統一された知識と技術の習得を目指した教育プログラムです。今回は、この「JPTEC」について詳しく解説していくことで、日本の救急医療体制への理解を深めると共に、事故や災害発生時に私たち一人ひとりがどのような行動を取れるのか、改めて考えるきっかけを提供できればと思います。
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救命現場におけるMAST:効果と限界

- MASTとはMAST (Medical Anti-Shock Trousers)は、ショック状態にある患者の症状を改善するために用いられる医療機器です。これは、空気を入れて膨らませることのできる、いわば「空気圧ズボン」のような構造をしています。MASTを装着すると、両足全体と骨盤、腹部を空気圧で圧迫します。この圧迫によって、下半身への血流が制限され、その結果として心臓や脳などの重要臓器への血流量が増加します。ショック状態とは、様々な原因によって血流量が著しく低下し、生命を脅かす危険性のある状態です。MASTは、このショック状態に陥った患者さんに対して、一時的に血圧を上昇させ、重要臓器への血流を維持することで、症状の改善を図ります。しかしながら、MASTはあくまでも一時的な処置であり、根本的な治療ではありません。そのため、MASTを装着した後には、速やかに病院へ搬送し、適切な治療を受けることが重要です。
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輸液療法とリフィリング現象:知っておきたいリスク

私たちの身体は、外部からの様々な影響に常にさらされています。例えば、転んで怪我をしてしまったり、高温の物に触れて火傷を負ったり、有害な物質を誤って口にしてしまったり、ウイルスや細菌に感染してしまうこともあるでしょう。こうした外部からの影響によって身体が傷つけられることを、「侵襲」と呼びます。侵襲は、その種類や程度によって身体に様々な反応を引き起こします。私たちの身体の約60%は水分でできており、その大部分は血液として血管の中を流れています。血液は、酸素や栄養を全身に届けたり、老廃物を回収したりと、生命維持に欠かせない役割を担っています。ところが、侵襲を受けると、この体内の水分バランスが崩れてしまうことがあります。例えば、火傷を負うと、損傷した皮膚から水分が蒸発してしまいますし、怪我をすると、出血によって血液中の水分が失われてしまうことがあります。また、侵襲に対する身体の防御反応として、血管の外に水分が漏れ出てしまうこともあります。通常、血管は体内の水分を適切に保つために、壁の透過性を調整していますが、侵襲を受けると、その調整機能が乱れて血管から水分が漏れ出てしまうのです。水分が血管の外に漏れ出すと、血管内の血液量が減り、血圧が低下してしまいます。また、漏れ出した水分が組織の間に溜まると、細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなり、臓器の機能が低下してしまう可能性もあります。このように、侵襲によって体内の水分バランスが乱れると、様々な問題を引き起こす可能性があります。そのため、侵襲を受けた際には、速やかに医療機関を受診し、適切な処置を受けることが重要です。
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初期輸液療法とレスポンダー

出血を伴う怪我は、命に関わる深刻な状態に陥ることがあります。特に、大量の出血によって血液の循環が著しく悪くなる出血性ショックは、迅速な対応が求められる緊急事態です。出血性ショックに適切に対処するためには、まず出血をできるだけ早く止めることが重要です。傷口を直接圧迫したり、止血帯を使用するなどして、さらなる出血を防ぎます。それと同時に、体内の血液量を補うための輸液療法も欠かせません。これは、点滴によって血管内に直接、水分や電解質を送り込むことで、血液循環を維持する治療法です。輸液療法を行う際には、外傷初期診療ガイドライン(JATEC)などを参考に、適切な輸液の種類や量、速度などを判断する必要があります。自己流の判断で輸液を行うことは大変危険です。出血性ショックは一刻を争う状態です。そのため、救急隊に連絡し、医療機関で適切な治療を受けることが何よりも重要です。
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外傷の重症度を評価するAISとは?

