骨折後の後遺症：フォルクマン拘縮

骨折後の後遺症：フォルクマン拘縮

フォルクマン拘縮とは

– フォルクマン拘縮とは

フォルクマン拘縮は、骨折後に発症する可能性のある深刻な後遺症です。骨が折れた後、適切な処置が行われないと、筋肉や神経に重大なダメージを与えることがあります。その結果、手や指の機能に深刻な影響を及ぼす可能性があり、これがフォルクマン拘縮と呼ばれる状態です。

特に、肘の関節付近の骨折、特に子供の腕の骨の一部である上腕骨顆上骨折の後によく見られます。この骨折は、子供の骨がまだ柔らかく、成長段階にあるため、損傷を受けやすい特徴があります。

フォルクマン拘縮が発生すると、前腕にある筋肉や神経が損傷を受けます。その結果、指が変形したり、手指を自由に動かすことが困難になります。これは、日常生活において、物を掴んだり、書いたり、ボタンをかけたりといった、基本的な動作に支障をきたす可能性があります。

フォルクマン拘縮は、早期に発見し、適切な治療を行うことが重要です。治療には、リハビリテーションや手術などが挙げられます。しかし、症状が進行してしまうと、完全に回復することが難しいケースもあります。

主な症状

– 主な症状

フォルクマン拘縮では、前腕にある指を曲げるための筋肉（屈筋群）が硬くなってしまうことが主な症状として挙げられます。この筋肉の硬直を「拘縮」と呼び、指をまっすぐに伸ばせなくなるといった支障が現れます。

また、手首にも変化が現れ、手のひらの側に曲がった状態（手関節掌屈）が続きます。さらに、指の関節にも異常が生じ、本来指を曲げる方向とは反対側に反り返ってしまう現象（中手指節関節過伸展）も特徴的な症状です。

これらの症状に加えて、前腕の筋肉がやせ細り、硬くなっていく（前腕屈側萎縮硬化）のもフォルクマン拘縮の特徴です。

フォルクマン拘縮のこれらの症状は、日常生活における様々な動作（食事や着替え、筆記など）を困難にする可能性があり、生活の質を著しく低下させてしまう危険性をはらんでいます。

発生の仕組み

– 発生の仕組み

フォルクマン拘縮は、腕の筋肉や神経が、怪我などによって酸素不足に陥ることで発生します。

人間の身体は、心臓から送り出された血液によって、全身に酸素や栄養を運んでいます。
この血液の通り道となるのが血管ですが、腕を骨折したり、強い衝撃を受けたりすると、この血管が傷ついたり、圧迫されたりすることがあります。

血管が損傷すると、血液の流れが悪くなり、筋肉や神経に必要な酸素が十分に届かなくなります。
特に、肘から手首にかけての前腕には、多くの筋肉や神経が密集しています。
そのため、前腕は、他の部位に比べて、血流の悪化による影響を受けやすく、酸素不足に陥りやすいのです。

筋肉や神経は、酸素が不足すると、正常に機能しなくなり、時間の経過とともに壊れてしまいます。
そして、壊れた筋肉や神経は、元通りに修復されずに、硬くなって縮んでしまうことがあります。
これがフォルクマン拘縮と呼ばれる状態であり、手や指の動きが悪くなる、感覚が鈍くなるなどの症状が現れます。

原因となる骨折

フォルクマン拘縮は、骨が折れることによって起こる後遺症の一つですが、どんな骨折でも起こるわけではありません。特に、肘の関節付近の骨折、その中でも子供が上腕骨顆上骨折を起こした場合に、フォルクマン拘縮のリスクが高くなることが知られています。

上腕骨顆上骨折とは、肘の少し上の部分を骨折するもので、子供によく見られる骨折です。この骨折は、骨が折れた場所の近くに重要な血管や神経が通っています。そのため、適切な治療をしないと、フォルクマン拘縮といった合併症を引き起こす可能性があります。

フォルクマン拘縮は、骨折によって血管や神経が傷つけられることで起こります。具体的には、骨折した部分で出血が起こり、その出血によって筋肉や神経が圧迫されることで、筋肉が壊死したり、神経が麻痺したりします。その結果、手首が曲がったままになったり、指が動かしにくくなったりするなどの後遺症が残ることがあります。

フォルクマン拘縮は、早期に発見して適切な治療を行うことが重要です。そのため、肘周辺の骨折、特に子供が上腕骨顆上骨折を起こした場合は、注意深く観察し、異変があればすぐに医師に相談することが大切です。

予防と治療

骨折後の合併症であるフォルクマン拘縮は、早期発見と適切な処置によって予防できる可能性があります。骨折をしたら、たとえ軽傷に見えても、注意深く観察することが重要です。特に、前腕の腫れや痛みは初期症状として現れやすいので、注意が必要です。また、指先の痺れや冷たさなども、血流障害の兆候である可能性があります。少しでも異常を感じたら、放置せずに、速やかに医療機関を受診してください。早期に診断がつけば、適切な治療を開始することができます。

フォルクマン拘縮の治療には、ギプス固定や手術など、様々な方法があります。治療法の選択は、症状の進行度合いなどによって異なりますが、いずれの場合も、早期に治療を開始することが、後遺症を最小限に抑えるために重要となります。そして、治療後のリハビリテーションも非常に大切です。リハビリテーションによって、関節の動く範囲を広げ、筋肉の力を回復することで、日常生活における様々な動作を改善していくことができます。フォルクマン拘縮は、適切な予防と治療、そしてリハビリテーションによって、その影響を最小限に抑えることが期待できます。