- AISの概要AISは、怪我の重症度を客観的に評価し、記録するための国際的な基準です。正式名称は「解剖学的傷害重症度スコア(Anatomical Injury Severity Score)」と言います。事故や転倒など、様々な原因で起こる怪我について、その深刻さを数値化することで、医療現場における情報共有や治療方針の決定、そして交通事故などの原因分析などに役立てられています。AISは1971年にアメリカで初めて発表され、その後も医学の進歩に合わせて定期的に改訂が重ねられています。 人体を頭部や胸部、腹部など9つの部位に分け、それぞれの部位に起こった怪我について、その程度を1から6までの6段階で評価します。 1が最も軽度で、6が最も重症な状態を表します。例えば、かすり傷のような軽い怪我であれば1、命に関わるような重度の怪我であれば6と評価されます。このAISを用いる最大のメリットは、医師間で怪我の程度について共通認識を持つことができる点にあります。 従来は、医師の経験や主観に頼って怪我の重症度を判断していましたが、AISを用いることで、より客観的で正確な評価が可能になりました。 これにより、患者さんにとってより適切な治療方針を決定できるようになり、救命率の向上や後遺症の軽減にも繋がると期待されています。AISは、交通事故の分析や予防にも活用されています。事故の状況とAISによる怪我の程度を照らし合わせることで、事故の原因究明や安全対策の強化に役立てられています。
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外傷初期診療の重要性:ATLSとは

事故や災害現場で発生する外傷は、一刻を争う深刻な事態となることが少なくありません。このような状況下では、迅速かつ的確な初期診療が、傷病者の生死を分ける決定的な要因となります。 外傷初期診療の重要性は、救命率に直結すると言っても過言ではありません。医療従事者は、限られた時間の中、的確な状況判断と、迅速かつ適切な処置を行うことが求められます。外傷には、骨折や裂傷、出血、内臓損傷など、様々な種類が存在します。状況に応じて、気道確保、呼吸管理、循環確保といった救命処置を優先的に行う必要があります。これらの処置は、傷病者の状態を安定させ、救命の可能性を高めるために非常に重要です。また、適切な搬送先を選定し、迅速に搬送することも、救命率向上には欠かせません。外傷初期診療を効果的に行うためには、医療従事者は体系的な知識と高度な技術を習得していることが不可欠です。特に、緊急事態における冷静な状況判断と、迅速かつ的確な処置を行うための実践的な能力が求められます。そのため、医療従事者は、日頃からシミュレーション訓練などを通じて、緊急時対応能力の向上に努める必要があります。 外傷初期診療は、医療従事者の知識・技術・経験が試される重要な領域と言えるでしょう。
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腹臥位呼吸療法:急性呼吸不全の切り札

- 腹臥位呼吸療法とは腹臥位呼吸療法とは、呼吸がうまくできなくなった患者さん、特に急性呼吸不全の状態にある患者さんに対して行われる治療法の一つです。この治療法は、患者さんをうつ伏せの状態、つまりお腹を下にした姿勢にすることからその名前が付けられています。患者さんをうつ伏せにすると、一体どのような効果があるのでしょうか。私たちが呼吸をする時、肺は空気を取り込み、酸素を身体に取り込んでいます。しかし、肺炎や肺水腫など、肺の病気が悪化すると、肺はうまく膨らむことができなくなり、十分な酸素を取り込めなくなります。特に、肺の背中側がダメージを受けやすく、重症化すると、仰向けの状態では、心臓や他の臓器の重みで肺が圧迫され、さらに呼吸が苦しくなってしまうのです。そこで、腹臥位呼吸療法の出番です。患者さんをうつ伏せにすることで、背中側の肺にかかる圧迫を減らし、肺が膨らみやすくなるため、酸素を取り込みやすくすることが期待できます。この治療法は、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)など、肺の背中側に病変が集中する「背側肺障害」と呼ばれる状態に特に効果を発揮すると言われています。人工呼吸器を装着した患者さんに行われる治療法ですが、患者さんの状態や病気の種類によって、腹臥位呼吸療法が適しているかどうかは異なってきます。
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腹腔ドレナージ:目的と種類、管理について

- 腹腔ドレナージとはお腹の中には、胃や腸などの臓器がスムーズに動くように、少量の液体(腹水)が存在します。しかし、病気などによってこの腹水が異常に増えてしまうことがあります。このような状態を「腹水症」と呼び、お腹の張りや痛み、呼吸困難などを引き起こすことがあります。腹腔ドレナージとは、腹水症の診断や治療のために、お腹の中に溜まった腹水を体外に排出する処置のことをいいます。具体的には、お腹に小さな穴を開け、そこから腹腔内へ細い管(ドレーン)を挿入します。このドレーンを通して、体外に腹水を排出します。腹腔ドレナージは、腹水の原因を調べるための検査(診断)と、症状を和らげたり治療を補助したりする目的(治療)の両方で行われます。診断を目的とする場合は、採取した腹水を分析することで、腹水症の原因を探ります。例えば、細菌感染やがん細胞の有無などを調べます。治療を目的とする場合は、過剰に溜まった腹水を排出することで、お腹の張りや圧迫感を軽減します。これにより、呼吸が楽になったり、食事が摂りやすくなったりする効果が期待できます。腹腔ドレナージは、比較的安全な処置ですが、合併症のリスクもゼロではありません。ドレーンの挿入部からの出血や感染、臓器損傷などの可能性があります。そのため、医師の説明をよく聞き、疑問や不安があれば解消しておくことが大切です。
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命を脅かす危険な圧迫:腹部コンパートメント症候群とは

お腹の中は、重要な臓器が数多く詰まった身体の大切な空間です。通常、この空間内は一定の圧力で保たれていますが、何らかの原因で圧力が異常に高まってしまうと、「腹部コンパートメント症候群」と呼ばれる危険な状態に陥ることがあります。腹部コンパートメント症候群は、交通事故による強い衝撃や、お腹の中で起こる出血、あるいは激しい炎症などがきっかけで発生します。これらの原因によってお腹の中の圧力、つまり腹腔内圧が急激に上昇し、血管や臓器を圧迫してしまうのです。圧迫された血管は血液をうまく送り出すことができなくなり、酸素や栄養が全身に行き渡らなくなります。その結果、呼吸が苦しくなったり、血圧が低下したり、さらには腎臓などの臓器が正常に機能しなくなるなど、生命の危機に直結する重篤な症状を引き起こします。腹部コンパートメント症候群は、早期発見と迅速な治療が極めて重要となる病気です。
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命に関わる胸部外傷:フレイルチェストとは?

- フレイルチェストとはフレイルチェストは、胸部に強い衝撃が加わることで起こる、命に関わる可能性のある重症な胸の怪我です。交通事故や高いところからの落下など、胸に大きな力が加わることで肋骨が複数箇所で折れ、胸郭の一部が不安定になることで起こります。この不安定になった部分をフレイルセグメントと呼びます。フレイルセグメントは、呼吸をするたびに異常な動きを見せるのが特徴です。息を吸うと、本来は胸郭が広がりますが、フレイルセグメントは逆にへこんでしまいます。そして、息を吐くと、今度は膨らみます。これはつまり、損傷を受けた胸郭が肺の動きにうまくついていけず、正常な呼吸運動ができなくなっている状態なのです。フレイルチェストになると、激しい痛みで深く呼吸することが難しくなり、呼吸困難に陥ります。さらに、肺が十分に膨らまないため、血液中の酸素濃度が低下し、生命の危険にさらされることもあります。適切な処置を行わないと、肺炎などの合併症を引き起こす可能性も高まります。そのため、フレイルチェストは早期の診断と治療が極めて重要となるのです。
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手術を支える縁の下の力持ち:分離肺換気

- 左右の肺を別々に換気する手術中には、左右の肺をそれぞれ別々に換気する、「分離肺換気」という高度な技術が使われることがあります。これは、片方の肺だけに休憩を与えたり、それぞれの肺に合わせた換気の調整が必要な時に非常に役立ちます。分離肺換気が特に力を発揮するのは、片方の肺に手術が必要な場合です。例えば、肺の一部を切除する手術や、腫瘍を取り除く手術などが挙げられます。このような場合、手術を受ける側の肺は空気を抜いて小さくしておく必要があります。これは、手術する部分を医師がはっきりと見やすくするため、そして、手術操作を行いやすくするためです。一方、手術を受けない方の肺には、引き続き空気が送り込まれ、正常に呼吸を続けることができます。これにより、手術中であっても、体全体への酸素供給を維持することができます。分離肺換気は、まさに左右の肺を別々に、そして、それぞれに最適な状態で管理することを可能にする技術と言えるでしょう。
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命の危機!喘ぎ呼吸を見逃すな

- 喘ぎ呼吸とは喘ぎ呼吸とは、命の危機に瀕している人が示す、普段とは異なる呼吸のパターンのことです。これは、脳の呼吸をコントロールする中枢が正常に働かなくなり、息をすることが困難になっている状態を示しています。具体的には、息を吸ったり吐いたりする動作がとても浅く、ゆっくりとしたものになります。そして、長い時間息を止めている状態が見られるようになります。まるで、息をするために大変な労力をかけているように見えるため、周りの人は不安な気持ちになるでしょう。喘ぎ呼吸は、心停止などの深刻な状態が近いことを示唆している可能性があります。そのため、このような呼吸をしている人を見つけた場合は、すぐに救急車を呼ぶなど、適切な処置を行うことが重要です。
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災害時の命を救う:トリアージの重要性

近年、世界各地で発生している大地震や台風などの大規模災害は、私たちの社会に大きな爪痕を残しています。こうした未曾有の事態において、最も恐ろしい事態の一つが、多数の負傷者が同時に発生してしまうことです。病院や医療従事者は、災害時において最も重要な役割を担うにも関わらず、彼ら自身も被災者である場合も少なくありません。さらに、道路の寸断や停電などの影響で、医療機関へのアクセスが困難になるなど、医療現場は想像を絶する状況に陥ることが予想されます。このような極限状態においては、限られた医療資源を最大限に活用し、一人でも多くの命を救うために、迅速かつ的確な判断が求められます。しかし、目の前の負傷者の状況だけを見ていては、より多くの命を救うことはできません。限られた医療スタッフ、医療物資、そして時間の制約の中で、冷静かつ的確に状況を判断し、優先順位をつけた治療を行うという、非常に困難な決断を迫られることになるのです。
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めまいと失神にご用心! アダムス・ストークス症候群とは

私たちの体にとって、心臓は休むことなく全身に血液を送る重要な役割を担っています。この心臓の動き、つまり拍動のリズムが乱れると、様々な体の不調につながることがあります。その一つに「アダムス・ストークス症候群」と呼ばれる病気があります。アダムス・ストークス症候群は、心臓の拍動リズムが乱れることで発症します。心臓は、規則正しいリズムを刻むことで、全身に血液を送り出すポンプのような働きをしています。しかし、このリズムが乱れると、血液を送り出す力が弱まり、十分な血液が全身に行き渡らなくなることがあります。特に、脳は酸素を多く必要とする器官であるため、血液の流れが悪くなると、酸素不足に陥りやすい状態になります。アダムス・ストークス症候群では、一時的に脳への血流が不足することで、めまいやふらつき、意識が薄れる、といった症状が現れます。重症の場合には、意識を失ってしまうこともあります。このように、アダムス・ストークス症候群は、心臓のリズムの乱れが、脳へと影響を及ぼすことで引き起こされる病気です。
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交通事故の危険!ハンドル外傷とは?

自動車の衝突事故は、時に体に大きな傷を負わせてしまうことがあります。その中でも「ハンドル外傷」は、運転する人にとって特に注意が必要な怪我の一つです。ハンドル外傷とは、交通事故の瞬間、ハンドルが胸やみぞおち辺りにぶつかることで起こる怪我の総称です。胸やお腹の表面には傷が見えなくても、体内では重い損傷を受けている可能性があり、注意が必要です。ハンドル外傷で起こる可能性のある怪我としては、肋骨骨折、肺の損傷、心臓の損傷、肝臓や脾臓などの内臓損傷などがあります。これらの怪我は、初期には自覚症状が乏しい場合もあり、放置すると命に関わる危険性もあります。交通事故に遭い、胸やみぞおち辺りに痛みや違和感がある場合、またはハンドルが体に強く当たった自覚がある場合は、たとえ軽い事故であっても、速やかに医療機関を受診することが大切です。交通事故はいつどこで起こるかわかりません。日頃から安全運転を心がけ、事故を起こさないようにすることが最も重要です。また、万が一事故に遭ってしまった場合に備え、自分が加入している自動車保険の内容を確認しておくことも大切です。特に、人身傷害保険や搭乗者傷害保険は、ハンドル外傷のような怪我の治療費や入院費などを補償してくれるため、必ず加入しておきましょう。
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薬物過敏症の基礎知識

- 薬物過敏症とは薬は病気の治療や予防のために有効ですが、時に体に思わぬ反応を引き起こすことがあります。その一つが薬物過敏症です。薬物過敏症とは、服用した薬が、その人の体質や体調によって、通常とは異なる過剰な反応を示し、体に害を及ぼす状態を指します。誰でも経験する可能性があるものですが、高齢の方や複数の薬を服用している方は特に注意が必要です。例えば、ある種の抗生物質を服用した際に、皮膚に発疹が出たり、呼吸が苦しくなったりすることがあります。これは、その抗生物質に対して体が過敏に反応しているために起こる現象です。薬物過敏症は、その症状の重さや現れ方によって、大きく3つのタイプに分けられます。* -即時型反応- 薬を服用してから数分から数時間以内に、じんましん、かゆみ、呼吸困難などの症状が現れます。重症の場合、意識消失や血圧低下などを伴うアナフィラキシーショックを起こすこともあります。* -遅延型反応- 薬を服用してから数日〜数週間後に、発疹、発熱、肝機能障害などの症状が現れます。* -その他- 薬剤性肺炎や間質性肺炎などのように、特定の臓器に障害が現れる場合があります。薬物過敏症は、適切な治療を行えば症状を抑え、改善することができます。気になる症状が出た場合は、自己判断せずに、すぐに医療機関を受診しましょう。
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オートバイ事故に潜む危険!引き抜き損傷とは?

- 引き抜き損傷とは交通事故などで、腕が強い力で急に引っ張られることがあります。このような場合、体の中で何が起こるのでしょうか。実は、脊髄から出ている腕の神経が、根元から引き抜かれてしまう深刻な損傷が起こることがあるのです。これが「引き抜き損傷」です。脊髄から枝分かれする神経は、まるで植物の根のように、首から肩、腕、手へと伸びています。この神経の束は「腕神経叢」と呼ばれ、私たちの腕や手の動きや感覚を司る大切な役割を担っています。引き抜き損傷は、この腕神経叢の根元である神経根が、脊髄から引きちぎられるように損傷を受けてしまう状態です。損傷を受けた神経根の位置や、損傷の程度によって、腕や手に様々な症状が現れます。 例えば、腕や手の感覚がなくなる、力が入らなくなる、麻痺が残ってしまうなどです。引き抜き損傷は、後遺症が残る可能性が高い損傷です。そのため、交通事故に遭った際は、速やかに医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けることが重要です。
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知っておきたい! ファウラー体位の効果と活用法

- ファウラー体位とはファウラー体位とは、ベッドに仰向けに寝た状態から上半身を起こし、背もたれを30度から90度の角度に調整した姿勢のことです。この体位は、医療現場や介護の場面で広く活用されています。ファウラー体位は、心臓や肺への圧迫を軽減するため、呼吸が楽になるという利点があります。そのため、肺炎や心不全などの呼吸器疾患や心臓疾患の患者さん、手術後の患者さんによく用いられます。また、食事や経管栄養の際に誤嚥を防ぐ効果も期待できます。ファウラー体位には、角度によっていくつかの種類があります。背もたれの角度が30度程度のものをセミ・ファウラー体位、45度から60度程度のものをハイ・ファウラー体位と呼びます。それぞれの症状や状態に合わせて、適切な角度が選択されます。ファウラー体位は、患者さんの負担軽減や症状緩和に役立つ体位ですが、長時間同じ姿勢を続けることで、褥瘡(床ずれ)のリスクが高まる可能性もあります。そのため、定期的な体位変換や、皮膚の観察など、適切なケアが必要となります。